ゴールへの道
四つん這いになったソングが頭を振って前に進み、途中で立ち上がって歩こうとするが目眩がしてふらつき、橋にぶら下がったチーネが左手のソングの剣を楕円形のスペースに放り投げ、背後に転がる音がしてソングが振り向き、剣を取りに行こうとしたが痺れて戦える状態ではなかった。
『先に……ゴールすりゃいいんだ』
唇を噛み締めて、前へ向いてゴールを目指す。
チーネは蜜蜂の剣先を鉤型に曲げ、橋の角に引っ掛けて状態を起こすと、左手で岩の縁を掴んで懸垂をするようにひょいと体を持ち上げ、あっという間に橋の上に戻って来た。
「ソング。もう諦めなよ」
立ち上がって蜜蜂の剣を真っ直ぐに伸ばしたが、もう使う必要もないので背中に装着する。
「気を付けなさい。人間に羽はないからね」
ソングはチーネの忠告も聞かず、ふらふらしながらもスピードを上げ、チーネはその危なっかしい後ろ姿を眺めて心配そうにゆっくりと歩き出す。
背後にチーネが迫るのを感じながら、ソングが焦ってバランスを崩して転び、橋にしがみついて立ち上がり、髪を逆立てて必死にゴールへ向かう。
『な、なんなのよ。タフなのは認めるけどさ』
毒液を弱めたとはいえ、普通なら数秒で動けなくなり、意識を失ってしまう筈だ。しかも傾いて体が横向きになった時、アソコだけが元気に突っ立っているのが見えた。
『ヤダ、今にもキルトを突き破りそうじゃない？』
なんと、空へと聳り立って輝いているでないか。
しかし遂にゴールを間近にしてソングはグラっと前へ倒れ込み、腰だけ少し浮かした状態で寝そべって、ジリジリ……と前へ進み、右手をペタッと伸ばしたが、ほんの数センチ指先はゴールへ届かず気絶した。
『凄いよソング』
チーネは呆然と立ち尽くし、ソングの健闘と愛情に感激した。
「あっ⁈」
その時、ソングの体が傾いて岩橋から転げ落ちる。
チーネは慌てて背後から駆け寄り、右腕を伸ばしたが、掴んだのはソングの勃起したアソコだった。
「ソング……」
一物をしっかりと握られたソングが岩橋の下で、仰向けになって宙吊りになっている。
それをチーネが橋から体を乗り出して右腕だけで支え、意識を戻したソングが見上げて『可愛いい』と呟くが笑えない。
「ギョエ～～！」
男にとって耐えられない痛みと恐怖で、ソングが悲鳴を上げて目を覚まして上半身を起こし、周辺を見渡して呆然とした。
「ん？…………夢か？」
ソングは既に妖精の森の部屋で手当てを受けて眠っていたのである。実際は股間の局部ではなく、チーネに腕を掴まれて助けられ、救護班の木製の運搬機に積まれて空を飛び、岩室の崖から妖精の森に到着すると、蜜蜂の毒を中和させる薬草の湿布を体に貼られて治療を受けた。
