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第21話 集いし獣人部隊

数日後の朝。

ファストフード・ハンバーガーショップ。


赤黒の看板で『殺し屋ドラゴン』と書いてあるが、これはただの店名。

もちろん『殺し屋』も『ドラゴン』も特に関連性はない。

それどころか子供向け商品が多いので、利用客は家族連れが多いくらいだ。


そこに、カゲチヨ、ノヴェト、女魔王がいた。

カウンター前の列に並んで、これから注文するところだ。


「……まっちゃん、最近また忙しそうね」


「まぁまぁでござるな」


「ふーん。……ねぇ、まっちゃん。最近、なにやってんの? ……って、なんか今日はえらい混んでんな?」


いつもはそれほど混まない店なのだが、その日はなかなかの行列だった。

そして、行列の先頭からは、なぜか大きな声が聞こえてくる。


それは客の声だ。


「……えっと! これとこれ‼︎ おっけー⁉︎」


「さっきから注文の声でけぇし。……耳の遠いジジイでも、バイトやってんのか……?」


「では拙者、席を取ってるでござるよ。注文はお願いするでござる。あ、飲み物は魔王シェイクで‼︎」


「おう。……カゲチヨも決めておけよ。メニュー見えるだろ?」


「えっと……、ハンバーガーが良いです」


「う、……ん? ……ああ、そうだな。じゃあ、あのセットのやつがいいかな。ハンバーガーに、ポテトと飲み物が付いてるぞ」


「わぁ! ……では、それにします!」


「あ、あと……、追加で、あの新製品ってのも買っとくか。味見で。……ああ、そうだ、カゲチヨ。飲み物は選べるけど、とりあえず魔王シェイクでいいか?」


「はい! ……おすすめなんですか?」


「ああ、お子様には大人気らしいんだよ。味は保証する。まぁ俺には、甘過ぎてシンドイんだが……。思い出すだけで、よだれが止まらん」


「分かりました! それにします! 楽しみです‼︎」


「もうそろそろだなぁ。…………ん?」


カウンターの前の客がいなくなり、ノヴェトの注文の番となった。

だが……。


「うお⁉︎ ……オマエ、なんでこんなところに⁉︎」


カウンターにいた店員は、メルトナ姫だった。


「……う……………か……」


「えっと……?」


すると、隣のカウンターから店員の大きな声が。

……ミシュだ。


「姫様は、『店内でお召し上がりですか?』と聞いているんだ! …………今なら、こちらのナゲットがお安くなっております、ご一緒にいかがでしょうか?」


ミシュは、別のカウンターで自分の客の対応をしながら、メルトナ側の客の対応も同時にこなしていた。


「オマエもいるのかよ……」


「いいから、早く答えろ! 後ろが詰まっているんだぞ‼︎ …………では、ナゲットを追加で。合計はこちらの金額になります」


「……え、ああ、店内で」


「……あ…………き……」


「え、……あ?」


「姫様は『ご注文をどうぞ』と言っているのだ、さっさと答えろ! …………では、お支払いは?」


「えっと……、まずこのセットをひとつ」


「……り…………は……」


「『ドリンクはいかが致しましょうか? こちらの中からお選びください。』だ! ほら、早く決めろ‼︎ …………かしこまりました。魔王Payですね」


ミシュはもう、被せ気味でしゃべる。

ミシュ側のカウンターの会話と混ざるので、ノヴェトは軽く混乱する。


「いやもう、全部オマエが言ってるじゃん……」


それから、なんとかノヴェトは注文を済ませ、品物を受け取った。


