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第49話 真の光の勇者

カゲチヨは、異空間に取り込まれていた。


そこは見覚えのある場所。


薄い雲のようなものが這い回っている。

何があるわけでもないようだが、遠くまで見通すことはできない。

なんとも不可思議な空間だ。


そして、カゲチヨの姿は、すでに現実の10歳の少年に戻ってしまっていた。


「ここは……? 異世界転移した時に、来た場所です……?」


「そうよ。久しぶりね」


目の前で、フッと女性が出現する。

……女神アシュノメーだ。


相変わらず、目のやり場に困る薄い布を纏っている。

彼女は、ゆっくりとカゲチヨの元へと歩いてきた。


「……ああ、やっと二人っきりになれたのね……」


「え⁉︎」


予想していなかった女神の言葉に、カゲチヨは戸惑う。

ニヤニヤとする女神。


「うふふふふ……」


「えっと……、そのぅ……?」


「さぁ、始めましょうか」


「え⁉︎ あ、はい。すぐにあっちに戻らないと‼︎」


「……二人の、……いえ、夫婦の共同作業を」


「は? ……え、あの、ちょっと⁉︎」


女神の手がカゲチヨの頬に触れる。

ひんやりと冷たい。


「え⁉︎ あ、あのぅ⁉︎ ダ、ダメなんです‼︎ みんな困ってるんです‼︎ すぐに戻らないと……」


「いいじゃないのよ。他の誰がどうなったって。私には関係ないわ。……魔王がどうとか、アホ勇者がどうとか。そもそも私にはどうだっていいのよ」


「メルトナさんたちもですか? ……女神兵団さんもいましたよ」


「……それはちょっと、……困るわね」


「なら、早く戻らないと‼︎」


「……いいじゃないのよ。ちょっとぐらいイチャイチャしたって……」


「ダメです‼︎ ボクは勇者なんです‼︎ ボクはアキラや、ノヴェトさんもみんなを守るのです‼︎」


「……はぁ。分かったわ。じゃあすぐに始めましょうか」


「ところで……、どうして女神様はここに来られたんです?」


「え? ああ。あのクソ魔王は何か勘違いしてるみたいだけど……。この勇者召喚機能の空間は、私の心の中なのよ。そして、女神神殿の一部でもあるの」


「心の中……?」


「人はね、心の中に異空間を持っているのよ。この空間を正確に認識することこそ、異世界干渉の第一歩なのよ。そして、それは魔道の真髄でもある……。まぁあのクソ魔王は、全然違う方法で干渉してるっぽいけど……」


