11.中二病、悶える
【中二病あるある】
詠唱は日本語、英語、造語とパターンがある。
ネ○ま!世代はラテン語も使う。
なんやかんや無詠唱も一度は通る。
魔王国エンドレアは他種族共生国家だ。
端的な話が、一口に魔族って言ってもいろんな種族がいるってこと。
天使であったり、ドラゴンであったり、アラクネであったり。
さすが異世界。さすがファンタジー。
そんな中でアリスが連れてきたのが、
「クローナ様、彼女はベアトリクス=ベアトリーチェ。悪魔の司祭をしている者です」
「よろしくお願いいたします。クローナ陛下」
おおぅ…悪魔ぁ…
聖職者なのにセクシーで、これでアリスたちとタメとは…
乳デッカ!!!
「あの、天使なのに悪魔と交流あるの?めっちゃど偏見で物言ってるけど」
「昔、ちょっと…」
「アリスとは幼なじみで、よく殺し合いをした仲です」
そんな笑顔で言うことじゃなくないか。
「ちょ、ちょっとベティ!クローナ様に変なこと言わないでください!」
「フフッ、親愛なる陛下に隠し事をするのは不敬ではないの?暴虐殺戮天使さん」
「暴虐殺戮天使?」
「きゃあああああ!!」
「今でこそこうですが、アリスは小さい頃それはやんちゃで。よく悪魔にケンカを売っては、悪魔の大人たちを半殺しにしていたものです」
やん、ちゃ…とは?
「ていうかあんた先代の魔王ともヤり合ってたでしょ」
「魔王の財源の8割奪った話だろそれ」
「8割も奪ってません!せいぜい7…6割、とか」
やってんなぁこの子。
「そ、それにそんなの5歳とかの頃の話でしょう!」
いやエリートなやんちゃじゃん。
「アリスって怖い子なの?」
「嫌ぁぁぁ違います違います違います!たしかに昔はちょーっとやんちゃでしたが!クローナ様の聖典を手にしクローナ様の御心に触れたときから心を入れ替え邁進して参りましたぁ!!」
「アリスの奇行が収まるきっかけになったものですから、天使と悪魔の一堂は皆クローナ陛下を心酔しているのです。もちろんこの私も」
「は、はぁ…」
それってもれなく思春期に中二病に目覚めたとか、そんなことじゃないの?
で、アリスの幼なじみのベアトリクスちゃんに何をやってもらうかって話に戻る。
ダークパレスを中心に結界を張ってもらって、それで隕石を防いで一件落着〜ってことだったんだけど。
私は知らなかった。
「では、始めさせていただきます」
「ん?その真っ白なノートは……ンがぁ?!!!」
ベアトリクスちゃんも、聖典(笑)の所有者であること。
それが、痛々しい黒歴史の中でもトップを争う中二設定……超魔導王クローナについてを事細かに書き記した白の章であること。
「白き鼓動よ魔を歌え、黒き脈動よ星を読め」
「嫌ぁぁぁ!やめてやめて音読しないでぇぇぇ!!ちょっ、ほんとに待っヴォエェェェ!!」
何の意味も文脈も無いカッコいい言葉の羅列に、これまた意味も理由も無い適当な字を当てた詠唱を、ベアトリクスちゃんが完全に記憶していること。
「端境期を走れ、黎明と黄昏にて命じる、永遠の聖域の祝福を」
そしてベアトリクスちゃんは、それらの魔法を現実のものとして使えてしまうということを。
「空を聖なる幕が覆っていくわ」
「荒廃した大地を緑が茂っていくよ」
「ふぅ。如何でしょうかクローナ陛下」
「如何もなにも…」
すごいやら恥ずかしすぎて死にそうやらですが。
「私では城を中心に100キロに守護を張り、向こう100年の豊穣を約束するくらいしか出来ず恥ずかしい限りです。クローナ陛下ならば、この世界を丸ごと御力で包み込めたでしょうに」
「ハハハ…」
乾いた笑いしか出てこない。
どこまで行っちゃうのこの子たちのクローナ信仰。
いやどこまで行っちゃってるの?!
もう胃が捩じ切れちゃうよぉ…