ツコンゲ氏の主張
彼の名前は、ツコンゲ・ゾスマカ。
予想通り、古の巨人族を祖先に持つ男性であった。
厳つい見かけとは裏腹に、こちらの取材の求めに快く応じてくれたツコンゲ氏。
とはいえ、外見から放たれる威圧感はやはり尋常ではない。
だが、こちらも意を決して質問を開始する――。
――ツコンゲさん、貴方がなろう界隈の短編コーナーで"1話ガチャ"行為を繰り返しているなろうユーザーなんですか?
「なんだって?このフィアサム・クリッター感あふれるほどにエコな俺様が、物語の冒頭を作っては無駄にポイ捨てして回っている"1話ガチャ"のマヌケどものお仲間じゃないか、だって!?……そいつは、酷い誤解というか笑えないジョークだぜ!」
――それでは、貴方はここで何をしているんですか?そして、あの首輪で繋がれている大学のヤリサーみたいな人達は一体……?
「あぁ、それか。俺は"偉大なる豪傑の子供達"っていう世界的犯罪シンジケートの人身売買部門に所属している構成員で、今はこの"テクノ・ブレーク"エリアの奴隷達の管理を任されてんだ。アンタが探している"1話ガチャを頻繁にしているなろうユーザー達"ってのは度々ここに来たりしているが、大抵みんなここにいる奴等と同じく首輪に繋がれて日夜パーリィナイトする羽目になってるぜ!……な?俺とアイツ等は全然お仲間なんかじゃないだろ?」
――え?人身売買……ですか?
「おぅともさ!この犯罪シンジケートの起源となった巨人様は、森に迷い込んだ子供を奴隷にするのを生業にしていたんだ。その偉大な志を継ぐ俺達もやる事は変わらない。ただ、俺達の場合はもっと手広く人生という先の見えない大森林で行き惑っている奴等に、種族も思想も関係なく"奴隷"という立場と共に食い物やら寝る場所を提供してやってんのさ。――まぁ、要するにこれは"慈善事業"ってヤツだ!HAHAHA!!」
――……では、この場所に訪れた"1話ガチャを頻繁にしているなろうユーザー達"はここで何をするつもりだったのですか?
「あ〜……そういや何か、ゴチャゴチャと言ってたな。――でも、故郷の森を焼かれたエルフとかブローカーがとっ捕まえてきた獣人とかと違って、アンタ等の世界の"なろうユーザー"とやらは、自分から勝手にここに来ただけだぞ?……まぁ、奴等が何をしようとしていたのか知りたけりゃ、自分で本人に聞きな」
そう言ってツコンゲ氏は立ち上がると、顎を動かして私も自分の後についてくるように促す。
ここからまた別の場所に移動するらしい。
後方で竹馬に乗りながら周囲を警戒していたキッドに視線を送ると、無言で頷いたので、私はおとなしくツコンゲ氏に従う事にした……。