第33話 最終戦争の決着
魔onの朝。
白き『破壊神シヴァデュナート・ロボ』、赤黒き『破壊神シュノリン』。
そして、ほぼ全裸の『巨人アスター』。
三体の巨神が向かい合い、ジリジリと対峙していた。
朝日が照らす中、三者は互いに牽制する。
だが、さきほどからアスターは、ずっと胸の辺りに刺激を受けている。
それはシュノリンの破壊光線だ。
「……ちょっと、あなた。さっきからなんなんです⁉︎ その光線、一度止めてもらって良いですか? ちょっとなんかピリピリするのですよ‼︎」
しかし、シュノリンの破壊光線は止まらない。
出っ放しだ。
巨人アスターは叫ぶ。
「ああもう! 鬱陶しい! これに、どんな効果があるかは分かりませんが、私には効きませんよ⁉︎ まずは貴方から封印してさしあげましょう! デュワッ‼︎」
巨人アスターは腕をクロスさせ、封印光線を照射する。
それに負けじと、破壊神シュノリンは破壊光線で対抗。
光線と光線の激しいぶつかり合い。
互いに一歩も譲らず照射し続け、両者は膠着状態となった。
そんな中、天人装備によって全裸を免れたプレイヤーら。
だが、この巨神らの戦闘において、小さな彼らは何もできなかった。
兎娘ロザリーは、ノヴェトに訴える。
「ノヴェト様、彼らを止めるには、一体どうしたら……。全裸で騒いでる暇なんて無いのですよ‼︎」
「で、でもほら。見てよ、これ。俺が提案したやつよりも、湯気が多いのよ! 考えてるなぁ、まっちゃん。肌色は多ければ、いいってもんじゃないんだなぁ。……なんなら、こっちの方がエロいまである」
「何をしみじみと……、そんなことを言ってる場合ではなくて。……ってよく考えたらこれ、結局、全裸なんですけど⁉︎」
「大丈夫だって、見えないって‼︎ ……ほら‼︎」
ノヴェトは、大股開きで側転をかます。
「……な?」
「ちょ! 見えないとか、そういう問題じゃないですよ! はし、はしたない! ……って、リゼットも真似するんじゃないです! ……って、そこ! 誰か、アキラちゃんを止めて‼︎」
女神の隣にいた兵士は、女神に問いかける。
「……女神様は……?」
「え? なに? ……私にあれをやれって言ってる?」
「ああ、いえ、なにかやりたそうな風に見えたもので……」
「馬鹿じゃないの⁉︎ そんなわけないでしょ⁉︎」
「す、すみません……」
「私なら魔法使って、もっと華麗に高速に回れるわよ‼︎」
「やる気マンマンじゃないですか……」
そこでリンリンが叫ぶ。
「みなさん、見てくださいッス‼︎ シュノリン様が‼︎」
相変わらず、アスターと光線合戦を続けるシュノリン。
だが、シュノリンの身体は、少しずつ萎んでいっていた。
「ど、どういうことだ? 魔力切れか……?」
「もしや、アスター様のあの封印光線。破壊光線を封印してるのでは……? そして、シュノリン様の魔力が尽きていって……」
シュノリンは、そのままどんどん萎んでいった。
そして最後には、元の大きさに戻ってしまう。
宙空から、力無く落下していくシュノリン。
ロボのコクピット内のロミタンが叫ぶ。
「ああ‼︎ 破壊神様‼︎ ……えい‼︎」
ロミタンは、コクピット背面の装甲を無理くり剥がした。
そして、外に飛び出す。
叫ぶ女魔王。
「ああ! 壊しちゃダメでござる! 後ろは、ただのベニヤ板なんでござるから!」
外に出たロミタンは、中空に身を乗り出す。
そして叫ぶ。
「影ちゃんズ‼︎ 出番ですよ‼︎」
影は幾重にも伸び、地表スレスレでシュノリンを捕まえる。
そして、影と共にシュノリンを抱き抱え、見事に着地するロミタン。
「良かった、間に合いました。お疲れ様でした、破壊神様。……って重っ‼︎ デカっ⁉︎ え⁉︎ 誰⁉︎」
ロミタンが抱えていたのは、おばあさんではなく成人の魔族女性だった。