「アイツらなんだったんだ……? なんだか、どっと疲れたな……」





ノヴェトはキョロキョロと見回し、店内で女魔王を探す。

混んではいるが、店が広いおかげで席は十分空いている。


「えっと……?」


「あ、魔王さん。……ノヴェトさん、あそこです!」


女魔王がいた席の周りに座る、ノヴェトとカゲチヨ。


「ほら、えっとセットの……」


「あ、それはこっちでござるかな」


「……で、これがカゲチヨの……」


「はい! わぁ‼︎ ……これは、どうやって食べ……?」


カゲチヨは周りを見る。


「こう開けて……、紙を持って食べるんですね」


「まぁ難しく考えるな。好きに食え。……このトレイを下にしとけ。これで、落としてもテーブル汚れないだろ?」


「はい!」


「あと、このポテトも。これは手で食べていいからな。ほらこれ、手拭きな」


「はい!」


ニコニコでハンバガーを頬張るカゲチヨ。


「美味しいか?」


「はい、美味しいです!」


ノヴェトはカゲチヨの様子を確認したあと、視線を女魔王へ移す。


「……ところで、さっきの続きだけど。まっちゃんは何やってんの、今?」


「え? ……うーん、秘密でござるよ。ひみちゅ」


「怪しいなぁ……」


「フフフ」


「あ、そうだ。さっきさ、すげービックリしたことが……」


「なんでござる?」


「メルトナたちがバイトしてんのよ、ここで。……いや、オマエら、なんでよりにもよって、ファストフードなんだよって。あっちの幹部だろうに。ここ魔王領だぞ? 面白過ぎるわ」


笑うノヴェト。


「ああそれなら、拙者が紹介したでござるからー」


「え?」


「なにかお仕事を……、と。敵情視察も兼ねているとか、言ってござったが」


「う……、ん? 分かるような分からないような。……いや、女神兵団的にはいいのか、それ……?」


「まぁ、バイト代で欲しいものでもあるんでござろうなぁ」


「もう、普通の学生のノリじゃん……。それにしても、メルトナに接客は無理だろ……。結局ミシュが全部話してたぞ。っていうか、アイツすげぇな。もうあれ、カウンター2つ同時対応じゃん……」


「いや、それが……、メルトナ殿は大人気らしいでござるよ?」


「いや、そんなわけ……。あれ、混んでるのって、聞き取れないせいでしょ?」


「まぁそれもあるかも知れないでござるが……、これでござるよ」


女魔王は、トレイの上の敷き紙を見せる。

そこにはメニューが載っていた。


「……この『笑顔』。これ、お金を払うと、店員さんがやってくれるんでござるよ。まぁ、ちょっとしたお遊びでござるな。こういうの、勇者氏の世界にあったと聞いているでござるよ?」


「あったけど……、ん? これ、お金払うの? へぇ……。って、高っ⁉︎ え? 笑ってくれるだけなのに、こんな高いの⁉︎ タダじゃなく⁉︎」


「……あと、この『嘲笑』とか『冷笑』とか。どうやら、こっちの方が人気らしいでござるよ」


「どういうことだよ……」


ノヴェトには、何一つ理解できない。


そっと、席からメルトナのカウンターを見る。

よくよく見ると、メルトナの方はソワソワとした妙な表情の客が多い。


「……あ。さっきの前にいたやつ、また並んでんな。もう食ったのか。……って、俺の後ろにいたやつも……?」


「一応、ルールとしては……。セット二つ以上で、この笑顔がひとつ頼めるんでござるよ。元は冗談で入れたメニューなんでござるが……。今はメルトナ殿のおかげで、このセットが飛ぶように売れるとか。彼女は恥ずかしそうに、ニコリと(さげす)んでくれるそうでござるから……」


