最初は
遥か昔から綴られてきた書物にはこう書かれていた。『異界の者が現れし時、裁きを与える者現れん』と。
こう言うのも何だが、大分イカれてると思う。新しい転生者が現れる度にそいつを殺すご苦労人なんて、本当に存在するわけないだろう。
だとしたらだ、目の前のアイツらをさ、、転生者を殺してくれよ。
さっきからテントで盛り合ってる猿共の中に、俺の彼女をとったクソ勇者が居るのにっ
なんでアイツ何かと?
確かに見てくれはいいし、勇者として召喚されただけあって力は国家にも匹敵する。
だからどうした?
それがなんで、、、、今まで慎重に距離を詰めてきてやっと婚約を結べた大切なミオを狙いやがったんだ!!?
ミオとは十年以来の付き合いだった。親のいない二人は今までお互いに助け合って生きてきたんだ。そんな中でいつしかミオと俺とは友情を超えた愛が芽生え始めていたんだ。
だから、成り行きとはいえ、結婚の相談を持ちかけてそれで快く受け入れてくれたのに・・・・この扱いはなんだ?
ふざけろっ!!!? ミオは俺にとっての唯一の存在だったんだっ!!!?
それが、、、一晩見ない内に俺の所に来て婚約を破断して、それで・・・・俺が部屋に居るのにアイツを連れ込んできて、、俺達が寝たベッドの上で・・・・
「ぐううううううっっ、、、、この、クソ野郎がぁ゛っ!!?」
悔しさのあまり、地面を思い切り殴りつけた。泥がはね、服に取れにくいシミをつくる。
「はははははっ!!!」
「うふふふふっ」
そんな悲痛の叫びを聞いたテントの獣共は勝ち誇ったように高笑いを挙げた。
わざと見せるようにやりやがって、、さぞ興奮するでしょうよ!!
こんな、何も持たない只の村人の俺が悔しがるのをオカズにヤるのはさぞ気持ちいでしょうよ!!
・・・・もういいよ、勝手にしやがれ。
どうせ俺が歯向かった所で勇者のアイツにボコられて笑いものにされて終わるだけだ。
明日にでもこのパーティーを抜けてやろうかな?
ちなみに、今は魔王退治とかの名目で神の天啓を授かったミオや他の女達と勇者で旅に出ている最中なんだ。
つまり、俺の周りには化け物揃いと言うわけだ。
じゃあなんで俺がいるかって? 実を言うと俺も規格外の力を手に入れる筈だったんだ。
聞いてくれ。俺は『器の者』と言う神の力を授かったんだ。だがその実、中身は何も無しのスッカラカンでこれと言った能力はこれっぽっちも出やしない。
外面だけの只の村人さ、。他に使い道はあるのか模索したが全く成果無し。そもそもこれが一体どういう者なのか分かる奴何て一人もいやしないんだ。
だからかな? 連れの女共には荷物持ちにされ、勇者にケツを蹴られて魔窟に入ったりとかしてさ。
そんなん、愛想尽かされても文句言えないよな。幾ら寝取られた真実を受け止めたくは無いからってでしゃばって付いていく俺にも問題はあった訳だよな。
・・・・・・・・自分を卑下するとかいよいよ俺も終わったな。
夜が開けたら帰るか。
「まぁまぁ、そう卑下にすんなよ。見てくれは悪くないと思うぜ?」
「うわっ!?」
暗闇の中周囲を見張っていた俺の背後から肩に手を置いて話しかけてきたのは見知らぬ女性だった。
「・・・・だれですか?」
赤に近い髪色に、黄金の瞳を持つ美麗は何処か人間では無いような雰囲気を纏っていた。
詳しいわけではないが、もしかしたら魔人なのかもしれないと興味本位で名前を聞いてみた。
「私の名前はアル。142次元の君さ、宜しく」
「」
ちょっと思考が停止したよ。ぽかーんと口を開いていたよ。
一体彼女は何を言ってるんだかよく分からないのだが、今晩は寝れそうに無いなと確信した。
「あっ、ごめんごめん。つい癖でさっ、でも『器』の紋章を持つ人にはちゃんと説明しろって女神様に言われてるんだよね!」
「は、はぁ・・・・」
いまいち話が飲み込めずに居ると、テントから誰かが顔を出して此方を見た。
「んあ? 女の声がすると思ったが、、、ほぉ、こりゃまた」
勇者は裸体のまま恥じらいもせずに外に出ると、アルを確認して舌なめずりをした。
「ねぇ、どうしたのぉ? 私まだたりなぁい」
同じく身を乗り出したのはミオだ。奴は濡れた髪を頬に張り付かせ、ヌメつく肌と豊満な胸を背中に押し付けながら甘えるようにそう言った。
少しだけ俺と目を合わせたが、興味が無いように逸らされてしまった。
「・・・・ねえカル。転生者って必要だと思う?」
「え?」
アルは少しだけ微笑むと、勇者の所に歩みよって行った。
「ほっほぉ〜、美人さんか自分から歩み寄ってくるとか、流石異世界だな」
勇者は手を肩に載せようと伸ばした所で・・・・
「っ、あ?」
その腕が肩にかけて吹き飛んでいた。
勇者は叫んだ、痛みに悶ながら。
ミオは悲鳴をあげ、勇者に駆け寄った。
吹き飛んだ腕は俺の近くにボトリと落ちた。生臭い匂いを放ってとても不快だった。
「ねえ、カル。言葉じゃ伝えきれないけど、本当に許せない奴とかって表現しづらいんだよね? なんでだと思う?」
「このあ゛ま゛ぁっ!?」
激昂し、剣を片手に襲いかかる勇者を軽くいなす。
その少女の動きは美しく、踊っているようにも思えた。
「ぐあっ!?」
「暁ぃっ!!」
勇者の本名を叫んだミオは忌々しい目をアルに向け、ブツブツと魔術を唱え始めた。
それを見かねた連れの女達も加勢に加わり、アルを集中攻撃した。
――――――辺り一面が火の海になり、カルは火傷を負うまいとテントから距離を取った。
「答えは・・・・」
燃え盛る爆炎の中から姿を見せたアルは全くの無傷だった。
「無価値だから」
ぽいっと放り投げられたのは4つの生首。
「ねぇ、カル君。私は転生者殺しって言うの」
「・・・・」
「君もなって見ない? 転生者殺しに」