筋肉質でがっちりとしており、出るとこが出まくっているグラマラスボディだ。
「……こ、これ……、シュノリン様……、ですか? ……ああ! このお姿は、お若い頃の……。ってあれ? 寝てる……?」
ロミタンの腕の中、グーグーと寝息を立てるシュノリン。
……と思われる女性。
コクピット内の女魔王。
「……おばあちゃん、どうやら魔力を使い切ったようでござるね……。助かったでござるよ……」
ジーナは冷ややかな目線を送る。
「ウチら結局、何もしてないですけどね……。このロボ、意味あったんでしょうか……?」
巨人アスターは、ロボに向き直って告げる。
「さぁ、次はあなたの番です。……シヴァデュナート」
*
巨人アスターは叫ぶ。
「さぁ、みなさん‼︎ 今こそ最後の戦いです‼︎ 私に力を集めてください‼︎ 今こそ、破壊神を封印するのです‼︎」
ノヴェトは、二体の巨神を見ながら呟く。
「さぁ、みなさん‼︎ ってあれ、俺らに言ってんだよな? というか、このままシヴァデュナート封印すれば、終わるんかこれ? というか、シヴァデュナートの後頭部から、小ちゃい全身タイツが出てきたように見えたが……」
ノヴェトたちは、シヴァデュナート・ロボに女魔王が乗っているのを知らない。
それどころか、そもそもシヴァデュナートがロボであることも知らないのだ。
ロザリーも呆然としている。
「まぁ、先ほどからアスター様はビュンビュン光線撃ってましたので、私たちは特に必要なさそうですけどね。って、ああ! な、なにか……、こ、これは⁉︎」
ロザリーの全身から、何かオーラのようなものが立ち上っていく。
それは他のプレイヤーや、女神兵団らも同様だった。
そのオーラは、アスターの身体へと集まっていく。
歓喜の声を上げる巨人アスター。
「ああ……、これはみなさんの聖なる祈り……っ‼︎ みなさん、ありがとうございます! これで、破壊神を封印できます‼︎」
アスターの元に集まっていくオーラ。
だが、そこにいた人々は、次々と膝をつく。
強制的に、生命力のようなものが吸われているようだ。
ノヴェトも全身が重くなるのを感じた。
「え、ちょ……、こ、これは⁉︎ ……オ、オイ待て‼︎ 誰も了承してねぇぞ‼︎ 勝手に吸いやがって……、ううう……」
アスターは破壊神シヴァデュナートに向かって、封印光線を照射した。
それは、今までにないほどの極太レザー光。
最早、避けることもできない。
……だが、次々と倒れていくプレイヤーたち。
ノヴェトらも、その場に倒れる。
「うう……、あいつの方がよっぽど破壊神じゃねぇか……」
そして、ロボのコクピット内の女魔王。
「くぅ⁉︎ ロミタン殿を失い、もう光線を跳ね返すことも……。このままでは、シヴァデュナート諸共、拙者たちも封印されてしまうでござる……。止むを得ないでござるよ! 総員退避、総員退避でござる‼︎」
コジロウは出口に誘導する。
「わ、分かりました。みなさん、背面の出入り口から……。さぁほらカゲチヨくんも、頭ぶつけないようにね」
だが、女魔王は動こうとしない。
「さぁ、魔王様も早く」
「フッ……。拙者を置いていくでござるよ、コジロウくん。拙者は、ここで操縦しなくてはいけない故……」
「な⁉︎ ダメです、魔王様‼︎ それでは、魔王様まで‼︎」
「艦長は艦とともに……、でござるよ……」
「……分かりました。お供しますよ、魔王様」
「コ、コジロウくん……、キミってやつは……」
ウルウルとした目で、コジロウを見る女魔王。
コジロウもその目を見つめ返す。
そして、そのまま呟くようにコジロウは唱える。
「出よ影……」
コジロウは両手で影絵を作り、自身の分身を一体生成した。
「ん? 影? ……それはロミタン殿が使ってた……?」
