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童話

青い宝石、金の石

作者: ごろり

 むかし、はるか宇宙そら彼方かなたの、そのまたこうに、おさらのようにひらべったい、不思議ふしぎほしがありました。


そのほしには、たこともない草木くさきしげり、たこともないものがたくさんんでいて、なかには、星屑ほしくずたしたきらめく大河たいががゆったりとながれておりました。そして、そのながれのては、宇宙そらそそいでいたのです。


そのほしおさめる王様おうさまは、たいそうかしこやさしいかたで、かれのおかげで、ほしたみはみんな仲良なかよ平和へいわにくらしていました。


 あるとしのこと、王様おうさま王妃様おうひさまのあいだに、かわいらしいおんなが生まれました。その子のかみ銀色ぎんいろで、ひとみふか青色あおいろをしていました。

王女様おうじょさま誕生たんじょう国中くにじゅう大喜おおよろこびして、盛大せいだいなおいわいが三日三晩みっかみばんつづいたそうです。



 月日つきひながれ、王女様おうじょさまうつくしく成長せいちょうし、十五才じゅうごさい誕生日たんじょうびむかえました。

 王女おうじょのことを、なかに入れてもいたくないほど可愛かわいがっていた王様おうさまは、彼女かのじょひとみおなじ、ふか青色あおいろかがや宝石ほうせきをはめんだうつくしいティアラおくったのでした。

ティアラには、あお宝石ほうせき以外いがいにも、いろとりどりのちいさないしがついていて、それはそれはうつくしいものでした。


王女様おうじょさまは、そのティアラをたいそうおし、このくに大切たいせつ行事ぎょうじのときは、いつもそれをけて出席しゅっせきなさっていたのです。


 あるとき、星屑ほしくず大河たいがに、ひとびとがのぞんでいたはしかり、その完成かんせい式典しきてんもよおされることになりました。

くに二分にぶんしていた大河たいがはしがかかることで、人々の往来おうらい活発かっぱつになり、このほしはますます発展はってんするにちがいない! みんなのこころ期待きたいはずんでおりました。