「『ニコリと蔑む』の意味が全く分からんけど……。なんだか、アイドルの握手会みたいだな」


たしかにメルトナの方は、明らかに客層がおかしい。


先ほどは気付かなかったが……。

そもそもカウンターが3つあるのに、メルトナ側だけ専用の列になっている。

どうやら、その列だけで異質なゾーンになっているようだ。


ノヴェトは、ふと目の前のカゲチヨを見る。目が合う。

ハンバーガーを頬張ると、またカゲチヨは笑顔を返してくる。


「……なるほど。平和だな」





魔on。街の中。


「やぁー! ……ヤァ! タァ‼︎ ヤァー‼︎」


犬少女アキラが大きな両手剣を振り回して、ポーズを取る。


「わぁ! すごいですぅ‼︎」


それを見て、犬少年カゲチヨは拍手をした。


「結局、両手剣にしたのか。いいね、なかなか様になってるぞ。」


「うん。だって、斧とかハンマーって、勇者っぽくないんだもん」


「ああ、なるほど。……まぁ、狂戦士の勇者もありか。……アリか?」


「ボクは本にしました! こう……、魔法の時に、バラバラバラー! ってするのが、カッコイイです‼︎」


「いいんじゃないか? そういうのは、本人がしっくりくるかどうか、だからな。気に入ってるってなら、それが一番だ」


犬少女アキラは、両手剣の『狂戦士(バーサーカー)』。

犬少年カゲチヨは、本を持った『狂信者(ファナティック)』に落ち着いた。

猫娘ノヴェトはオールラウンダーな『死霊使い(ネクロマンサー)』で、武器は槍に変更。


「じゃぁ今日も行くよ‼︎ 野郎ども、ついてきな‼︎」


「あーいや、アキラ、ちょっと待て。これから人来るからよ」


「え? 誰ですか? ボク知ってる人です?」


「ああ」


「あ、もしかして魔王さんです?」


「え、魔王が来るの⁉︎ 倒す⁉︎」


「いや、倒すなよ。来るのは、まっちゃんではないけど……」


「じゃあ誰が来るのよ! 魔王じゃないなら倒してもいいでしょ?」


「なんで、倒す前提なんだ」


「じゃぁ、誰だったら倒していいのよ!」


「じゃあって。あとでいっぱい戦わせてやるから、ちょっと落ち着け」


そうしていると、一行は後ろから声をかけられる。


「はーい、こんちゃー‼︎ にゃんにゃん‼︎」


そこにいたのは、ネコ娘とウサギ娘。

ふたりのおねーさんだった。


ネコ娘の方は人懐こそうに、ネコっぽいポーズをとってお尻を振った。

ウサギ娘の方は、それとは対照的にクール。

立ち居振る舞いは、モデルのようだ。


「なっ⁉︎」


「おわっ⁉︎」


アキラは何かを察知したのか、カゲチヨを後ろから抱き抱える。

そのまま後退(あとずさ)りするように、二人のおねーさんたちから距離をとる。


「……おほー⁉︎ カゲチヨきゅーーーーん⁉︎」


「わあっ‼︎ わんわんにゃ‼︎ わんわんにゃ‼︎」


二人のおねーさん獣人は、妙なテンションでカゲチヨに突っ込んでいく。

そして、アキラごとギュッと抱きしめる。


「なぁああ⁉︎ ちょ、な、なによアンタら! 馴れ馴れしいわよ! 私のカゲチヨになにするの⁉︎」


「ええ⁉︎ キミがアキラくん? キミも可愛いじゃない⁉︎」


「ほわぁあ! ダメですぅ! わああああ‼︎ 変なとこ触っ……! あああん‼︎」


「ひゃああ可愛いにゃん‼︎ かわゆいにゃん‼︎ きゃわたにゃん‼︎」


「やっぱこうなるか……」


四人が戯れる光景を目にして、ノヴェトはため息をついた。


「あああー、ダメですぅー!」


