4.中二病、甘やかされる
【中二病あるある】
難しい言葉使いがち。
自分はそれを当たり前だと思っているし言い回しも難しくしがちなので、周りで聴いている人には通じないことが多いし、大概はめんどくせえなと思われている。
異世界に召喚されて、はや一週間。
なんとかボロが出ないうちに元の世界に帰らないと。
って最初のうちは思ってたんだけど。
「クローナ様♡あーん♡」
「あーん、んーおいちい♡」
この生活が楽すぎて、ね?
三食におやつ、好きなときに寝て、朝から晩までお世話付き。
仕事も家事もなーんにもしなくていいスーパー甘やかされ待遇。
帰る気がねえ、失せるんですよ。
「クローナ様、アリスは幸せでございます♡こうしてクローナ様の身の回りのお世話を出来るなんて♡」
アリスがほんとに尽くしてくれるんだよ。
それにこのお城が過ごしやすすぎる。
異世界?どうせ中世くらいの文化力なんでしょ?とか正直ナメてた。
ガス、水道、電気完備!
トイレはもちろん水洗!
食べ物はおいしい!ていうかお米も醤油もある!
お酒も飲み放題!さいこー!
お城の中で畑やらを育ててるから自給自足完ぺき!
お肉が魔物なのはともかく…なーんにも不自由が無い。
「ダメ人間になるねこれは」
アラサー社畜独身喪女がダメ人間じゃなかったのかはともかく。
なんやかんや最初の三日が一番キツかったかな。
「そういえばクローナ様は、何故そのようなお姿を?」
「そ、そのような?」
なんだ、みすぼらしいってか。
それともお肌のことか。
お?
「いえ、聖典に描かれているお姿は純黒の翼を生やし、瞳も紅蓮で。それで最初一瞬だけクローナ様だとわからず」
「かハッ!!」
だってそれ、当時一番カッコいいって思ったんだもん…
「そ、それは、あの」
「ああ!申し訳ありません!私ってば…クローナ様の真なる力の解放が次元を揺るがし世界を破滅させさせかねないと知りながら!聖典に書かれたこの文言…。いいのか?私の力を解放したとき、それが貴様が網膜に映す最後の光景となるぞ!……ああ、痺れますぅ!♡」
「ぐあァァァ!!やめろォ!!」
その攻撃は私に効く…
クローナ決め台詞集から抜粋やめろぉ…
わけあって力を封印している、っていうまたなんとも中二病くさい感じでごまかしてるけど。
いつまで保つかなぁ。
やっぱり正直に話す?でも…
「クローナ様、お風呂の準備が整いました」
「はーい」
帰る気がほんと失せる。
「アリスは偉いなぁ。何でも出来て」
「光栄です。いつかクローナ様をお迎えするためにと、花嫁修業に邁進して参りました」
「ほへぇ」
ん?
「花嫁修業って言った?」
「クローナ様、本日の夕食はオーク肉のステーキですよ」
「あ、はい」
アリスってこれでも14歳なんだよね。
そんな子に身の回りのお世話をさせる私…事案か?
ときにこの世界は二つの国に分かたれ、何千年も人間と魔族が戦争してるらしい。
人類統一国家――――ミストルテイン。
魔王国――――エンドレア。
強大な力を宿した魔族に対抗するために人間が用いたのが、秘技中の秘技――――勇者召喚。
あいにくと呼ばれたのは中二病だったけど。
アリスに助けてもらわなかったら今頃…
「これからどうなるのかなぁ」
ちょっとセンチメンタルになることもあるんだけど、それを忘れさせるように、この城ではいろんなことが起きる。
隕石が降ってきたり。
「おおふ…」
ドラゴンが襲ってきたり。
「キャハハハ♡アリスー♡殺しにきてあげたよー♡」
真っ赤なドラゴンがめっちゃ可愛い声で物騒なこと言ってるんだけど。