「は、はぁ……」


「さぁ、とにかく始めるわよ。カゲチヨくん、貴方が世界を救うのよ。そして、生きて戻るの‼︎ ……だって、新婚旅行はもう場所決めてるんだから‼︎」


「あ、そういうのは要らないです」


カゲチヨの声は冷たかった。





魔on。


アキラは狼狽え、女魔王の首を絞める。


「ど、どうして、あのまま行かせたのっ⁉︎ カゲチヨ、吸い込まれちゃったじゃないのよ⁉︎ どうすんのよ⁉︎ ちゃんと戻ってこられるんでしょうね⁉︎」


「時間ギリだったんでござるよぉー! 拙者は悪くないでござるぅーっ‼︎」


「アイツ、突発的にこういうことするんだよな……」


ノヴェトも頭を抱えている。


思えば、ノヴェトが一度死んだ時も、その前に身を挺して庇っている。

『勇者として人の役に立ちたい』という思いがあるのだろう。

だが、その思いに身体がついていけず、カゲチヨは空回りしていた。


だが、それを咎めるべきだったのか……。

ノヴェトは今も分からない。


「で……、まっちゃんは何してんの?」


女魔王は、なにやら儀式を始めていた。


フェアリー魔王の全身から、怪しげな文字や魔法陣が出現している。

辺りは異様な空間に変わっていた。


「さぁ、いつでも戻ってくるでござる、カゲチヨ殿‼︎ ログインした瞬間に、とっておきをお見舞いするでござる‼︎」


「……あのさ」


ノヴェトは女魔王に問いかける。


「な、なんでござる? 今、忙しいのでござるが……」


「カゲチヨと一緒に、BBAも行っちゃったんだけど……。ちゃんと戻ってくるんだろうか。……いやその、向こうでBBAに捕まってんじゃ……?」


「あ、ああ……、ああああ⁉︎」


女魔王も、ようやっと自体の深刻さに気が付いたのか、顔面が真っ青になった。


「ま、まぁ、ここには女神兵団もいるでござるから、大丈夫でござろう。というか、そういうことにしないと話終わってしまうでござるから……。それよりもプラグインの準備をしないと。シヴァデュナートくんはいるでござるか?」


「え、いないけど……?」


「え……? さっき、どっかその辺に転がってたでござるよね……? カゲチヨくんを巨大化するには、プラグインでシヴァデュナートくんを生贄にする必要があるでござるよ。勇者氏、ちょっと行って拾ってくるでござるよ」


「い、生贄⁉︎」


丁度その時、ノヴェトらの元へ3人が駆けつけた。


「ノヴェトさん、……状況はどうなってるんです?」


それは、人族幼女となったロミタン。

そして、小さくなったシヴァデュナート、そしてオーガであった。

全員、傷付いてはいるが、大事はないようだ。


「おお、ロミタン殿。丁度良いところへ」


「丁度? 何かあるんです?」


「あー、えっとそっちのキミ、こっちへ来るでござるよ」


それは、シヴァデュナートへ向けての言葉だった。


「ん? なんだ貴様は? 私を誰か知って言っているのか⁉︎ ……いや、どこかで見たような……」


「まぁまぁとりあえず、拙者が誰かは置いておいて……。ちょっとこっちへ来て、そこへ立つでござる」


「ん? こうか? それで、これが何なんだ……?」


「案外、素直なヤツだな……」


ノヴェトは、その様子を側で見ていた。

これから何が起こるかは大体予想できるが、深く突っ込まないようにした。


「えい」


女魔王は、魔法陣のための操作盤に触れる。

……すると、シヴァデュナートの足元の魔法陣に高圧電流が流れる。


「んぎゃああああああああっ⁉︎」


そして、シヴァデュナートの姿が消失した。

ドン引きのノヴェト。


「うわっ⁉︎ 消えた⁉︎ …………え? 死んだ? 死んじゃったの?」


「よし、これで巨大化の準備は完了でござる。カゲチヨくん再召喚時に、自動で巨大化されるでござるよ」


「さっと流したなぁ……。あの子、一応大規模アップデートのラスボスだったのに……」


ノヴェトは、今は亡きシヴァデュナートへ想いを馳せる。

だが、すでに顔は思い出せない。


アキラは、ひどく怪訝そうな顔をしている。


「まさか……、あのシヴァデュナート(しろいオッサン)と、カゲチヨが合体するんじゃないでしょうね……?」


「合体というか……、融合でござるかね? 名付けて『生贄融合勇者召喚』‼︎」


「ちょっとぉ⁉︎ あとで、ちゃんと元に戻せるんでしょうね⁉︎」


アキラは、また女魔王の首を絞める。


「ぐぅ⁉︎ く、苦しいでござるよ! ……大丈夫でござるから、戻るでござるから‼︎」


「絶対戻るのね⁉︎」


「手を離すでござるよ! 絶対戻るでござるから! …………たぶん」


「たぶんってなによ! なんでそんな曖昧なのよ! 死ぬ気で戻しなさいよ‼︎」


「分かっ……、ぐっ⁉︎ じ、死ぬ⁉︎ ぐぅ⁉︎ ……善処するでござるからぁ……っ‼︎」


そうこうしていると、カゲチヨが召喚され始める。


だが、まだ姿は見えない。

感知したのは、フェアリー魔王だけだ。

奇妙な雄叫びをあげ始める。


「カゲチヨくん戻ってきたでござる‼︎ 早速プラグイン・オン‼︎ 生贄効果発動‼︎ ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽう‼︎‼︎」