「ええ、彼女ほどではありませんが、初歩的なものなら私も……。というわけで、私の複製を置いていきますので……」
「ちょ! キミも残るんではないのでござるか⁉︎」
「……いやだって、ここに残ったら封印されちゃうじゃないですか。そんなの御免ですし。魔王様も、私の複製がいれば寂しくないかと。ね? 影ちゃん?」
だが、コジロウの影は、我先にと外へ出ようとする。
「え、あなたが残ればいいじゃないです? そんなの、私だって御免ですよ」
「ちょ‼︎ なんで主人差し置いて逃げるの、キミは。影なんて使い捨てなんだから……」
「出た出た! ……出たよ、ブラック雇用主! それ、影侵害ですよ⁉︎ 会社のためとか言って、結局は自分のためでしょうが。そんな奴のために死ねるか‼︎」
「あ、この影の分際で私に歯向かうのか⁉︎ こ、このう‼︎」
コジロウと影が、出入口で揉めだした。
「……い、いや実は、操縦しなくても大丈夫なので、さっさと逃げるのでござるよ‼︎」
「え? じゃあ何のために……」
「あ、いやぁこういうシチュエーション、ちょっとやってみたかったのでござるよー。……って、あ、ちょ‼︎ なんでござる⁉︎ 二人して⁉︎ 拙者魔王でござるよ‼︎ なに、足蹴にしてるでござるか‼︎ …………あ」
シヴァデュナートは封印光線によって石化していく。
そして、光に包まれ……、封印の光はフッと消えた。
そこにはもう、破壊神シヴァデュナートの姿はなかった。
*
カゲチヨは、温泉水の中を走っていく。
「ああ! ノヴェトさん、無事でしたか! アキラも! ……良かった‼︎」
カゲチヨは息を切らしながら、ノヴェトの目に立ち止まった。
だが、カゲチヨは全身タイツにヘルメット姿だ。
ノヴェトは、それが誰だ分からない。
「……誰だ? この全身タイツの、ド変態野郎は?」
アキラは、満面の笑みでドヤる。
「私は分かるわよ、おねーちゃんだもん。カゲチヨも無事で良かった。でも、ちょっと見ない間に、随分変な趣味に走ったわね。……分かった、おねーちゃんもそれ着るわ。どこで売ってるの? ……その変態ピチピチスーツ」
カゲチヨの背後には、同じような格好のジルダとジーナが。
ノヴェトは、ようやっとそれがカゲチヨだと認識する。
「……カゲチヨかよ。なんて格好なんだよ。変態かよ」
「……あの、ノヴェトさんたちの格好も、その……、より変態というか……」
ノヴェトたちにおいては、全裸に湯気の天人装備なのだ。
より変態度は高い。
「むふふ……、エロくていいだろ?」
「へぇあ⁉︎ ……い、いえ……、その……」
モジモジと視線を泳がすカゲチヨ。
そんな感動の再会をよそに、巨人アスターが叫ぶ。
「……みなさんのおかげで、破壊神の脅威は去りました。世界は平和になったのです。そして、私も魔宮に縛られることはなくなりました。……だから、これからは私……、恋やオシャレに、平和な世界を楽しみますぅ‼︎ あ、あと、彼氏募集中ですぅ! よろしくネ‼︎」
謎のぶりっ子ポーズを決めるアスター。
最後にウインク。
そんな彼女を、静かに見守るプレイヤーたち。
彼女の急激なキャラ変に、誰もついていけてなかった。
ノヴェトも呆然としている。
「これ……、どういう原理なんだ? 自身を封印にしてまで破壊神を封じてたけど、プレイヤーと協力したら、それが必要無くなった……、ってことか? そういうイベントだったのか……?」
ロザリーも難しい顔で推測する。
「おそらく、あの聖女さんを解放するのも、最終的な目標だったのでは? いろいろとイベントすっ飛ばし過ぎて、何が何やら全く分かりませんが……」
リンリンも呆れ顔だ。
「ま、まぁ、聖女ちゃん自身が納得してるみたいッスし。とりあえずは。……というか、あんなキャラでしたっけ……?」
ノヴェトはふと思い出す。
