乙女の愛は地球より重い
「センパーイ!! 愛してますわ~~~♡♡♡」
トラック20台分のレッドローズをぶち撒きながら、早乙女愛花は愛を叫んだ。
道路を埋め尽くすレッドローズ。求愛の根源たる先輩は薔薇の海に埋もれ頭の先しか見えなくなっている。
「センパイ! 今日はお弁当を作ってきましたの……一緒に如何ですか♡」
ドドンと現るコンテナの如き重箱。5tクレーンで蓋を持ち上げると中には巨大なおせちがぎっしりと敷き詰められていた。しかし薔薇の海に佇む先輩は未だに頭の先しか現世に居ない。
「先ずは伊達巻きから行きますわよ♡」
薄茶色のウェーブ髪の上に安全第一と書かれたヘルメットを被り、重機に乗り込む愛花。解体作業用の巨大なハサミが着いた重機を繊細な手付きで操縦し、伊達巻きを重箱から取り出した。
慎重に伊達巻きを先輩の傍へと運ぶ愛花。
「―――あっ」
──ドォーン!!!!
伊達巻きのバランスが崩れ先輩の上へと落ちる。柔らかい伊達巻きは先輩の頭を突き抜け、頭の先が伊達巻きから現れた。
「センパーイ! お味はどうかしら~!?」
しかし肝心要の先輩は頭の先しか見えず、声も聞こえてこない。
「お次は栗きんとんですわ~♡」
重機を乗り換え、ショベルカーで重箱から栗きんとんをほじくり返す愛花。
──ベチャッ!ベチャッ!!
唯一見えていた先輩の頭の上から無慈悲な栗きんとんが次々と注がれていく。
「た~んと召し上がれ♡」
ショベルカーを操縦し去って行く愛花。
大量の薔薇と伊達巻きと栗きんとんに埋もれた先輩は無言で佇み続けた…………。
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