急に暗雲が出現し、激しい落雷が落ちる。

それは、バチバチと空間を歪める。


カゲチヨは遥か上空に出現した。


そして落下し始め、雷と共に大地に降り立つ。

同時に激しい地響きが起こった。

大地に降り立ったカゲチヨは、現実の10歳の姿に戻っていた。

……だが、アヴァロワーズに匹敵するほど巨大だ。


カゲチヨは、空気を震わせるような大声で叫ぶ。


「皆さん‼︎ ただいま戻りましたぁ‼︎」


「カ、カゲチヨぉ⁉︎ デカ……、デカぁ⁉︎」


ノヴェトは、カゲチヨのその大きさに圧倒された。





アヴァロワーズも一瞬動揺したが、すぐに身構えた。


「ほう、これは驚きましたよ、勇者カゲチヨ様。そのような奥の手を隠していたとは……。正直、私は貴方を侮っていたようです。さぁ、これこそが最後の戦いです。行きますよ‼︎」


アヴァロワーズは、巨人少年カゲチヨに向かって片手剣を打ち下ろす。


だが、カゲチヨは何も武器を持っていない。


「ひっ⁉︎」


カゲチヨは、身体を強張らせ、両手で防御しようとする。


しかし、さすがのアヴァロワーズもそんなカゲチヨを斬り付けられない。

……片手剣を大地に刺し、カゲチヨの肩を軽く手で小突いた。


「ああ……っ‼︎」


尻餅をつくカゲチヨ。

それを見たアキラは、猛抗議する。


「ひ、卑怯よ! 大人が子供をいじめるなんて‼︎」


「えっと……?」


カゲチヨのあまりの弱さに、目一杯困惑しているアヴァロワーズ。


だが、その困惑はノヴェトらも同様であった。


「……だよねぇ。そうなるよねぇ」


「まぁ、そうでござろうな……」


全員、今まで妙なテンションだった。

だが、冷静に考えれば、現実のカゲチヨがアヴァロワーズに勝てるわけもなく。


しかし、そこでニヤリと女魔王が笑う。


「……と、思うでござろう?」


「え? まだなんかあんの?」


「ふふふ……、シヴァデュナートを生贄にして得た能力は、巨大化だけではないでござるよ……。ロボにもあった『能力複製機能』でござる‼︎ こちらの魔法陣に、追加生贄を投じることで、その能力を獲得できるのでござる‼︎」


