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スノーローズ~転生した精霊の愛し子は唯一と何度でも巡り合う~  作者: ありや


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精霊様の加護 6

*たくさんある作品の中から見つけていただいて、お読みいただきありがとうございます*


今回少々長いです…

 正直なところ、自身の置かれた状況が頭も心も追い付かない状況には違いないので、ちょっと自分の為に状況確認をしてみることにした。


 ラロック領に戻ってくる

     ↓

 領館で勉強をしつつ過ごす

     ↓

 今日はお休みの日

     ↓

 シトリンお兄様とエディお兄様と一緒に森を散策

     ↓

 二人と別行動していたところで、私だけ精霊様の隠れ家に拉致 ← 今ここ


うん、大体把握した。で、三年前の湖に落ちた事故で助けてくれたのが、精霊様だということも分かった。それから、精霊様が私に加護を授けたいと仰ってる。何故? というところで、色々と説明をしてくださってる…。


「…で、アイリスは特別な子なんだよ。だから、僕達精霊は君に加護を授けるのが当たり前なんだ」

「………」

「アイリス? 聞いてる?」

「……」

「アイリス。聞こえてるかなぁ?」

「…」


思考の渦に沈み込んでいる私には精霊様の言葉を聞き流すという以前に、聞こえていなかった。それをいい事に、精霊様は悪戯を思い付いたらしい。


「アイリス。聞こえてたら返事して。聞こえてなかったら、悪戯しちゃうぞ?」

「…」


ここで盛大に精霊様は溜息をついたのだけれど、私は当然のように聞こえていなかったわけで、そして精霊様の予告通りに悪戯される運びとなる…。


「アイリス、返事してくれないとこのまま精霊の国まで連れてくよー。ついでに僕のお嫁さんになってもらうよー。それでもいいなら、返事しなくていいよー」


囁くように私の耳元で精霊様が私に告げた。何故かこの瞬間の私は、精霊様が言葉を発するより前に何かを感じ取っていた、ような気がする。そして、耳朶から伝わる精霊様の、青年にしか見えないのにまるで声変わりが終わる直前の幼さを残した低音が、体中に響くように感じて、一瞬ゾクリと背中が冷たくなった。

慌てて囁かれた側の耳を押さえて、精霊様から距離を取る。そして、キッと見つめて、口を開いた。


「嫌です! 今度は普通に生きたいんです!!」


 私が声を大にして訴えるように言葉にすれば、したり顔で精霊様が笑っている。


「やっぱり記憶あるんだね、前の人生の」


一瞬何を言われたのか分からなくて、すっと表情が消えた自覚があった。そして、その記憶があることが精霊様にとってどういう意味があるのか、気になったところで精霊様が言葉を続けた。


「さっき僕が言ったよね、渡り人と招き人って。その説明するね。渡り人って言うのは、別の世界からこの世界に生きた状態でやって来た人達のこと。滅多にいないから、そういう存在を知っている人はまずいないと思うよ。で、問題なのは招き人。この招き人というのは、別の世界で一度人生を終えた人の魂だけを、こちらに招いてる。で、そういう人達はほぼ確実に魔力がとても多くて…この世界を豊かにしてくれる人達なんだ」


私は渡り人と招き人の説明を聞けて、一番分かってないことが理解出来たから非常にスッキリはした。したんだけど…、精霊様が私をじっと見てくる。何かまた言いたげな様子だ。私達の視線は合っていたわけじゃなかったんだけど、精霊様の視線に気付いて精霊様を見ちゃったから、ぶつかった状態の視線にどうしていいか分からなくなって、なんとなく目を逸らしたら負けな気がして、こちらもじっと見てしまっている。

 すると、精霊様が目を閉じたことで視線を外した。


「いやぁ、見つめ合うって案外照れるねぇ。あ、そうそう。それでアイリスのことだけど…前の人生の記憶があるよね? そういう人間は特別なんだよ。招き人なのに前世の記憶がある状態だから、招き人でもあり渡り人のような立場になる、というか…。とにかくそういう人間は得てして精霊にとって惹かれて止まないほどの魅力的な魔力を持ってるものなんだ。そして実際アイリスはそういう人物なんだ」


 私はやっと精霊様が私を特別だという理由を把握出来た気がした。私は湖に落ちたことで前世の記憶を取り戻してる。完全ではないし、あくまでも他人事のような感覚のほうが強いから、別の人の経験を私の頭の中で保管してるような感覚だけれど、それが精霊様にとっては特別になる原因…?


