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第30話 持たざる者

再び、現実(リアル)の魔王城ビルの『世界管理・監視調整部』。


ここでは、魔on世界の監視を行なっているが、普段は自動監視である。

魔法人形(オートマトン)たちがオペレーターとして、数人ほど()めている程度だ。


だが、今は緊急事態。


女魔王、参謀コジロウ、魔族女性のジルダとジーナが、そこに集まっていた。

4人は、モニターに映し出される映像を観ていた。

しかし、女魔王が予想外の言葉を発したことで、他の3人は固まっていた。


ジルダは呟くように言う。


「おばあちゃんですね、たしかに。でも、あれ? ……どこかで見たような?」


「なんでだろう? 私も、このおばあちゃん、見たような記憶が……」


その老婆を見たジルダとジーナは、記憶の片隅にある何かに触れた気がした。

だが、コジロウには見覚えはない。


「そうなのですか? 私はこんな大きい方は知らないですね……」


だがこの時、女魔王は真っ青な顔をしていた。

完全に血の気が引いていた。


「違うのでござるよ……」


「うわっ⁉︎ どうしたんです⁉︎ 魔王様、顔色が……、大丈夫ですか?」


「おお⁉︎ ……ちょ、青いというか、もう引くような白さですよ⁉︎」


ジルダとジーナは、女魔王の異常な様子を見て心配する。


女魔王はつぶやくように、言葉を口にする。


「おばあちゃん……、というのは、その……、生物学上の祖母という意味でござって……」


「……は?」


「生物学……。え⁉︎ ……血の繋がったお婆様ということです⁉︎ ……あ! シュノ……、おばあちゃん⁉︎」


「ああ‼︎ シュノばあちゃん‼︎ 思い出した‼︎ 遊んでもらった‼︎」


「ええ⁉︎ この方、こんな……、デッ、デッカいのですが⁉︎」


「おばあちゃんは、その……、破壊が過ぎるというか……。破壊神だけに。体内に『魔力炉』を内蔵しているんでござるよ。それが、なんらかの理由で暴走していると思われ……」


「魔力炉ですか……? そんなの、古い魔導書に名前だけ出てくるような代物ですが……。たしか様々な物質から魔素を抽出し、莫大な魔力を生成できるという、夢の……」


コジロウは、はるか昔に読んだ魔導書を思い出している。


「ですが、あれは机上の空論であり、あくまでも思考実験上の産物です。なにせ魔道の世界では、『実現不可能なもの』という意味の、(ことわざ)に使われるぐらいのものですし……」


「もちろん、現在も実現不可能でござる。……が、それと同等のものを、おばあちゃんは生まれながらに、体内に持っているのでござる。しかも、最悪なことに、あれは超絶燃費が悪いのでござるよ……。だから、いずれは力を使い切ってしまうでござるよ」


「……ということは、放っておいても、燃料切れで活動停止する。……ということでしょうか?」


「そういうことでござるな。……と、言いたいところでござるが……。無尽蔵に物質が変換され続けるので、吸収と破壊で何も残らないでござる……」


「ええ⁉︎ それはその、どれくらいの範囲で……」


「数千年前に、この地を襲った大災害のことは知っておるでござるね?」


「え? あ、それはもしかして、『すべての人が持たざる者となった』というあれでしょうか? ま、まさか……」


「それ、おばあちゃんなんでござるよ……。あの時は、魔王領の全域がほぼすべて消失したでござる……。それから拙者は、できるだけおばあちゃんを刺激しないように、あの手この手で……」


「そんな方が存在するなんて……、あっ!」


コジロウが小さく声を上げる。


映像では、巨大な老婆の口に光が集まっていた。

そして、口の中の光源が、みるみる大きくなっていく。

その際、周囲の森林が煙のように消失していく。


「吸収している……、のか……っ⁉︎」


そして、そこにいた全員が見守る中、それは発射された。

老婆の口から発射されたのは、極太のレーザー光。

それは大地を焼き、真一文字に空間を切り裂く。


「う、うわぁ……」


「おばあちゃんの破壊光線でござるよ……。なるほど、破壊不能オブジェクトすら消し炭になるはずでござる」


「破壊……、光線……?」


女魔王を遠い目をして、口を開く。


「あれは、古くは『審判の光』。またの名を『聖なる種火』。……そして、またの名を『絶対殺す光線』。更に、またの名を『ドラゴンの最後っ屁』。……それと、日曜の午後だけは、またの名を『太陽(ル・ソレイユ)』とも言う……」