「追加生贄て」


「さぁ、勇者氏! ずいっと、ずずずいっと、進み出て、生贄になるでござるよ! そうすれば、カゲチヨくんに異能力『鈍感力』が発現するでござる‼︎」


「……え、いやですけど?」


「え? ……ほら、カゲチヨくん、このままじゃ勝てないし……」


「だって、生贄でしょ? いやですけど。……というか、高圧電流エグいんよ」


「もうワガママばっかり……、しょうがないでござるね。じゃぁ、オーガくんでいいや。さぁ、オーガくん、魔法陣の中へ」


オーガは、首を左右にあらん限りに振り続けた。


目の前でシヴァデュナートがどうなったのか、さっき目撃したばかりなのだ。

それで『はい、そうですか』と生贄になる者はいないだろう。


丁度そこへ、近付いてくる者がいた。

……コジロウだった。


口笛を吹きながら、まるで通りすがりの通行人のように近寄ってきた。

……全員、その不自然さに何も言わずに見守っている。


女魔王は、そんな彼に声をかけた。


「……コジロウくん」


「お⁉︎ も、もしかして魔王様ですか⁉︎ いやぁ奇遇ですねぇ、こんなところで会うなんて。……いやぁ、ホント、こんなことってあるんですねー?」


「白々し過ぎんだろ……」


ノヴェトはその様子を見守ってはいたが、ツッコまずにはいられなかった。


「コジロウくん、良いところにきたでござる。ちょっとその魔法陣の上に、立って欲しいでござる」


「ええ⁉︎ なんです〜? しょうがないですねぇ……」


コジロウはそう言いながら、素直に足を踏み入れようとしたその瞬間。

女魔王は、生贄の高圧電流を流した。


だが……。


コジロウの方が上手だった。

……忍術スキルを発動。


「『隠遁・問答無用身代わりの術』‼︎」


このスキルは、近い人と立ち位置を強制的に入れ替える。

誰が対象となるかは完全ランダムだ。


その結果、入れ替わりで足を踏み入れたのはオーガだった。


「んあ⁉︎ ……ぬああああああああああああああああっ⁉︎」


高圧電流を食らって大絶叫のオーガ。

そして、消失。


「うわぁ……」


ドン引きのノヴェトとアキラ、ロミタン。


コジロウは不敵に笑う。


「……ふふふ。私を嵌めようったってそうはいきませんよ、魔王様?」


「ふふふ、やるでござるね、コジロウくん」


「……いや、巻き添え食らったオーガくんは?」


そして、カゲチヨに異変が起こる。


カゲチヨはみるみるムキムキになり、全身が盛り上がった。

膨張する筋肉で、身体は5倍ぐらいに膨れ上がる。

殆どの衣服は、その膨張によって弾け飛び、白いブリーフだけが残った。


突然の身体の異変に、戸惑うカゲチヨ。


「こ、これは……?」


ロミタンが嬉しそうに叫んだ。


「あ、あれは⁉︎ 『カゲチヨくん・マッスルフォーム』なんです‼︎」





「マッスルフォーム……?」


あまりにも変わり果てたカゲチヨの姿。

ノヴェトはポカーンとした表情を浮かべる。

そして、当のカゲチヨも同じように戸惑っていた。


「ボ、ボクの身体、どうなっちゃったんですぅ……?」


「声太っ⁉︎」


「で、でも、どうしてか分かりませんが……、力が……、筋肉が湧いてくるのです! これでみんなを守れるのです‼︎ ボクは、筋肉の勇者だったんです‼︎」


カゲチヨの変わり果てた姿に、軽く怯えているアヴァロワーズ。


「ひっ⁉︎ い、一体何をしたのです⁉︎ なんですそのモリモリの筋肉は……? ちょっと気持ちが悪いんですけど……」


なにせ小学生の愛らしい顔のままで、身体だけムキムキゴリゴリの筋肉の塊。

アンバランス過ぎて少々不気味だった。


「さぁ、アヴァロワーズさん、これでボクも戦えます‼︎ 行きますよ‼︎」


「声太っ‼︎ ……分かりました、受けて立ちましょう。……って、いや、待って。貴方、なんでそんなにすんなり受け入れちゃったんですか……」


「すみません、少し手荒ですが……、ヤァ‼︎」


カゲチヨは、アヴァロワーズを目一杯押した。

アヴァロワーズは、それを二本の剣で受け止める。


「ぐぅ⁉︎ パ、パワーがここまで上がっているのですか⁉︎ ですが……、動きがまだついていってないようですね‼︎」


剣を押し込み、いなすようにカゲチヨを吹き飛ばす。


「うわぁああ‼︎」


尻餅をつくカゲチヨ。


「くそっ‼︎ パワー上がっても、それ以外がダメじゃ……」


ノヴェトは一瞬考える。


「それ以外……」


そして、叫ぶ。


「カゲチヨ! オマエの異能力を使え! 『光の勇者』でねじ伏せるんだ‼︎」


