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14.中二病、とことん心酔される

 【中二病あるある】

 戦いはもちろん、どの分野でも天才を誇るので一度は専門書を読む。

 でも読み切ったことはない。

 帝王学と心理学は通る。

 獣人に鬼人族(オーガ)の一団さんたちが増えて、街は少しずつ賑わいを見せてきた。


「クローナ様、おはようございます!」

「おはようございます!」

「お、おはよう、ございます」


 ヤンキーの挨拶みたいになってるんだけど。


「みんなクロ様の威光に平伏してるわね。気分いいわ」

「当然のことです。クローナ様は全ての頂点に立つお方。有象無象は肉の絨毯であるべきなのですから」


 ベアトリクスの言い分が怖すぎる。

 側近…っていうか幹部のこの子たちは一部の隙も無く全員怖いんだけど。

 ちなみに幹部っていうのは勝手に名乗ってるだけで、べつに私が採用したとかじゃない。


「それよりあれ、いつまでああして落ち込んでるの?そろそろボク鬱陶しいんだけど」

「クローナ様の神剣…」

「妖刀が…」


 前の決闘からずっとあんな調子なんだよねあの二人。

 いいって言ってるんだけどな。

 ほぼゴミだから。


「やはり死んでお詫びを…」

「ご先祖様に顔向け出来ないでござる…」


 いや、ほんと、ゴミだからさ。


「あーもうウッザイ!!そんなに直したきゃミルクティナでも呼んできなさいよ!!」

「はっ、そ、それです!!」

「それでござる!!」


 二人して瞬間移動しちゃったよ。 


「ミルクティナ?」

「連れてきました!!」

「はっや!!どんだけ急いでるの?!」

「な、なんですの?!何事ですの?!」


 これまた目を見張る可愛い子ちゃんだな。


「クローナ様、これはミルクティナ=ソーディアス=ディガーディアー。ドワーフが誇る王級鍛冶師(ブラックスミス)。今代随一の職人です。彼女なら間違いなく、神剣も妖刀も元通りに復元が可能でしょう。そういうわけですミルクティナ。早く直しなさい」

「主語と述語の概念でも超越してますの?!ちゃんと説明なさい!!」


 かくかくしかじか。

 

「おバカなんですの?!!たかだか剣の一本や二本のためにこのわたくしを呼んだ?!!わたくしを誰だと思ってますの?!!むきーーーー!!」


 そりゃ怒るでしょ…

 なんかすごい子っぽいもん。

 そんな子にガラクタ直せなんてさ。

 ていうか、こんなの剣じゃない!とか言われて一般人バレとかしちゃったら……うっ、吐き気が…!


「そこのあなた!!」

「は、はいっ!」

「このイカレポンチを束ねる立場ならしっかり手綱を握っておいてはくれませんこと?!迷惑を被るのはこっちですのよ!!」

「仰るとおりです…」

「ふんっ!それはそうと、どうもはじめまして!ミルクティナ=ソーディアス=ディガーディアーですわ!せっかくならサインの一つでもいただいてよろしくてよ!あ、鞘のところにお願いしますわ!」

「へ?あ、あのミルクティナちゃん?」

「は?はー??なーにを不届きな!もっとフランクにミルクちゃんと呼べばよろしいのではなくて?!」

「お、おお…ミルクちゃん」

「きゃーきゃー!クローナ様に名前呼ばれちゃいましたわー!」


 この子もちゃんとクローナ信者じゃん!!


「それで?刀は直せるでござるか?」

「とーっぜんですわ!わたくしを誰だと思ってますの?どんな剣だろうとちょちょいの……な、なんですのこれは!!!」


 ひいいいい!

 ただのおもちゃですゴメンなさぁぁぁい!!


「こんな剣…見たことがありませんわ!!」

「ほぇ?」

「羽のように軽く、触っても斬れない刀身…クローナ様の技術は剣をここまで軽量化…更に使用者の意思を汲むことで斬るという概念を与える…そういうことですの…?このわたくしでさえ理解が及ばない剣なんて…」

「あ、いや、違う…」

「残念ながらわたくしにはこの剣は直せませんわ……。しかしこのミルクティナ、クローナ様のお傍で技術を学び、いつしか天下に名高いクローナ様の剣を打ってみせますわ!!」

「な、なんでそんなことになってるの?!いやほんと、剣とかいいから!!お鍋とか作ってもらった方が有意義だから!!」

「さすがクローナ様!!さすがクローナの神剣!!ああこのアリス、感涙で視界が…!!」

「主殿、まさにあっぱれでござるぅ!!」

「あの、ほんとに…」

「マジラブですわクローナ様ーーーー!!♡」


 ほ、ほんと……中二病でゴメンなさい!!!




 ――――――――




 人類統一国家ミストルテインにおいて、女王フィルレティシアの意思は絶対であり、最終的な意思決定機関を個人で担っている。

 それ故に、


「はぁはぁクローナ様ぁぁぁぁぁ!!♡♡♡」


 少女がよだれを垂らしただらしない顔をして玉座に座ろうと、(クローナがゲロした)ドレスに顔を埋めようと咎める者はいない。


「あのとき…あのときクソ天使がクローナ様を拐わなければ…!!」


 自分は処刑しようとしたことなど、とうに忘却の彼方。

 フィルレティシアは聖典(ノート)を手に、ハッとした。


「そうです。私が自分で探せばいいではありませんか」


 ウキウキ足で向かったのは城の格納庫。

 鎮座する巨大な()()を見上げ、フィルレティシアはムフーと鼻息を荒くした。


「ああ、いつ見ても美しい。クローナ様の叡智、そして人間の技術の粋を集めて作った、()()()()()()()()


 その純白の獅子は佇立して尚、王はかく或るべきと沈黙する。


「今参ります、クローナ様…♡」

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― 新着の感想 ―
[一言] 専、専用機だと!? 止めてくれカカシ、その術はオレに効く ......しょうがないじゃん、ロボットカッコイイもん
[良い点] ミルクちゃん....?
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