「またの名多いな……」


つぶやくコジロウ。


ジルダはふと記憶を思い出し、女魔王へ疑問を投げかける。


「たしか破壊神様は、どこかへ旅立ったと聞いておりましたが……」


「それは拙者が、慰安旅行へ案内したのでござるよ……。冥界への片道切符のね……」


「え?」


ドン引きする3人。


「あ、いや、別に殺した、とかそういう意味じゃないでござるから……。冥界に温泉があるそうなので、ちょっと裏技を使って、そっちへ案内して行ってもらったのでござる……」


女魔王は考え込む。


「でもおかしいのでござるよ……。たしかに、戻ってこれないように、何重にも出入り口を結界で封じたのに……」


「えっと、肉親を閉じ込めちゃったんですか……?」


「ぐっ⁉︎ だって、しょうがないんでござるよ! あのひと、すぐ物壊すんでござるよ! ちょっとじゃないんでござるよ⁉︎ 国が消滅するレベルなのでござるよ⁉︎」


涙目の女魔王。

だが、ジルダとジーナの目線は冷たかった。





魔on。日はもう落ちた。


暗闇の中で、猫娘ノヴェトは迷っていた。


「くっ……⁉︎ ここ、どこなんだ⁉︎」


辺りには目印となるようなものが何もない。

しかも、膝下まで温泉水に浸ってしまっている。

何も見えないのは、湯気のせいなのか。

それとも本当に何もないからなのか。

それすらも分からない。

そして、現在地も不明。


分かることと言えば、ここが魔onの中だということぐらいで。

なぜならいつの間にか、ゲーム内の姿に戻っていたからだ。


背後から、兎娘ロザリーの声が聞こえる。


「こんな最悪な状況で、モンスターとは出会いたくないですね……」


猫娘リゼットの声も聞こえた。


「にゃあ、にゃんはもう帰りたいのにゃ……」


もう陽が落ちてしまった。

暗闇の中、3人で背を向かい合わせながら、ゆっくりと進んでいる。

だが……。


「なぁ、こんなことしてる暇ないんじゃないか……? ほら、もう暗いし。見えないって」


「なっ⁉︎ ノ、ノヴェト様‼︎ こ、こっち見ないでください‼︎」


ノヴェトが振り向こうとした時、ロザリーに殴られる。


「ごふっ‼︎」


その拍子に、リゼットの方へ向いてしまったノヴェト。


「ぎにゃ‼︎ こっち見んにゃ‼︎」


今度は、リゼットに殴られる。


「おぼふっ‼︎」


温泉水に突っ伏すノヴェト。


……実は今、彼女たちは全員、全裸だった。


「お、女同士なんだから……、ちょっとくらい……」


「ノヴェト様、中身男ですよね……」


「いや、ほら、これアバターだし。ゲームだし。裸見られても……」


「ゲームだろうと関係ないのにゃ。セクハラなのにゃ」


「ああ、くそー。エセ子は消えちまうし。どうすんだこれ?」


「あの光。あれが破壊光線だと思いますが……、どうして服だけ……」


「服だけというか、生き物以外は……、ってことなんじゃないか? 武器も消滅だし。なんとか地上に降りられたけど、まさか直撃喰らうとはな……。ゲームのアバターには戻ってたから、死んでも生き返ったろうけど」


「姿がアバターに戻ったのは、異界化が地上だけだからでしょうか。上空までは、異界化されてないために、一時的に姿が元に戻ってしまっていた、と」


「だろうね。だから、エセ子の結界無くても、たぶん大丈夫だったろうな。あ、いやエセ子は生身だからマズイのか……。まぁ結局、俺らのそばにいたエセ子のコピーは、光線食らって消えちまったけどな……」