「光……、ああそうです‼︎ そうなんです‼︎ はああああっ‼︎」


カゲチヨはブリーフを少しだけ下げ、お尻をちょっとだけ露出させる。


「なっ⁉︎」


アヴァロワーズはその場に跪かされた。


「こ、これは⁉︎ カゲチヨ様の異能力⁉︎」


その場にいた殆どの者が、その巨大な光る尻に跪いた。


「そして、こうなんです‼︎」


カゲチヨはお尻を出したまま突進。

ヒップアタックを繰り出す。


「ぐはあああああああ‼︎」


アヴァロワーズの顔面に、カゲチヨのケツがめり込む。


ノヴェトは、予想していないカゲチヨの行動に戸惑う。


「え? ……あ、いや、尻で戦えとは言ってない……」


カゲチヨはしゃがんで溜める。


「そして、これが……。『勇者流筋肉拳法・雷撃昇天……、お尻ッ』‼︎」


カゲチヨは、勢いよくお尻を上空に突き出す。

そのゴリゴリに鍛えられたお尻の一撃は、壮絶だった。

アヴァロワーズは、遥か上空へと打ち上げられる。


「なああああにぃいいいい⁉︎」


アヴァロワーズは素っ頓狂な声で叫ぶ。


そしてアキラも、目をまん丸にして叫んだ。


「あ、あれ‼︎ 私の技‼︎ お、お尻で⁉︎ ……すごいわ‼︎ いっけえええええカゲチヨぉ‼︎」


女魔王は、その光景に愕然とする。


「こ、これは⁉︎ 光の勇者による屈服からの、一方的な攻撃……っ⁉︎ まさに超必殺技‼︎ ……これが本当の勇者……、ということでござるか……」


「ケツ丸出しなのが、勇者の正統スタイルなの……?」


ノヴェトは何も理解できない。


カゲチヨはお尻を突き出し、両手を広げる。

そして、そのままジャンプし、空中のアヴァロワーズへと追いつく。


「くぅ⁉︎ な、なにを……っ⁉︎」


ノヴェトも叫んだ。


「なんかよう分からんが、もういいや。……最後はお前が決めるんだぁ‼︎ いっけええカゲチヨぉ‼︎」


「はい‼︎」


カゲチヨの元気で野太い返事が返ってくる。


カゲチヨは空中で溜めるように、ポーズを決める。

そして、くるりとアヴァロワーズの上に回り込み、お尻をぶるんと震わせる。


「そして……、『勇者流筋肉拳法・雷光お尻ッ落とし』‼︎」


アヴァロワーズにお尻がヒットし、そのまま地面に叩きつけられる。

その勢いで再び、空中にバウンドする。


「ぐわぁああああ⁉︎」


カゲチヨは見事に着地し、ポーズを決め、またお尻を突き出して両手を広げた。


「そして、こっからはボクのオリジナルなんです‼︎ はぁああああああ‼︎」


「『勇者流筋肉拳法・雷神お尻ッ手玉』‼︎」


カゲチヨは落ちてくるアヴァロワーズの下に回り込み、再び突き上げる。

そして、落下してくる度に、何度も突き上げた。


「ぐっ⁉︎ ……ぐはっ⁉︎ ……ば、馬鹿なっ⁉︎ がはっ⁉︎ ……この私がっ⁉︎ ぶはっ⁉︎ ……こんなっ⁉︎」


それから延々と、お尻でお手玉され続けるアヴァロワーズ。


女性陣、全員で跪きながら叫ぶ。


「「いっけええ‼︎ カゲチヨぉ‼︎」」


「「カゲチヨくん‼︎ 頑張って‼︎」」


しかし、その場で一人だけ、立って佇む者がいた。

『光の勇者』の対象外であったコジロウだ。

彼はドン引きしていた。


「うわぁ……。何この光景……」


光るケツの巨人が戦っている。

その周りで女性たちが跪いているのだ。

あれこそ、ヤベェ破壊神なのかもしれない。

……コジロウはそんなことを考えていた。


だが……。


「……いや、長くない?」


さすがに際限なく繰り返される尻手玉に、ノヴェトらもダラっとし始める。


「はっ! ……はいっ‼︎ ……やっ‼︎ ……とぅ‼︎」


しかし、当のカゲチヨは、ノリノリでお尻を突き出し続けている。

キラキラと爽やかな汗が、煌めくように弾け飛ぶ。

カゲチヨの満面の笑顔も眩しいくらいだ。


「アレ……、ハイになっているのではござらんか……?」


「カゲチヨ、ニコニコね……」


それは本当に、最高の笑顔だった。


「はぁ……、ハイっ‼︎‼︎‼︎‼︎」


それから、アヴァロワーズがお手玉状態から解放されるのに、数十分を要した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 尻でやはり戦うとは…どこかの春日部の有名五歳児にも近いところがありますが、カゲチヨくんは10歳…とはいえ、男の子はえてして幼いですし、十分ケツを出してちょっと恍惚とすることもあるのかな、と思…
2022/08/11 21:06 退会済み
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