7.中二病、切ない
【中二病あるある】
中二病は誰でもオリジナルの必殺技を持っている。
相手はだいたい死ぬし、世界は滅びる。
「着きました。ここがダークパレスの宝物庫です、クローナ様」
「う、うん」
この分厚い鉄の扉の向こうに…
私の遺産…頭に負のが付くそれは、何の因果かこの世界に紛れ込んでいるらしい。
クローナの基本設定が記載された黒の章。
血に眠る竜の因子について記載された竜の章。
クローナの罪について記載された罪の章。
正直ここまででも胃が捩じ切られそうな思いをしてるんだけど、過去の私は他にもノートを書いた覚えがあるし、あたおかか?ってレベルのものが本当に幾つもある。
「私は知っておかなくてはいけない…」
ここに何があるのか。
知っておけば多少ダメージを受ける覚悟は出来るから。
「いざ!!」
「ゔぉえぇぇぇぇぇ!!!」
無理。痛すぎて吐いた。
「これは王の魔眼。世界の全てを見通すクローナ様の第三の目です」
キラキラのスーパーボール!!
「何この剣!めっちゃ軽いじゃない!まるで羽だわ!」
「それは超神剣ゴッドエクスカリバー。クローナ様が討ち滅ぼした邪神の骨で造った剣ですね」
100均のおもちゃ剣!!
「じゃあこれは?時計みたいだけど」
「時の戒め。クローナ様はこの宝具で、崩壊する世界の時をお止めになられたのです」
「すっごーい!クロ様カッコよすぎー!♡」
お父さんからもらった壊れた腕時計!!
「ぉロロロロロ!!」
ダメージが…内臓へのダメージがすごい…
キツい…無理ぃ…死ぬぅ…
「はぁ、はぁ…これ、全部捨てよう…」
「いけませんクローナ様!」
「どぅえぇ?!」
「そうよクロ様!こんなもの軽く棄てたら悪用されるに決まってるわ!」
「されないよぉ…」
だってゴミだもん…
丁寧に一つ一つ保管されちゃってまぁ…
「残念ながら私一人では、クローナ様の宝具全ては集めきれず…。不甲斐ないです」
「ううん。これだけ回収してくれただけでもありがたいよ(恥を晒さなくていいから)」
感謝感謝。頭撫でてあげるくらいはしても大丈夫だよね?
「はにゃあ〜ん♡クローナ様が私の頭をぉ〜♡」
「ズルいズルい!クロ様あたしも、あたしも〜!」
「アハハ…」
しかし…ここにあるのも黒歴史のほんの一部だっていうんだから、昔の私ってほんとにキツかったんだな…
聖典だって、あと何冊書いた?
「うーん…。ん、これは…」
「常夜の外套。クローナ様が纏われていた聖鎧ですね。ただ…」
「穴が開いてるわね」
常夜の外套…実際はアベ○ルとかで買った3000円するかしないかの真っ黒なロングコートだ。
生地は薄いし変なとこにベルト付いてるし、普段着にするにはちょっと派手すぎる。
けど当時の私は毎日着てたし、これをカッコいいと思ってた。
はしゃいで引っ掛けて破っちゃって、それで着なくなったんだ。
「ハハ、ピッタリだ」
大人が着てちょうどいいんなら、きっとあの頃はダボダボだったんだろうな。
なんかちょっと切ない気持ちになる。
「よくお似合いですクローナ様♡」
「夜を支配してるみたい♡」
「ありがと。でももう着れないねこれ。やっぱり捨てた方が」
「とんでもありません!ここにある全てがクローナ様を象徴する宝なのですから!もしも値段をつけようものならば、どれを取っても三代は遊んで暮らせるだけの額になってしまいます!」
異世界での私の立ち位置どうなってんの?
「そうです!せっかくクローナ様のお手元に戻ったのですから、仕立て直すというのはどうでしょうか」
「仕立て直す?」
「はい!アラクネの中に、こと服飾に関して魔族最高の職人がおります!その者ならばきっとクローナ様にも満足していただけましょう!」
いや、べつにそこまでじゃなくても…
針と糸だけくれれば私自分でやるよ。
「ルナ、さっそく呼んできてください」
「なんでよ!あんた瞬間移動出来るでしょ!」
「私は今からクローナ様の昼食を作るんです。私の代わりに食事の用意をしてくれますか?」
「ぬぐぐ…」
ルナは家事何にも出来ないんだよね。
「わかったわよ!あたしがいない間にクロ様とイチャついたら殺すからね!」
「それはクローナ様次第です」
イチャつかないよ!
世間の目が怖いからね!