15.中二病、魔王襲来
【中二病あるある】
理由どうこう関係無しに魔王という存在が大好き
「クローナ様」
「ほへ?」
それはある日。
いろんなバタバタが一段落し、のんびり朝ごはんを食べていた時のこと。
「魔王がクローナ様への謁見を願っております」
「ぶっほェ?!!」
びっくりしすぎてウインナー口から飛び出た。
「ななな、なんで?!」
「畏れ多くも直接話すと言って聞かず。如何いたしましょう。クローナ様が面倒なのであれば、我々が魔王ごとこの国を滅ぼして参りますが」
「すぐ会おう!! すぐ!!」
選択肢が会うか滅びるかなら……うん、会うよ。
けど魔王かぁ……怖いんだろうなぁ。
話すことってなんだろ……もしかして自分の国で大きい顔してる私に宣戦布告とか……
それともどちらが本当の王か決めようって決闘の申し込み?
私なんて一瞬で消し炭だよ?
ヤバい緊張と恐怖で身体の震えが……
「クロ様ってばヤる気なのかっこい〜♡」
「へ?! ヤ、ヤる気?!」
「朝餉の邪魔をした魔王をどうしてやろうかと、怒りに震えてらっしゃるのですね。さすがです」
今にも泡吹きそうですけど?!
なんなら食べた目玉焼きが口からターンオーバーしそうですけど?!
「大丈夫だよクローナ」
「スーリャ……」
「もし魔王が無礼を働いたら、クローナより先にボクたちが暴れるから」
「そうでござるな」
「何も心配いりませんわぁ」
何これ前門の虎後門の狼?!!
のんびりした一日が急に四面楚歌になったんだけど?!
「クローナ様、魔王を連れて参りました」
「あ、は、はい」
アリスに誘われるまま姿を見せたのは、アリスと同じ背丈の可愛らしい女の子。
真っ黒なコートがとても良く似合って痛たたたた!
私の中二心を無為に刺激する!
銀髪にオッドアイがすっごい!
私が考えた最強の私みたいな子来た!
「貴様がクローナ=ダークネスノヴァか。吾輩はひぃん?!!」
「クローナ様に向かってなんですその口の利き方は」
「敬語使えない口なんて燃えちゃってもいいよね?」
「ていうかなんでクローナと同じ目線で喋ってるの?」
「跪くってことを知らないのでしょうか?」
「足が曲がらないなら斬って捨てるでござるが」
「魔王の足はクローナ様の剣の良い素材になりそうですわぁ」
みんな揃って殺気ヤバいぃぃぃ!
魔王樣涙目で子猫みたいになってるから!
「し、鎮まれ皆の者」
「はっ! 失礼いたしました!」
軍隊?
膝をつくスピードが音速。
「私の配下が失礼しまし……した。お初にお目にかかる魔王よ。私は」
「コホン……クローナ=ダークネスノヴァ、樣」
「良い。言葉を崩すことを許そう」
場の雰囲気で偉そうにしてゴメンなさい!!
「吾輩はゼロ=アルテオラ。魔王と呼ばれている者だ。一つ訊ねたいことがあってここに来た。この聖典に覚えはあるだろうか」
ん?
なんだっけあれ。
クリアファイル?
中にはルーズリーフが一枚入ってるだけっぽいけど。
「これは王の章。これによると、この世に存在する全ての王は母なるクローナ=ダークネスノヴァの血を引いた子であるとされている」
「王の章……」
あーそういえば最後らへんはネタが尽きかけて、ほんとにその場の勢いだけで適当なこと書いてた気がする。
中二病回復の兆しが見えてるなぁ。
いいことだ、うんうん。
…………うん?
全ての王は母なる私の血を引いた子?
「吾輩はこの世に生を受けたときから天涯孤独。故に孤高の王であった。しかし……ここに書かれていることが事実であるならば」
「事実であるならば……え?」
「貴様は……否、貴方様は……吾輩の母様であるということなのだろうか」
「母……うぇぇぇぇぇ?!!」
「母様ぁぁぁ!」
「いやっ、ちょっ?! 待っ、母様?! 何がどうなってる今?!」
魔王が泣きながら抱きついて、私がお母さんで、んんん?!!
「ずっと……ずっとお会いしたかった……!! ずっと寂しかった……!!」
「あの……えっと……」
「ずっとこうして……母様のぬくもりに抱かれたかった……!!」
言いづらーーーーい!!
いや言えるかぁ!!
本当は母様じゃないよって?!
それ適当に書いた落書きワロタって?!
こんないたいけな子に?!
普通に無力がバレるより罪重いんじゃない?!!
い、いや、こんな超展開……きっとみんなは信じるわけ……
「そんな過去があったのね……」
「なんと感動的な再会でござる……」
「私としたことが目頭が熱く……」
みんなぁぁぁぁ!!
クローナのことになると途端にポンのコツ!!
どうする……どうするどうするどうする!!
「あ、あの……ゼロ、ちゃん? あのね……」
「母様……ずっと大好きでいていい?」
「これからは一緒にいようね!!!」
ふぇぇぇぇん!
私のバカぁぁぁ!!