「あの…質問してもいいですか?」

「いいよ」

「どうして私が言った一言だけで、前の記憶があるって精霊様は気付いたんですか?」

「ああ、それね。簡単だよ。『今度は普通に生きたい』なんて聞いたら、前は違ったの? って誰でも思うことだよね。そう考えれば、ああ前世の記憶があるんだなって分かるでしょ?」

「…そう、ですね。咄嗟のことで気付かなかったです」

「で、認めちゃうんだね。まぁアイリスの年齢を考えれば、大人びてるよね。子供らしく振舞おうとしてるみたいだけどさ」

「それは…まぁ、そうですね。年相応になろうとは思う部分はあるんですけど、前世の人の記憶がとても影響してるっていう自覚はあるんです」

「そっか、それは…ちょっと大変だよね」

「仕方ないんですけどね。でも…今の私が自分らしいのかも、と考えれば気にもならなくて」


精霊様への問い掛けは、案外簡単な理由で、確かに誰でも気付きそうなことだと自分でも思うものだった。それから、自身の振舞や精神的な面で子供らしくないと指摘されれば、そのことでは少し考えたこともあったけれど、気にしたところで今の自分が、あやめさんの記憶のなかった頃の自分になれるわけでもないのだから、と深く考えることをやめたことや、今のままでいいんだと前世の記憶というものを肯定して生きていけばいいのだと自然と思うようになった、と答えながら考えていた。きっと、あやめさんという人物の性格や物の考え方のせいなのだろうと思っている。

 ふと精霊様が近付いてきていることに気付いて、明らかに私よりも背の高い精霊様の顔を見上げるように顔を上げると、精霊様が私の頭に手を置いていて、軽く頭を撫でていた。


「アイリスはがんばってるんだね。えらいえらい」


 私はただビックリするだけで、もうすでに手を下ろしていた精霊様が笑ってこちらを見ているのをただただ見返すばかりだった。


「…嫌、じゃなかったよね?」

「あ、はい。嫌じゃないです。ビックリしただけで、す」


 精霊様は下ろしたばかりの右手をすっと私の左頬に添えていた。何だろう? そう思っていると、精霊様が顔を近付けて来る。なんだか嫌な予感しかない、と腰が引き気味になるけれど、次に精霊様は私の腰に左手を持ってきていた。案外しっかりとホールドされた気がする。明らかに体格差があって、逃げるに逃げられない状況に陥ってしまったことに気付いて、私はかなり焦っていた。


「精霊、様! 手! 手を、離してください!」

「えー? やだ。だって言ったでしょ? 加護をあげるって。だから嫌だよ」

「な、加護と私を捕まえるのとどう関係があるんですか!?」

「んー、そうだね。こうするから?」


精霊様の見た目年齢は二十歳前後。だから九歳の私との身長もかなりの開きがある。そんな精霊様が私の身長に合わせるために膝を折っていて、むしろ逃げられない状況に追い込んでくれてるわけで、逃げなくちゃ、と勘が訴えてくるから(いやあやめさんかな?)、心はもう逃げているけど体が逃げられない状況。


(こ…れは、脛を蹴ってみるとか? それとも鳩尾狙う? どうしよう!?)


 そんなことをほんの二~三秒の間考えているだけだった。だったのに!! 考える前に動くべきだったと思ったところで『後悔先に立たず』という状況だった。あやめさんの世界の言葉は時々意味が分からないけど、これは理解出来た。


 …何があったかと言えば、乙女の名誉の為に言いたくない。言いたくないけど、相手が精霊様だからノーカウントでいいですか? ペットとするようなものだと思っていいですか?


