13.中二病、泣かれる
【中二病あるある】
"絶"、"極"、"真"、"神"、"天"、"冥"
の漢字が大好きなので技名には絶対取り入れる。
「いざ、尋常に!」
「わぁぁぁぁ!」
刀が私の眼前に迫ったのと、アリスが間に割り込んでくれたのがほぼ同時。
私はへたり込んで、膀胱の栓を閉めるのに必死だった。
「拙者の剣を見切った…見事でござるな」
「クローナ様に刃を向けるとは…何たる不敬!死を以て贖いなさい蛮族が!!」
「あわわわわわ!」
二人の剣の速いこと強いこと。
もうね、私の目じゃ追いつかないんですよ。
「アリスと互角なんてやるじゃないあの鬼娘」
なんか互角らしいけど、それはそうなんだよ。
神威絶刀流は、混沌の十三剣と同じく、クローナを漆黒の剣王たらしめるものの一つだ。
天を裂き地を割る天下無双の剣。
で、二つの違いが何かって話なんだけど……使う武器が剣か刀かってだけ。
あとは全部同じなんだよぉ!!
型とか技とか!!
神速なこととか!!
だから優劣なんて付くはずないの!!
「くっ!クローナ様の技が通用しないとは!」
「拙者と同レベルの剣の使い手…やるでござるな!」
ごめぇん武器の心得とか皆無の中二病がイキって考えたばっかりに!!
このままじゃせっかく出来てきた街が…
けど勝負がつかないし、どうしたら…
「っ、クローナ様!」
「は、はい!」
「申し訳ございません。私の剣が未熟なばかりに、クローナ様に恥を…」
恥なら絶賛かいてるけど…
「罰は後ほど甘んじて受けます。ですがその前に、あの愚か者を斬るべく…私に神剣を使う許可を!」
「神剣…ゴッドエクスカリバーのコトぉ?!!」
「今の私にクローナ様の剣を使う資格が無いのは重々理解しています!しかし、神剣でなくてはあの蛮族を斬ることは叶いません!どうか!」
「やめた方がいいと思うよ?!!」
だっておもちゃだもの!!
100円で変えるやつだもん!!
アリスの剣の方が100兆倍いいやつだよ!!
「たしかに、神剣は資格無き者の魂を侵食する諸刃の剣…。私に資格があるかはわかりません。ですが私には覚悟があります!!」
カッコいいけども!!
そういうことじゃないんだよなぁ!!
「クローナ様!!」
「う、うぅ…アリス…きっ、貴様のはたらきに期待しよう!!」
「ありがたき幸せです!!」
私のバカぁ!!
こんなおもちゃ渡してどうにかなるかぁ!!
「待たせましたね。ここからが本気です」
「上等でござる。ならば拙者も本気でいくでござるよ」
「あっちも武器を変えましたね」
「あれって、まさかクローナの?」
「あば、あばばばば!」
「これこそは妖刀・百鬼羅刹。魔王が至高の一振りでござる」
ひ、ひぃぃぃぃ!!
ひゃ、100均んんんんんん!!
「クローナ様、私に力を!!」
「神威絶刀流の奥義に散るでござる!!」
「はああああ!」
「せやぁぁぁ!」
プラスチックとプラスチックが激突する。
とんでもない衝撃波に地面が抉れたよ?
じゃあやっぱ君たち武器何でも良くない?!
けど、勝負はその一撃で決した。
パキン――――――――
安っぽい音が鳴って刃が折れる。
「?!」
「?!」
そりゃそうでしょ…
重ねて言うけどおもちゃだもの。
全力でぶつけ合ったら壊れるよ。
それも異世界の超人的なパワーで。
「ク、クローナ様の…剣が…」
「妖刀が…」
ヤバい…ヤバいヤバいヤバい…
さすがにバレる…
おもちゃを使わせたことが…
私がただの無力なアラサーなことが…
「ふえ…」
「ふえ?」
「ふええええん!クローナの剣、折っちゃいましたぁ!ふえええええん!」
「えええ?!なんでギャン泣きしたの?!」
「も゛っ申し訳ありませぇぇぇん!クローナ様ぁぁぁ!」
「怒んないよ?!!」
だっておもちゃだもん!!
あーあー涙で顔ぐしゃぐしゃにして…
「よしよし、泣かない泣かない。怪我なくて良かったよ。アスカちゃんも無事……」
「びえええええ!せっ、拙者のよぉどぉーーーー!折れちゃったでござるぅー!びえええええん!」
「こっちもギャン泣き?!!あーほらほら泣かないの!いい子いい子だから、ね?」
「ひっ、えっぐ…うぅ主殿ぉ…」
「あ、主殿?」
「もっと、もっと、ギューってしてでござるー!」
「ひぎゃああああ鬼のパワー強いぃぃぃ!あっ、ちょっ、離れてぇぇぇぇぇ!!」
身体はバッキバキになったけど…
何はともあれ、一件落着…かな?