17.中二病、前触れ
【中二病あるある】
《我は唯一無二の最強》を常に心掛けている。
「其奴は偽物。我こそが本物のクローナ=ダークネスノヴァである」
ある日のこと。
私の前に現れたその人は、純黒の翼をはためかせ、紅蓮の瞳で私を見据えた。
そう、私が思い描いた最強の私……クローナ=ダークネスノヴァそのままの姿で。
「あなた、は……」
え?
どうなってるの?
本物……本物?!!
クローナは私……いや、私の妄想だけど……ええ?!!
いや待ってそれより!!
「…………」
「…………」
みんなポカンてしてるー!!
そりゃそうだよ!!
だって急に本物……じゃない、けどクローナが現れたんだもん!!
これは……マズい!!
だってどっちが本物っぽいかって言われたら向こうだもん!!
アラサー喪女の雰囲気皆無だもん!!
このまま私が偽物……もとい無力なおばさんだってバレたら……
「あ、あの……みんな……」
「騙されてはいけません」
ため息ついでにアリスは剣を払った。
するとクローナは真っ黒な霧になって散って消えた。
「あ、アリス?! 何今の!」
「物真似精霊。物体に取り憑き、その記憶を読み取って形を成す低級の精霊です」
「せ、精霊?」
「イタズラ好きで、たまにあのように人前に現れて驚かすのです。大方、聖典に取り憑いてクローナ様の真の姿を模したのでしょう。クローナ様の目には全てお見通しだったでしょうが」
お見通しじゃなくてすみません……
「アリスってばマジ空気読めてなーい。せっかくクロ様に化けたんだから、もっと堪能すればよかったのに」
「ていうかクローナのお姿を斬るとか不敬じゃない?」
「黙りなさい。こともあろうにクローナ様を真似るなど不届き千万。次見かけたら滅ぼしてやります」
「とかなんとか言って、こっそり自分だけで楽しんでそうですわ」
「そそそそ、そんなわけないでしょう! 私はクローナ様ひとすじです!!」
ありがたいけど……なんかベアトリクスちゃんが渋い顔してる。
まさかやっぱりあっちのが本物っぽかったから私が疑われて……
「どうしたんでござる? ベアトリクス殿」
「いえ、考えすぎかとは思いますが。物真似精霊は、時として不幸の前触れと呼ばれています。何か良くないことが起こる前兆では、と」
「不幸の前触れ……」
何それ怖い。
何も起きなきゃいいけど。
そんな風に窓の外を見やったとき。
「へ?」
一条の光が空を白く染めた。
ぼちぼち最終回が近付いてまいりました。