王女様おうじょさまは、その式典しきてんでおいわいのスピーチをされるため、いつものようにあお宝石ほうせきティアラをつけておでましになりました。

彼女かのじょかがやくような笑顔えがおは、このほしたみにたいへんあいされておりましたので、大歓声だいかんせいがあがります。


 王女様おうじょさまはしのうえにち、しろいドレスのすそをつまんでかる会釈えしゃくをしたときでした。

ティアラについていたあお宝石ほうせきがポロリとはずれ、コロコロコロンところがって、星屑ほしくず大河たいがまれてしまったのです。


「まって! わたくしの宝物たからもの!」


王女様おうじょさまはそうさけんでをのばしましたが、もう手遅ておくれでした。


大河たいがまれたものは、やがてはてない宇宙そらへとながち、あちこちらばり、行方知ゆくえしれずとなってしまうのです。


「ああ、なんてこと……」


王女様おうじょさまはたいそうおなげきになり、毎日まいにち部屋へやにひきこもり、あのかがやくようなあかるい笑顔えがおをすっかりなくしてしまったのです。



「あのあお宝石ほうせきをさがすのだ!」


王様おうさまは、大勢おおぜい家来けらいたちにめいじました。


それからはもう大騒おおさわぎ、家来けらいたちはふねり、ひろ宇宙そらさがしてまわったのでした。

あお宝石ほうせきはなかなかみつからず、月日つきひながれてゆくばかりでした。


 そんなある、はるかとお場所ばしょへと旅立たびだった、ひとりのわか家来けらいから、うれしいらせがとどいたのです。

はるか宇宙そら彼方かなたのそのまたこうにある、あつほのおえさかるほしのそばで、王女様おうじょさまあお宝石ほうせきつけたというのです。


「おお、でかしたぞ! はやくそれをってかえってまいれ!」


王様おうさま大喜おおよろこびで、その家来けらいめいじましたが、家来けらいはなにやらこまった様子ようす


「どうしたのだ?」


王様おうさまはイライラとしたこえでたずねました。


「じつは、あの宝石ほうせきは、宇宙うちゅうのチリをくっつけて、どんどんおおきくなったらしく、いまではなにやらたくさんのいきものがいているようでございます」


「なんと! して、どのようなものがいているのだ?」


一番いちばんはばをきかせているのが、ニンゲンという種族しゅぞくでございます」


「ニンゲンとな? それはどのようなものなのだ?」


「は、あれは、われらと姿形すがたかたちはそっくりです。しかし、からだおおきさは、われらの親指おやゆびほどのサイズ。寿命じゅみょうくらべものにならないほどみじかく、たいへんはかなものです」

「それに、ニンゲンのほかにも、多種多様たしゅたようもの繁殖はんしょくしているようです」


「なんということだ! だが、そのようなちいさきものども、一撃いちげき駆除くじょできよう。そしてチリをはらい、宝石ほうせきかえることはできるであろう?」


「おそれながら、かれらのいとなみをつぶさにみておりますと、健気けなげに日々をきており、駆除くじょするにはしのびない気持きもちになるのでございます」


「それは……」


王女様おうじょさま心配しんぱいしてわれわすれていた王様おうさまでしたが、もともとはとてもおやさしいかたなので、家来けらいはなしくうちに、すっかりかんがんでしまわれました。


「うーーむ。それでは王女おうじょ相談そうだんしてみるとするか……」


王様おうさまは、さっき家来けらいからいたことを、王女様おうじょさまにくわしくはなしてかせました。

すると、王女様おうじょさま笑顔えがおもどし、こうおっしゃいました。


「お父様とうさま、わたくしの大切たいせつ宝石ほうせきに、そんなにたくさんのものんでいるなんて素晴すばらしいですわ。だって、宇宙うちゅう片隅かたすみで、たったひとりさびしくまたたいているのではないかとこころいためておりましたもの……」


「そうだったのか……王女おうじょよ、そなたがやさしいむすめそだってくれてうれしいぞ。あのあお宝石ほうせきは、そのままにしておいて本当ほんとうによいのだな?」


「もちろんですわ、お父様とうさま。でも、たったひとつおねがいがありますの」


「なんだね?」


「あのあお宝石ほうせきまうものたちを、ときどきこっそり見守みまもりたいのです。ですから、となりにこの金色きんいろいしかべててくださいませ」


「これも、ティアラについていたいしだね?」


「はい。この金色きんいろいし小舟こぶねかたちになるよるは、わたくしはこれにられつつ、あお宝石ほうせきまうものたちがしあわせであるよう、いのりをささげにまいります」


そういうと、王女様おうじょさまはその金色きんいろいしを、そっと王様おうさま手渡てわたしました。


王様おうさまは、家来けらいめいじて、王女様おうじょさまのいうとおり、あお宝石ほうせきのとなりに、ちいさなきんいしかべさせました。


 それからというもの、王女様おうじょさまは、三日月みかづきよるだけおでましになり、地球ちきゅうまうわたしたちの、ささやかなしあわせをいのってくださっているのです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 地球と月の創世神話ですね! 小さな子供に読み聞かせるのは、最初はこういうものがいいんじゃないかな? と思わせてくれる作品でした。 三日月の日には王女様が月に来ていると言われると、つい、空を見…
[良い点] すごい、童話らしい童話だなと感じました。 地球がどんな星なのか、子どもが一番初めに触れるのはこういうお話からが良いんじゃないかなと思いました。 天体の話から始めるよりも、お姫様の宝石のよ…
[良い点] 昼咲月見草さまの割烹より、お邪魔させていただきましたm(_ _)m 素敵な…素敵な物語です!優しい世界ですね…(*´ω`*) そうなのかぁ、地球と月ってそうやってできてるのかぁと、そして…
2021/01/22 08:58 退会済み
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