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スノーローズ~転生した精霊の愛し子は唯一と何度でも巡り合う~  作者: ありや


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幕間  小さなおとぎ話

*たくさんある作品の中から見つけていただいて、お読みいただきありがとうございます*

 遠い遠い昔の、とても遠い遠い国のお話です。


その国にはそれはそれは美しいお姫様がおりました。そして、そのお姫様の傍には、いつもお姫様を守る騎士様がおりました。


 お姫様と騎士様は身分が違いましたが、小さな頃からずっと一緒に過ごしてきていたこともあり、とても仲の良い二人でした。小さな頃は可愛らしい友達として、大きくなってくると、お互いに想い合うようになっていったのです。


 その頃のその国では、お姫様が他の国の王子様と結婚する必要もありませんでしたし、お姫様と結婚したいと思う人はたくさんいましたが、騎士様と並ぶ様子に、皆思ったのです。


「きっとあの御二人は、このまま結婚をなさるだろう」

「御二人はとてもお似合いだから、きっと素敵な御夫婦になられるだろう」


 お姫様と騎士様は、若い女の子達だけでなく、多くの人達の憧れとなっていたのです。それは小さな子供達から、おじいさんおばあさんに至るまで。

お姫様のお父様である国王様も、お母様である王妃様も、騎士様との結婚を許していたのです。

でも、ある年の秋の終わりのことでした。お姫様は小さな風邪をひいてしまい、熱を出してしまいました。

いつもならすぐに元気になるのです。けれど、この年は違っていました。お姫様はなかなか元気になりませんでした。けれど、ゆっくりではあったもののお医者様のお薬が効いて、すっかり元気になりました。

それはもう雪がたくさん降り積もるくらいに寒い冬のことでした。

 この寒い冬の季節にお姫様は何度と繰り返し風邪をひいては、熱を出してしまうのです。今までは小さなくしゃみ一つですぐに元気になるくらいに、とても健康なお姫様だったのに。


 騎士様は、お姫様の体が弱くなってしまったのではないか、とても心配しておりました。

けれど、騎士様は周囲からお姫様を守ることは出来ても、お姫様の体の中を守るのは無理でした。

だから思ったのです。


「今のままでは、どんな時でも姫の傍にはいられないし、助けることも、守ることも出来ない」


 騎士様は、お城の庭に咲いている花を見つけました。それはとても珍しく()()()()()でした。

騎士様は花に詳しくありません。でも、その珍しい花がお姫様の好きな花だということを知っていました。


だから、寒い冬の中咲き誇る花を、お姫様に贈りました。


「姫、どうか私と結婚をしてください。もうずっと姫を愛しております」


 そう言うと、花と一緒にずっとお姫様に贈りたいと思っていた指輪をお姫様にささげたのです。

お姫様は、とても嬉しそうな顔をしました。だから、騎士様はお姫様からの返事は、きっと


「はい」


だと思い込んだのです。けれど、お姫様はこう答えました。


「ごめんなさい。私は()()貴方の事を愛せません。ですから、花もその指輪も受け取れません」


目を伏せて、小さくため息をついたお姫様は続けてこうも言いました。


「貴方の事は、とても大切な人です。()()()、結婚はできません」


 騎士様はとても悲しい気持ちになりました。ずっと小さな頃から一緒に育ち、お姫様とは将来を約束していたのです。けれど、お姫様の()()()()で叶うことがなくなりました。



 しばらくして、お姫様は王様が特別に治めている遠くの街へと行ってしまいました。騎士様も一緒に行きたいと思いましたが、お姫様がそれを嫌がったため、一緒に行くことが出来ませんでした。