「そうですね。でも、ロミタン様のおかげで、無事でしたので……」


その時、ざわざわと人の声が聞こえてくる。


「……ひっ⁉︎」


びっくりしてしゃがみ込むロザリー。

だが、お湯は膝下までしかない。

身体は全然隠れていない。


「誰かが近付いてくるのにゃ。にゃんのお髭センサーに、ビンビン来てるのにゃ……」


「モンスターじゃ……、ねぇだろうな……? 武器無いんだぞ……?」


だが、それは別の魔onプレイヤーたちだった。


「……お、おお‼︎ 人だ‼︎ 良かった‼︎ キミたちも無事だったんだな‼︎」


先頭にいた男は、小走りに近付いてきた。


……フリチンで。

見たくもないものが、ブルンブルンしている。


後ろには数人いるが、遠目からも肌色しか見えない。

全員、全裸なのだろう。


「肌色多いなぁ……。いやもうオマエ、ちょっとは隠す努力せぇよ……」


「……え? これ、アバターだろ? ヘーキヘーキ」


「いやでも……」


ノヴェトも男性体なら、そうした可能性はあるのだが……。

今は女性体。さすがにちょっと恥ずかしい。


「いやぁ、参ったよ。どっちに進めばいいかも分からないし。今は、少しずつ合流しながら、進んでいるんだが……。キミらは街の方角とか分かるかい? それとも俺たちと同じで、迷ってる……?」


「……残念だな。俺たちも迷ってるよ」


「そうか……」


男プレイヤーは残念そうにつぶやく。


男は会話している最中も、チラチラと3人の身体を見ている。

だが、ジッと見返すリゼットと目が合うと、男はスッと視線を逸らす。


「ああ、いやー、そのなんだ。キミたちも一緒に来ないか? 人数は多い方がいい。少しずつバラけて範囲を広げていけば、そのうち目的地にも着けるだろ?」


「目的地?」


「ああ、森の魔宮だよ」


「近いのか?」


「ん? ああ、えっと、そう。もしかして、ここがどこだか見当もついてない、って様子だな。ここは『刻忘れの森』だよ」


「……は? 森って、何にもないぞ?」


「キミらもその格好ってことは、あの光線食らったんだろ? あれのせいで、森も全部無くなったんだよ。……木は伐採スキルあれば切れるから、しょうがないとしても……。でも、魔宮は破壊不能オブジェクトのはずだから、今も残っているはずだろ? だからまずはそこを目指す」