「というか、シヴァデュナートってどこに封印されたんだ……?」
急に青ざめるカゲチヨ。
「って、ああ‼︎ 魔王さんも‼︎ 一緒に封印されちゃいましたが……」
「……は? どういうこと? まっちゃん来てたの? どこに? ……というか、アスターは巨人化したままだけど、あれはあのままでいいのか……?」
巨人アスターは、ニコニコと満面の笑顔で佇んでいた。
*
それから少し後。
猫娘ノヴェトらパーティ一行、そしてロミタンは再び冥界に来ていた。
ロミタンは、そこにあった巨大な石の塊を確認する。
「えっと……? これでしょうか?」
「だろうな……」
そこにあったのは、巨大なシヴァデュナートの石像だった。
ただ、大部分が温泉に浸かっており、胸から上しか出ていない。
カゲチヨは指を差す。
「たしか、あの後頭部にコクピットへの出入口が……」
近付く一行。
「うぉ⁉︎ なんだ⁉︎ なんかごちゃっとしてんな。これ、コジロウくんが入り口で支えてて、そのまま石化してんのか? ……これ、引っ張り出せねぇぞ」
そこにいたのは、石化したコジロウと女魔王だった。
影コジロウは、封印光線を喰らった時に消滅し、そこにはいなかった。
ノヴェトはロミタンに確認する。
「なぁ、これ治せんの?」
「治せる……、というか、たぶんこれも結界術の一種だと思いますので、解けばいいだけだと……。ただ、引っ張り出せないとなれば、シヴァデュナートごとやるしかないかと……」
「マジか……。また破壊神復活しちゃうのはマズいよな……。というか、冥界もなんか微妙に変わってんだよな……」
ロザリーが補足する。
「結局、冥界とゲームの『死者の国』が混ざってしまったようですね。元々の融合には、魔宮を媒介にしていたようなのですが……。今はこの冥界が、その役割を担ってしまっているようです。冥界を破壊するわけにもいきませんから、この融合は実質解くことはできないかと……」
「……それで、どうしましょう? 封印解きましょうか? 私は構いませんが」
「……うーん」
ノヴェトは破壊神の復活に躊躇する。
だが、カゲチヨは心配ないと思った。
「ロボなら大丈夫だと思いますが……」
「まぁ、魔王が操縦してましたしね。この破壊神が、単独で暴れることはないと思います」
「なら、やってくれ。まっちゃんを、このままってわけにもいかないし」
「分かりました」
ロミタンが何やら唱えると、シヴァデュナートを包んでいた石化が消えてく。
それはコクピットの女魔王たちにも伝染していく。
そして、女魔王とコジロウの石化も解除された。
……その瞬間、またわちゃわちゃとし始める二人。
「は、早く脱出するでござるよ! コジロウくん! 邪魔でござるからぁぁ‼︎」
「魔王様は、艦と共にするんですよね! ならそうして下さい! 私はもう出ますので‼︎」
「ちょ! 拙者と共にするというのは嘘でござったか⁉︎ ……って、あれ? え? 勇者氏? 何してるでござる? 早く逃げ……、あれ? ここは?」
「……生き返ったな、まっちゃん。封印されちゃってたんだぜ? ……ここ、どこだか分かるか?」
辺りを見渡す女魔王。
「どこって……? 温泉……?」
「冥界だよ。……今は、『死者の国』でもあるみたいだけど」
「は……?」
事の顛末を説明するノヴェト。
難しい顔でそれを聞く、女魔王とコジロウ。
「そうでござったか……」
「いやー良かったですねぇ、これで解決ですよ、魔王様」
「なんだろう、なにか釈然としないものが……。コジロウくん、拙者を置いて逃げようとしたでござるよね……?」
「え? 何の話でしょうか……? ちょっと記憶にないのですが……」
またわちゃわちゃしそうだったので、ノヴェトは話題を変えた。
「まぁとにかく、無事で良かったよ。とりあえず、向こうに戻ろうぜ? あっちは大忙しだぜ?」
