3話 書きかけ
アルディマギア世界には、大きく分けて2つの種族が存在する。
1つは丸耳を持つ私達、人間や動植物。
獣神リファエラと、精霊王ヘイレンによって創られた者達。
死後しばらくは遺体が残り、そしていずれは土に帰る者達。
そしてもう1つは魔物や異種族。
魔神ダリアクラウンによって創られた者達。
死後すぐにその遺体は霧散し、空気に帰る者達。
魔物というのが、それはそれは沢山の種類がいて、いずれも無差別に人を襲う凶暴な性質を持っている。
とてつもなく巨大な物から虫程度の物。
体表は浅黒く、腐卵臭が特徴的。
魔物による被害は後を絶たない。
対して異種族とは、“人ならざる人”の総称で、種類は3つ。
長い耳と美しい容姿を持つ 精霊種
悪魔の角を持つ魔人種
そして獣の耳と尾をもつ獣人種
個々に異能を持ち、それは時に人間の最大の脅威となる。
人間とは本質的な体の造りが違う。
研究所による様々な異種族実験が行われるも、死ねば霧散してしまうため、異種族について解ったことは少ない。
…………………以上が、今まで書物で読んだり聞いたりした、私の生物知識だ。
今まで読み聞きしただけで、実際に見たことはなかった。その上混血児だなんて、思わず彼をまじまじと見てしまう。
獣耳は髪色と同じ茶色で、目は人ではあり得ないような金色。混血児だからか、人の耳もあり、しっぽはない。
「…………ゴホン、姫様。この者はお気に召しましたでしょうか?」
その連れてきた男性の言葉で我に返る。
目の前の青年は、先程から変わらず無表情だ。
メリーのそれとは違う、本当に何も感じていないような冷めた瞳。