「そういうことなら、いいか。どうする? ロザリーちゃん、リゼットちゃん」


「私は良いと思います。……と言いますか、他に選択肢がないので……」


「にゃんも賛成にゃ! みんなでいくにゃ‼︎」


「だってよ、俺らも参加させてもらうぜ。即席の大規模パーティってとこだな」


「おお! 助かるよ。武器も防具も何も無いからなぁ。本当に困ってたんだ。よし、ではみんなに紹介するよ。こっちだ」


そういって、男に連れられて行った先には、複数の男プレイヤーがいた。


全裸で。


「おわっ⁉︎ こ、これ……」


「ちょ、これは……」


「にゃぁ……」


全員男で全裸。

しかも、誰も隠す素振りもない。


3人の全裸女性を目にし、男どもの視線が一斉に集中する。


「「お、おお……」」


「オイ、オマエら。新しい人見つけたぞ。……えっと、何さん……、だっけ?」


「はぁえ⁉︎ ……えっとぉ、……私はロザリーです」


「にゃんは、リゼットにゃん!」


「……ノヴェトだ。よろしく」


「ああ、よろし……、ん? ノヴェト……? ノヴェトって『あの』ノヴェトか?」


急に、ざわざわとし始める一部の男たち。


「なんだ……? 俺も有名になったなぁ?」


「ノヴェトにゃんは、雑誌とかにも載ってるしにゃん? 有名人にゃん」


「おお、マジか。ちょっと、小っ恥ずかしいな……。サインとか、練習しておいた方がいいかな……?」


だが、男の反応は真逆だった。


「貴様がまさか……、あの『少年殺しのノヴェト』か⁉︎」


「……は?」





少し前の女神神殿。


部屋のテレビには、未だ魔王領の異界化の中継が映されている。


「……貴方。その中継、まだ観てるの……?」


「え?」


信者は背後から声をかけられ、ビクッと身体を震わせた。


そこにいたのは女神アシュノメー。

随分前に部屋を出ていたが、戻ってきたようだ。

小脇にスナック菓子を抱えて、何やら喋りながら(むさぼ)っている。


信者はしどろもどろに答える。


「……まだ、というか……。そのー、魔王の陰謀を……、ですね。知るためにはー、情報が必要かとー、思い……」


別段、悪いことをしていたわけでもないのだが……。

女神の癇癪はいつものことなので、何か(とが)められるのではないかと思い、びくびくしてしまったのだ。


「ふぅん……」


女神はボロボロとお菓子を落としながら、テキトウな相槌をする。


「……で?」


「え?」


「ずっと観てて、何か変化はあったのかしら?」


「えっと、そのー」


再びしどろもどろの信者。


そもそもこの放送を観ようと言い出したのは、女神自身だった。

だが、割と早い段階で飽きて、どこかに消えてしまったのだ。

だから、この信者が悪いということもないのだが……。


彼女の普段の気まぐれさを考えれば、何を言われるか分かったものではない。


「特には……」


「ふぅん」


女神の無言の圧……、を信者は察する。


本当は、女神にはそういう意図はなかったのだが、普段の彼女の行いが周りにそう思わせてしまっていた。


だがその時。


幸運なことに、テレビの映像に変化があった。

部屋に大きな音が響き、嬉々として叫ぶ信者。


「あ、なにか! なにか進展が‼︎」


中継アナウンサーが興奮しながら、叫ぶようにリポートする。


「皆さん見てください‼︎ 壁が‼︎ 壁が壊されました‼︎」


映像には、虹色の壁が破損しているのが映し出されている。

それは、魔王領の異界化領域を包んでいた虹の壁だ。

現実とゲームが融合してしまった異界と、現実の境が壊されてしまった。


目を細める女神。


「どういうこと……? なにか光ったかしら……?」


「大きな音と光……、がありましたね。……あ、なにか……」


破損部分から、何かが溢れ出してくる。

中継アナウンサーの興奮は最高潮だ。


「おおおっとお‼︎ 何かが出てきましたよぉ‼︎ …………これは、水?」


だが、急に失速したように、疑問系でつぶやくアナウンサー。

……また再び、テンションを戻す。


「……水が⁉︎ ……おおっと⁉︎ 森を……、ああ! これはなんでしょう⁉︎ 煙のような……、なにか立ち昇って……」


女神は冷静に分析する。


「温泉ね。これ、温泉水よ、たぶん」


「……温泉?」


「ああ、お風呂入りたいわ。なんか身体がベタベタするのよね」


信者は、『それはアンタがお菓子をボロボロ落としてたからだろ。いつも誰が片付けてると思ってんだよ。俺だよ俺。』と思ったが、決して口には出さない。


「おっと、また光が‼︎」


信者が叫ぶ。

テレビのアナウンサーも興奮している。


それはレーザー光だった。

またもや壁が破損する。


「いったい、何が起きているのよ……。あの中には、カゲチヨきゅんもいるんでしょ? どうなってるのよ……」


「あ! 女神様‼︎ 壁が壊されたということは、もしや……、あそこから侵入できるのでは……? 魔宮を破壊して、魔王の野望を止められるかもしれません」


その間も、壁の破損箇所から温泉水は噴き出し続ける。

その様子を観ながら、女神がポツリと呟く。


「……温泉」


「……へ?」


「……お風呂、……最終戦争(ハルマゲドン)……」


「……おふ? ……ハル? え? 前も、そんなことおっしゃってたような?」


「そう、これがそうなのね。禁書に書かれた、あの……」


「……ええ⁉︎ 禁書ってあの……。でも、温泉って……、銭湯……」


信者は、噛み締めるように呟く。


「なるほど、『銭湯(せんとう)』だけに『戦闘(せんとう)』……つまり『戦争』、ということですね⁉︎」


「……何を言ってるのよ、貴方は……」


「……す、すみません……」


「……まぁいいわ。とにかく、幹部連中を全員集めなさい。……魔王領へ侵攻するのよ‼︎ これは最終戦争(ハルマゲドン)よ‼︎ そして、カゲチヨきゅんを取り戻すのよ‼︎」