「大忙し? なぜ?」
「なぜって、破壊されまくったから修繕中だよ。管理部の方で修復アップデート実行して、ほとんどは自動で直ったんだけど。それでも、どこまで直ったか分からんし、手が回ってないところも多いから。プレイヤー総出でやってんの。『ワールドクエスト』も発行されてさ」
「ワールドクエストってたしか、サービス開始時にやったやつでござるよね?」
「そそ。プレイヤーに調査員になってもらって、バグチェックしてもらうクエストね。すんげー高報酬だから、みんな喜んでやってるよ」
「そ、そうでござったか。……拙者がいない間、苦労をかけたでござるな」
「いや? 俺は別に。労うなら、ジルダちゃんやジーナちゃん、あと管理部の子らに言ってくれ。……ああ、あと、まっちゃんはちゃんと謝っておいた方がいい人が、もう一人」
「……ん? 誰のことでござる?」
*
女魔王は、冥界の石の上で正座させられていた。
目の前には、グラマラスな魔族女性。
彼女は、足を組んで豪奢な椅子に座っている。
その足を組み直し、煙管をフゥッと吹かす。
青白い艶やかな肌が、着崩した白い着物から垣間見える。
少し掠れたようなハスキーな声だった。
「ふぅーっ……、随分と偉くなったものよのう? レツ坊よ? ……ワシが耄碌しとる間に、随分と自由にしておったようだのう? ……なぁ、レツ坊?」
「あ……、いえ、そのぅ……」
小さい声で答える女魔王。
それを見て、小声でロザリーに確認するノヴェト。
「レツ坊? ……って?」
「魔王様の本名が『レッカーベイン』なので……」
「ああ……。それにしても、あれ本当にシュノリンおばあちゃんなの? ムチムチプリン過ぎん? どういうこと?」
「ロミタン様の話では、どうも……。魔力炉で暴走した魔力の影響で、若返ってしまったのではないかと。昔のシュノリン様のお姿、そのままだそうで」
「な、なるほど……」
シュノリンはふぅっと煙管を吹かし、ジロッと女魔王を睨みつける。
「で……? ワシが耄碌してたのを良いことに、冥界に閉じ込めて……。ほう、そうなぁ……、ワシは乱暴者であったしのう。致し方なかったのう? しょうがないことだった……、なぁ?」
「えっと……、そのう……」
「……なぁ⁉︎」
「ひっ⁉︎ ……おばあちゃん、ごめんなさい……」
「おばあちゃん……? この姿を見ても、そういうか?」
「え、ああ、素敵なお姿で……」
「で、あろう? ふふふ、これからはワシの第二の人生……、じゃな。なぁに、また新しくオマエの弟……。いや、レツ坊は孫か。ということは、叔父叔母になるのか。ふふふ、面白いのう‼︎ ワシがこれから、オマエの叔父叔母をたくさんこさえてやろうかのう‼︎ 年下の叔父叔母をな‼︎ ふはははは‼︎」
「……い、いや、もうそこは若返ったとは言え、歳なんですから自重してくださいでござるよ……、ぶへぇ⁉︎」
シュノリンに蹴りを入れられる女魔王。
シュノリンはそのまま立ち上がり、女魔王の首根っこを掴む。
「ああん⁉︎ 魔王如きがワシに命令するんかワレ⁉︎ 誰に口聞いとんのじゃ⁉︎ ワシは破壊神じゃぞ⁉︎ 偉いんじゃぞ⁉︎ また全部ぶっ壊してしまうぞボケェ‼︎」
「ひ、ひぃい‼︎」
「……ああ、でも、生贄に活きのいいイケメンを、百……、いや二百ほど連れて来れば……。もしや、気が変わるやものう……?」
「ひ、ひぇぇ……。と、とりあえず今日のところは、これでご勘弁を……」
ひょいっと、シュノリンの膝の上に乗っけられる犬少年カゲチヨ。
「え?」
カゲチヨは、予想していなかった扱いに戸惑う。
舌なめずりするシュノリン。
「ほぉ……?」
狼狽えるカゲチヨ。
「はわわわわわわ……」
ノヴェトは真顔でつぶやく。
「破壊神は、今すぐ封印した方がいいんじゃないの……?」