きっと、お星さまになったんだよ・・・
「なぁ、テースト、家に帰る前に、
魔法とかスキルをためしてみねぇか?」
教会から家へと帰る道すがら、
モーブスがボクに、そう提案をして来る
「別にボクは構わないけど、
モーブスは、小母さんに寄り道しないで帰って来いって、
言われてるんじゃ無いの?」
夫婦共働きのウチとは違って、
専業主婦であるモーブスの母親は、
モーブスの『コクセイの儀』の結果を楽しみにして、
自宅で待っている筈であった。
「寄り道するなとは言われたけどさ、
今日は、ウチの母ちゃん婦人会とかの集まりがあるって言ってたから、
ちょっとぐらいなら、帰るのが遅くなっても大丈夫なんだ。」
「へ~、そうなんだ、
それじゃ、ちょっとだけ広場に寄り道をして、
ボク達の魔法やスキルを試してみようか?」
「おう!行こうぜ行こうぜ!」
ボクとモーブスは、家の近所に昔からある空地で、
子供たちの遊び場となっている、
通称『広場』に行ってみる事とした。
「やったー!誰も居ないから、
ちょうど良いぜ!」
広場に着くと、誰も居ないのを目にしたモーブスが、
大きな声で歓声を上げる
「そりゃ、皆、学校に行ってる時間だからね・・・」
普段ならば、ボクらも学校に行っている時間なんだけれども、
『コクセイの儀』に望む5歳児であるボクらに限り、
本日、休校となっているのであった。
「よ~し!そんじゃオレが風魔法を使ってみるから、
そこで見ててくれよな!」
モーブスは、ボクに向かって、そう言うと、
右手を体の前へと突き出して、ウンウンと唸り始めた。
「はいはい、頑張ってね」
ボクは、モーブスに、そう返事を返すと、
生暖かい眼差しで見守り始める
「う~ん、う~ん」
モーブスは、何とか風魔法を捻り出そうとして、
体中に力を入れながら唸っているけど、
時折出るのは、風では無くて屁のみである
「モーブス、そんなに力む必要は無いと思うよ?
魔法を使うにはイメージが重要だって本に書いてあったから、
体に中に、血と一緒に巡っている魔力の一部を、
掌へと取り出して、風に換えて飛ばして見る様にって、
イメージしたらどうかな?」
「血と一緒に魔力が体をめぐっているイメージ?
うん、分かった。
そんじゃ、やってみるぜ・・・・・おっ、これが魔力かな?
これを、てのひらに集めて・・・・・『風だん!』
お~!何か飛んでったぜ!テースト」
「あ、ああ・・・確かに風魔法が発動してたみたいだね・・・」
驚いた事に、ちょっとボクがアドバイスしただけで、
モーブスは風魔法を発動してみせたのである、
昔から、同い年の他の子どもと比べると、
何気にスペックが高いとは思っていたけど、
幼馴染ながら末恐ろしいヤツではあるな・・・
「よし!そんじゃ次はテーストが使ってみろよ!」
「うん、それじゃ、当たり障りが無さそうな所で、
簡単な重力魔法から使って見ようかな?
え~と・・・あっ、その石コロで良いか、
それじゃ、使って見るよ?『軽減!』うわっ!?」
ボクが、足元に落ちていた3センチ程の大きさの石コロへと、
重量が軽くなる様にイメージしながら呪文を唱えると、
ビュッ!という音を立てながら、
石コロは遥かな上空へと消え去って行ったのであった。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・落ちてこねぇな」
「・・・・・うん、落ちて来ないね」
ボクとモーブスは、暫くの間、
石コロが消え去って行った上空を見上げ続けたのであった。