過酷なる旅路
5月14日・ニナ=ロウ界:テクノ・ブレーク大森林
深山氏から得た情報をもとに私は、広大なニナ=ロウ界に位置するテクノ・ブレーク大森林へと訪れていた。
独自の情報網によると、この地で『1話ガチャをするなろうユーザー』達の姿が目撃されている、という知らせが入った。
その情報が本当なのか?事実ならば、そのなろうユーザー達はこの地で何を目論んでいるのか?
それを調べるために私は、現地で雇った少年カウボーイ:"コゾウ・ザ・キッド"をガイド兼用心棒として雇い、森の奥へと進む事にした……。
「ハンバーガーならやっぱり、コゾウバーガーでね♡」
愛用の竹馬に騎乗しながら、器用に身体を傾けて実家の"コゾウバーガー"というハンバーガー屋の宣伝をこちら側にしてくるキッド。
確かにカウボーイなだけに、不安定な姿勢でも竹馬を乗りこなす技術は見事なものだが、私は早くなろうユーザー達のもとに向かいたかったので、この頻繁に行われるキッドの宣伝行為には密かに苛立ちを覚え始めていた。
だが、キッドはそのような欠点を補って余りあるわんぱくぶりの持ち主であり、マングローブを切り開いて海老の養殖場を作ろうとしていたモグラのような姿をした亜人達に襲われた時は、華麗にメンコ・チャクラムを使いこなしながら、撃退する事に成功していた。
「カウボーイなのに、君は銃を使わないのかい?」
と聞いてみたところ、
「母ちゃんに、『BB弾を人に向けて使うんじゃないよ!』って叱られたから、それ以外の武器を使うようにしている」
と、むくれた表情で答えが返ってきた。
年相応の少年らしい返答に安堵しつつも、『でも、あのメンコ?も結構切れ味鋭くて危なかったよな……?』と先程の戦闘を思い出してモヤモヤした気持ちを抱えつつ、私達は森林の奥地へと進んでいく……。
数々の困難をくぐり抜け、私とキッドは目撃情報のあるテクノ・ブレーク大森林の奥地へと到着していた。
そんな私達の視界の先に広がっていたのは――到底信じられない光景であった。
なんと、首輪をつけられた人間やエルフに獣人や竜人、果ては魔族とおぼしき多数のうら若き男女が入り乱れて、真っ昼間にも関わらずあられもない姿のまま、Shippori and the Cityな行為にふけっていたからである――!!
中には何がしたいのか、この集団に入らずに一人でガニ股ヘコヘコ♡ダンスをおっぱじめる者やオムツとネクタイを装備しながら、備え付けの太鼓を盛大に叩き始める青年など、もう、渋谷のハロウィンを彷彿とさせる『変態仮想行列か!』と怒鳴りつけたくなるような、文明社会に対する叛逆としか言いようのない酷い有様であり、私は眼前の醜悪な光景に対して血流をビキビキ!と強く滾らせたりしながらも、単なる性欲を凌駕した
『この場にいるメスガキ達に、社会人としての良識を叩きつけて、分からせてやりたい!』
という社会的正義と憤怒の想いを胸に、激しく燃えていた。
そんな私とは対照的に、歴戦のカウボーイといえどキッドはまだまだ子供。
「おわわ!」とわざとらしく口にしながら両手で目を覆ったふりをしていたが、肝心の指の隙間が空いている事はバレバレである。
とはいえ、さながら――いや、眼前の彼らに対する扱いはまさに奴隷そのもの。
このような非道な行いを、"1話ガチャ"で書籍化を目指すなろうユーザー達がしているのだろうか?
でも、それなら何のために?
よく見てみるとこの奴隷居住区ともいえるエリアにおいて、首輪もつけることなく棍棒を担ぎながら、乱痴気騒ぎをしている者達に向けて
「もっと不特定多数とクネクネ♡タイムしまくりやがれ、コラァッ!!」
などと、威嚇している大柄の男性を発見した。
身長はおよそ5メートル近く。
凶悪そうな顔つきと、ショタおねを彷彿とさせる『自分の友達を多数引き連れてきた少年が、目隠ししたお姉さんに一斉に群がる』感じのイケないタトゥーが腕に彫り込まれているあたり、尋常ではない雰囲気を周囲に放っている……。
もしかすると、古の巨人族の血を引いているかもしれないが、この男性がなろうの短編コーナーで"1話ガチャ"を頻繁に繰り返している人物なのだろうか……?
私は早速、彼に話を聞いてみる事にした。