再び魔on。


全裸のノヴェトたちの前には、全裸の男プレイヤーたちが。


「少年殺し……? なんの話だ?」


「聞いているぞ……⁉︎ そのたわわな凶器で、少年を(かどわ)かしているそうだな⁉︎」


「……いや、だから何の話なんだよ……」


「とぼけるのか? ……まぁいい。女神様からは、オマエを討伐しろという命令は特にない。しかし、元々は破壊工作任務だったのに、なんかもう任務失敗しそうだし! しょうがないから、本来の任務代わりに、貴様を成敗してくれるわ!」


「女神……? オマエらもしかして、女神兵団のやつらか?」


「ふ……。そうだな、よし。倒す前に親切に名乗ってやろう。自分を倒した者が誰か知らないなんて、可哀想だしなぁ? ……ふふふ、私は『女神兵団72神将』がひとり、『空前のジョビモンコフー』様だ‼︎」


「……誰?」


「ふふふ、恐怖で声も出ないようだな」


「そもそも、72神将を知らねぇよ。……って、いやもう、72は多いなぁ」


「それだけ、女神兵団の層が厚いという証拠だ。……覚悟しろ‼︎」


「オマエ倒しても、第二第三の……って、また出てくるやつだろ、それ。陰で『ヤツは神将の中でも最弱……』とか、つぶやいちゃうやつだろ?」


「心配するな、私が最弱だ」


「それ、自分で言うなよ……。というかやっぱり、そうじゃねぇか。その(くだり)を70回近くもやんの? 多いのよ……。もうちょい数しぼれよ」


「フフフ……、その心配はない。3分の2は内勤だ。貴様が直接目にすることはないだろう……」


「だったら、外勤だけの何か作れや……。というか、オマエ、内勤のやつより弱いのかよ……」


「ふ……、そんなことを言ってられるのか? ……ノヴェトよ? この人数を見ろ。女神兵団の、この人数に勝てると思っているのか……?」


「え⁉︎ ……俺、女神なんとかじゃないけど……?」


「女神……? 何の話?」


「あ、私は兵団員です‼︎」


「私も……」


「……知らん」


バラバラの男たち。


「……いや、先に点呼とっておけよ。グダグダじゃねぇか」


「くっ⁉︎ ……ちょっと待ってろ」


待たされるノヴェトたち。

待ってる間、ロザリーやリゼットとコソコソ話。


「これ、無視した方が良くないか?」


「でも、今の状況では、他プレイヤーと協力した方が……」


「むぅ? とりあえず、あのフリチン野郎を、八つ裂きにすれば良いのにゃん?」


「フリチン野郎って……」


男たちの方をちらっと見ると、まだ揉めている。

……フリチンで。


『空前のジョビなんとか』は叫ぶ。


「ああもう! 分かった。兵団の者は、こっち。右に集合。それ以外は、左。……って、分かった分かった。兵団の者は、私の周りに集まってくれ」


「……なぁ、もういいか?」


催促するノヴェト。


「フフフ、待たせたな……。さぁ、オマエたち、名乗ってやれ」


「私は、女神兵団72神将がひとり、『絶倒のジョモロウ』様だ‼︎」


「同じく、女神兵団72神将のひとり、『驚愕のペルテペル』だ‼︎」


名乗りをわざわざ待ってあげたノヴェト。

……それから、妙な間が入る。


「うん……? 3人だけ? ……結局3人しかいないの?」


「うん……」


72神将最弱の『空前のジョビなんとか』は、ションボリとした表情だった。



現実(リアル)の魔王城ビル、『世界管理・監視調整部』。


モニターの映像を見て、コジロウが叫ぶ。


「魔王様、使い魔ドロロンが生存者を確認したようです! 今、ズームしますので……」


「……お、……おお⁉︎ ……これはっ⁉︎」


モニターに映し出された人々。

数十人は確認できる。

……だが、全員全裸だ。


戸惑うジルダとジーナ。


「え……? 裸? ……裸⁉︎ ……全員裸ですが、一体何が……?」


「原住民、でしょうか……?」


ゆっくり魔王の方を見る2人。

コジロウもつられて見る。


「……これは、まずい状況でござるね」


「え? ああ、そうですね。今すぐ救助に……」


「このままでは、魔onが倫理的に引っかかって、サービス停止になってしまうでござるよ……」

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔界にCER○があるんですか…。なんだか楽しいですね…!
2022/07/27 06:22 退会済み
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