それから、2年が過ぎました。


 お城にいる騎士様の元へ手紙が届きました。それはお姫様からでした。


 手紙は、お姫様の書いた字と、途中からは別の人がお姫様の代わりに書いた字と、二つの違う文字の形が並ぶものでした。


--------------



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『もう二度とお会いすることは出来ませんが

貴方の幸せを祈ってやみません。

さようなら。』



-------------


 お姫様からの手紙は、とても短くて、騎士様はとても悲しくなってしまったのでした。


遠くへ旅立つということは、きっと遠くの国の王子様と結婚すると言う意味なのだろうと、騎士様は考えました。けれど、それはすぐに違っていたことに気付く事になりました。


 お姫様からの手紙が届いてすぐでした。

お城の中はとても慌ただしくなったのです。そして、誰もが悲しみに暮れてしまってもいました。

なぜなら、お姫様が天の国へと召されたという報せが入ったからでした。

お姫様のお父様、お母様である国王様も王妃様も、そしてお姫様の兄王子や弟王子も、お姫様のことを見てきた召使の皆も、誰もが悲しみに沈んでいきました。

 騎士様はそこで初めて気付いたのでした。


「遠くへ旅立つというのは…死ぬ、ということ……」


それから、改めて騎士様がお姫様に結婚を申し込んだ時にお姫様から言われた言葉を思い出しました。


-----------------


私は()()貴方の事を愛せません。


とても大切な人です。()()()、結婚はできません。


-------------------


「ああ、そういう事だったのですね。姫、あなたは私の為に結婚を断ったのですね。

あの時、もうあなたは死が近いことを御存知だったのですね……」


 それを理解した騎士様は、独り、自分の部屋で泣き崩れるのでした。


 お姫様のお葬式は、静かに執り行われました。本当なら、騎士様はその場にいられないような場所に並んでいました。

国王様や王妃様達と同じ場所です。

 国王様がお姫様の結婚相手と認めていた騎士様だったから、家族と同じだよ、と騎士様を特別に同じ場所に呼んだのでした。

お葬式が終わると、国王様が騎士様に言いました。


「もう姫は居ない。これからのことを考えて、自分の幸せを考えなさい。姫も君のことを心配していたよ」


 騎士様は、まだ枯れることなく零れてしまいそうな涙を堪えながら、国王様の言葉にただただ頭を下げるしかなかったのでした。


 お姫様が天の国に旅立ってから、どれだけ経ったでしょうか。

騎士様はずっと独りで生きていました。お姫様と同じくらい大好きになれる人がいなかったからでした。

周りの人達からは、早く結婚したほうがいいよ、と何度も何度も言われましたが、どうしても無理だったのです。気付けば騎士様は、もう結婚を考えることもなくなっていました。それと同時に周りの人達も、騎士様に結婚の話をすることをやめたのです。


 騎士様の近くには、一つの光がいつも寄り添っていました。それは、この国には誰しも当たり前のように見えている精霊と呼ばれる特別な存在でした。


けれど、その精霊がいつも寄り添うというのはとても珍しく、特別なことだったのです。


「精霊様が騎士様をお守りになっているのだから、騎士様のお心のままに生きることが大事なのだろう」


誰もがそう考えるようになったのです。そして、それは騎士様にとっても心が落ち着くことでした。

お姫様のことを思い出してしまう結婚という言葉を聞かなくて済むからです。

騎士様は、精霊と一緒に穏やかに生きていくのでした。


「姫のように大切に想える人には、もう会えないのだから結婚はしない。…もし、次の生で姫とまた会えたら…次は姫と一緒に生きていきたい。それが叶わないのなら、せめて生きて姫の幸せを見守りたい」


 そう強く願う騎士様の心を、いつも寄り添う精霊がひっそりと聞き入れているのでした。

騎士様は、ある年のある冬の日。馬に乗り遠くへ出かけていました。出かけた先で、狼の群れに囲まれている旅人を見つけたのです。騎士であることは、人々を守ること。だから、騎士様は何も迷うことなく、旅人を助けるため狼の群れへと突き進みました。

 突然現れた馬と人間に狼の群れも驚きはしましたが、狼も冬であるため、生きるために必死です。食べ物が必要なのです。人間を襲うことで生き延びることが出来るなら、狼も人間を襲うことに躊躇うことはありません。旅人をなんとか狼の群れから引き離すことは出来ましたが、代わりに騎士様が狼の群れに狙われました。

馬の足を狙って狼たちは蹴られないように馬の動きを見ながら、飛び掛かります。騎士様も狼から逃れるために、剣を振るうのですが、狼の数が多くて逃れるのは難しいだろうと判断しました。

まだ馬は生きています。少しは怪我をしているかもしれませんが、まだ大丈夫のようです。だから、騎士様は馬から飛び降りると、馬を狼たちから引き離すように走らせます。そして、騎士様は一人残り、狼をどんどん剣で切っていくのでした。けれど、とうとう騎士様も力が尽きてしまうのです。狼はまだ何頭もいました。

 騎士様に寄り添う精霊は、騎士様を助けることはありませんでした。

精霊は、寄り添うことはあっても生き物達の寿命に関わることはないのです。だからでしょう。

精霊は狼の群れがいても、騎士様を避けることがなかったのは。けれど、騎士様がもう天の国の入り口が見えそうなくらいに命が危ないという時でした。

 精霊が騎士様に尋ねました。


『あなたの望みは何?』


 騎士様はいつも思っていたことを繰り返しただけでした。


「…もし、次の生で姫とまた会えたら…次は姫と一緒に生きていきたい。

それが叶わないのなら、せめて生きて姫の幸せを見守りたい」

『その望み、必ず叶えるよ』


 精霊は騎士様にそう伝えたのでした。そして、騎士様は人知れず、ひっそりと息を引き取ったのでした。

その後、無事にお城に戻った馬の様子に気付いた他の騎士様達の手で、騎士様はその亡骸をちゃんと弔ってもらうことが出来たのでした。

タイトルに少し言葉を付け足してみました

ずっとタイトルで悩んでいたのでちょっと安心しております

引き続き頑張って執筆していきます

よろしくお願いします

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