気がつくと、二人の獣人おねーさんと、アキラに揉みくちゃにされるカゲチヨ。


「は、放しなさいよ‼︎ カゲチヨは‼︎ 私の‼︎ あああ‼︎ もう‼︎ アンタ、なんで私も触るのよ‼︎ 変なとこ触んな‼︎ 意味分かんないんだけど‼︎」


そこで笛の音。

それは、ノヴェトの白い笛から鳴っていた。


「はーい、注目ー」


「なんなのよ、その学校の先生みたいな笛……」


「とりあえず、おねーさんたち、まず自己紹介して。いきなり抱きついたりしたら、それもう、ただのド変態のおねーさんだよー」


「……ド変態て」


「おねーさんは男の子がだーい好きな、通りすがりの、ただのにゃんにゃん変態おねーさんにゃん‼︎」


「はいはい、そういうのいーから」


「そうよ、アンタら誰なのよ。名乗りなさいよ!」


「んー、ではまず。私は魔王軍幹部ロザリーだよ、よろしくね。カゲチヨきゅんと遊ぶのに、新規でウサギおねーさんのアバター作ったんだよー」


「そして、あちしも幹部のリゼットおねーさんにゃん! 可愛いニャンコおねーさんにゃん!」


二人は、魔王軍幹部のエルフ女性たちだった。

いつもの強い魔王軍幹部アバターでない。

今回は、通常プレイヤー用のアバターで新規に作成してきたのだ。


「魔王軍……?」


「倒さなくていいからな?」


アキラの様子を見て、ノヴェトは一応釘を刺しておく。


「とりあえずは、みんなでワイワイやろうぜ。これがネトゲの醍醐味だな。オマエらネトゲ初心者が、いきなり知らん大人と組むってのも、ハードル高いからな。まず知り合いとやってみようぜ?」


「私知らない人なんだけど……?」


「友達の友達は、友達だって。大丈夫、すぐ慣れるって」


「ふぅん……」


アキラはなんだかとても不服そうだ。


「あー。そうだ。ロザリーちゃん、リゼットちゃん。聞きたいんだけど……?」


「なんですー?」


「最近、まっちゃん何かやってんじゃん? なんか知ってる?」


「あ、ああー。……実は私らも知らないんです。魔王様は『サプライズでござるよ!』って言ってましたが」


「え? そうなの?」


「あたいら幹部なのにー、ハブられてるにゃん! ……でも、たぶんあれッスよ、あれ」


「あれ?」


「ノヴェト様、完全に忘れてる感じですね……。もうそろそろ、魔onの『大規模アップデート』が……」


「ああ‼︎ 忘れてた‼︎ ああーーーーーー‼︎ まっちゃん、それの準備か。やっと理解した」


「ちなみに言っておくと、ノヴェト様のアレ、却下されてますんで」


「アレ? ……ああっ‼︎ ええ⁉︎ なんで⁉︎ ……どっちの方?」


「どっちもです‼︎」


「なによ、なんの話よ⁉︎」


ノヴェト、ロザリー、リゼットの話に割って入るアキラ。

カゲチヨも聞いている。

ロザリーは、二人にも理解できるように、順を追って説明する。


「あー、えっと。近々、魔onの大規模アップデートがあるんですよ。魔王様はそれの準備をしてるはず。……で、そのアップデートで実装する新装備を、ノヴェト様が案を出してたんですが……。これがまた、あまりにも酷くて。女性幹部の殆どで否決したのです」


「な、なんでだよ‼︎ 絶対ウケるって‼︎」


「なに、どんなのよ。そのひどい案って」


何やら自信満々で語り出すノヴェト。


「高レベル装備になるほど、露出増える仕様にしようぜ、ってだけだよ? あと、最強の天人装備ってのが、全裸なのよ! こう……、見せたらヤバイところに湯気だったり、光だったり、霧だったり……。大丈夫! 絶対見えないから‼︎」