「う………、酷い…」


 私が言えたのはここまでで、この後は久しぶりのあやめさんの人格が表に出ていた、と思う。アイリスとしては、あまりにショックだろうから、とあやめさんに言われた気がする。そして私はあやめさんが私の代わりに動くその様子を遠くから眺めるだけ。もしかしたらあやめさんもいつもこうして私を見ていてくれるのかな? と思った。

 ただぼんやりと、あやめさんと私は同じ魂だと言われたけど、まるで他人のように入れ替わるのはどうなんだろ? と思うのだった。


 §


 アイリスが精霊に体を拘束されるように逃げ場を失うところを見たことで、()()()は急いでアイリスの心を守る為に動いていた。本来ならあたしとアイリスは一つの魂だし、人格はそれぞれで違うとしてもアイリスの体を自由にするのは違うと思うし、だからどうしてこんなタイミングであやめとして私が動けるのかなんて、本当もう全然分からないけど、とにかく幼いアイリスを守らなくちゃ、という気持ちしかなかった。

 そして、急いだ結果として、精霊はあやめの人格になったアイリスの唇に精霊のそれを重ねた直後、というタイミングでの交代劇となった。

うえー、やっぱりそういう感じだった…なんでだよー! 精霊にとってアイリスが大事な子だってのは話の流れで分かったけど、だからってなんでキスするのー!? 意味判んなーい!!

 だから、つい言っちゃうでしょ!!


「あやめは経験あるけど、アイリスはまだなのにー!!」


 あたしの言葉に精霊は、おや? といった様子でこちらを見ているし、あたしが睨み付けたらニヤニヤと笑い始めるし、本当あたしはこの精霊が苦手かも。


「そっかそっか、アイリスの前世はアヤメと言うんだね。うんうん。今のは精霊の加護を与えるためには必要なことなんだよ、ごめんね? まぁ…諦めてね」

「え? ………今のが、加護を授けるのに必要な、こと?」

「うん、そう。うーん、言葉遣いがなんだか違うけど、もしかして今アヤメがアイリスの体を動かしてるのかな?」

「あー…と、そう。アイリスはまだ九歳だもの、そういうのはとても繊細なのよ。だから、あたしが少しの間だけ体を借りてる…感じかな」

「だったらアヤメにも伝えておくよ。僕は時の精霊。名前はトワ。この名前はアイリスにしか教えない。でも万が一アイリスに何かあった時にアヤメが動けるようなら、絶対に僕の名前を呼んでね。まぁ何もなくても、精霊はお気に入りの人間の近くにいるものなんだけどね」


 話の腰を折るために精霊が私に違う話をしようとしたのかと思ってしまったけど、理由を知れば仕方のないことなのか、とも思えた。でも…もっと他に方法はないのか? と思ってしまうのは仕方ないことだ。だってさー、誰だってさー、そういう意図がなくても普通は他人と平気でする行為じゃないじゃなーい! だってあたし日本人だもーん! 軽々しくそんなこと出来ないよ。

 そんなこと考えながら、拗ねたような顔で精霊を見ていると、少し眉尻を下げた精霊が小首を傾げていた。


「ごめんね。先に説明しておけば良かったかな。でもこれでアイリスは簡単には怪我もしなくなったし、病気にもかかりにくくなったよ。だから()()()()心配がなくなったかな」

「! 本当?」

「うん、精霊によっては加護の特典は変わるんだけど、僕の場合はそんな感じなんだ。まぁ他にもまだあるけどね」

「良かった…。あたしの死因がなんてたって病気だから。しかも若ければ若い程病気の進行が早くて完治出来ないってすぐに分かってたの。だからアイリスがそういうことから避けられて安心したよ」


 あたしがあやめとしての話をすれば、精霊がなんだか眉間に皺を寄せた気がしたけど、それも気のせいだったかもと思うもので、表情はそれほど変わっているとは思えなかった。

精霊とその後も少し話をしたけど、それはあやめの話をしたくらいのものだったし、アイリスには意味のないものだった。すでにあたしのことは記憶があるからアイリスも知ってることばかりだったしね。


 精霊がもうそろそろ行くと言い出したから、あたしも体をアイリスに体を返そうと考えたタイミングだったと思う。あたしの意識があるうちに、と声に出したから精霊の方へと顔を向けると、突然ぎゅっと抱き締められた。

何事!? と慌てると精霊の、アイリスを抱き締める体が少し震えている気がした。

何かあるのかも、と思いながら精霊からの言葉を待つことにしたのだった。


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