「もうそれ、子供に見せられないんですが……」


「あたいら、魔王軍幹部は軒並み高レベルにゃんですよ? 確実に、全員露出狂みたいに、にゃっちゃうんですが⁉︎」


「大丈夫だって、みんな全裸なら怖くない‼︎ ……っていうか、見えないんだし、チラリズムが……」


「却下です‼︎ 却下‼︎」


「えー……」


ものすごくガッカリしているノヴェト。


「ダメに決まってるでしょうが……。アンタ、アホなの……」


アキラも呆れ顔。


「……でもそれ、カゲチヨも着るんだぜ?」


「「「え?」」」


ロザリー、リゼット、アキラは一斉にカゲチヨを見た。


「……え? な、なんです? ……ボ、ボク、そんなの着ないですよ⁉︎」





ところ変わって、女神神殿。


だが、その日、神殿は騒然としていた。


「早く! こっちだ‼︎ ……何をやっている‼︎ 担架が全然足りないぞ‼︎」


「こ、こんなに急に人が……、こんなの想定していません‼︎ 元々担架なんて、そんな数……」


「だったら、カーテンでもなんでも使って……。もうなんでもいいから、とにかく今は、この部屋から倒れた者を運び出すんだ‼︎ 早くしないと、第二第三の……」


そこは、女神神殿の研究棟だった。


すでに数人の研究者が倒れている。

これほどの異常事態は、研究棟が建てられて以来、初めてのことであった。


「総員、退避せよ‼︎ 救護隊以外は、早くこの場から離れるんだ‼︎ ……くっ! キサマ‼︎ 何をやっている‼︎ すぐに出ろと……」


大混乱の研究棟に、一人の女性が現れる。


「あらあら……、なんの騒ぎかしら〜?」


「女神様でしたか! ……ああ、ダメです! 部屋に入られては‼︎」


「ここは私の神殿よ? 私が入ってはいけない場所なんて、あるのかしら」


「き、危険なのです‼︎ ……あれが、あれが開いたのです! ようやっとパンドラの箱が! で、ですが……っ‼︎」


「パンドラ? ……ああ、あれ。そんなのあったわね」


女神は思い出したように、頷く。


それは、異世界からの漂流物。

その箱には一言、こう書いてあった。


『パンドラの箱』と。


「それで? この騒ぎはなんなのよ? 開いて大喜び、って感じではないわね」


「そ、それが……、中に入っていたのは、多くは書物で……」


「書物……?」


「それを見た研究員が、続々と……。これは何らかの病ではないかと。おそらくは、呪い……、のような……」


「呪いねぇ……」


そうしている間も、次々と運び出される研究員達。

倒れた研究員を覗き込む女神。


「別に……、何かの病気……、には見えないけど……?」


「ああ、書物を……、あの書物を……」


だが、女性研究員は、うわ言のように言葉を繰り返している。


「なに? 見せればいいのかしら? これ?」


「ダ、ダメです‼︎ その者に書物を見せては‼︎」


「ひゃああああああああああああああ‼︎」


書物を見た女性研究員は、急に叫び出した。


「うお⁉︎ ……え、……えぇ? ……ちょっと引くわ……」


予想していない女性研究員のリアクションに、ドン引きの女神。


「は、早く取り押さえろ‼︎ 本を取り上げるんだ‼︎」


「けぇええええええええええええええ‼︎」


「くっ‼︎ 抵抗するな‼︎ 本を離せ‼︎ それは危険なのだ‼︎」


複数人で取り押さえようとするが、暴れる女性研究員。

なおも奇声をあげる。


「なにやっているのよ、しょうがないわね。……えい」


女神はスッと魔法を唱え、軽い衝撃波を発生させる。

すると、女性研究員の手首に当たり、書物が手放される。


「い、今のうちだ‼︎」


そうして取り押さえられた女性研究員。

そのまま押さえつけられるように、担架で運ばれていった。


その放られた書物を、女神は拾い上げた。

そして、表紙の文字を読み上げる。


「……『最終戦争(ハルマゲドン)』ねぇ……」


女神はパラパラと目を通した。


「……女神様……?」


「ふぅん。分かったわ。……この書物。以降、禁書とするわね」


女神は周囲を見渡す。

研究棟は、もはや機能しなくなるほどの被害が出てしまっている。


「聞きなさい。私の許可なく、これらを閲覧することを禁止するわ。違反した者には、厳罰を……。まぁ詳しくはあとで決めるわね。……あー、あと、他にもあるのかしら? そうね、箱に入っていたもの全部、禁止にするわね」


こうして危険な書物は、箱と共に封印された。


だが、それは残念ながら、その場しのぎでしかなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんだか不穏な空気が…!ハルマゲドンって、BLとかではなく真面目なヤバい書物なのでしょうか…!続きが気になります!
2022/06/20 20:52 退会済み
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