黒テースト
「それでは、次の子よ、
水晶の上へと手を置いて下さい。」
「はい!」
祭司様の言葉を聞いたモーブスが、
元気に右手を上げながら返事を返す。
『コクセイの儀』は順調に進み、
儀式の結果に一喜一憂をする子供達を見ながら居ると、
いよいよ、モーブスとボクの順番が回って来た。
「うむ、良い返事ですね、
でも、手は上にじゃなくて、
水晶に乗せる様にしなさい。」
「あ、ご、ごめんなさい・・・」
モーブスは、慌てて上へと上げた手を、
水晶の上へと乗せた。
「ハハハ、構わんよ、子供は元気が一番だからね、
それでは、儀式を始めるから水晶に集中してくれるかな?」
「は、はい!う~ん・・・火魔法・・・剣術・・・火魔法・・・剣術・・・」
モーブスは、ギュッと両の目を閉じると、
自分の欲しい魔法やスキルをブツブツと唱え始める
「いや~、強く願ったからって、
上手い事、貰えるもんでも無いと思うんだけどな・・・」
「それでは、行きますよ。」
モーブスの準備が整ったのを確認した祭司様が、
水晶が置かれた台座から出ているレバーをガチャッと倒した。
「火魔法・・・剣術・・・火魔法・・・剣術・・・」
「モーブス、もうカードが出てるぞ」
ボクは、既に台座からジューキ・カードが出ているにも関わらず、
願い続けていたモーブスに教えてあげた。
「火魔・・・えっ?あ、ああ、
サ、サンキュな、テースト」
モーブスは、ボクの言葉でハッとした様子で目を開けると、
台座から吐き出されたカードへと、あたふたと手を伸ばした。
「うむ、それではカードに集中して」
祭司様は、モーブスがカードを手にしたのを確認すると、
今度はカードに集中する様に告げた。
「は、はい!う~ん・・・」
モーブスがカードへと集中すると、
薄っすらとカードが光を帯びているのが見える、
恐らくなんだけれども、このカードは、
自分の魔力を流す事によって発動するのではないだろうか?
他の種族と比べて、格段に魔力の量が多いボクら魔族は、
子供の頃からソコソコの魔力を持っているので、
魔法を覚えていなくても、物などに魔力を流す事は容易いと思われる
「はい、そろそろ良いでしょう。
では、自分のカードを確認してくれるかな?」
「は、はい、え、え~と・・・うわっ!マ、マジか・・・」
祭司様に促されて、自分のカードを確認したモーブスが、
微妙な表情を浮かべながら呟く、
どうやら、ボクの予測した通りに、
モーブスが期待していた魔法やスキルは手に入らなかった様子だ。
「どうでしたか?」
そんなモーブスへと、祭司様が尋ねる
「はい・・・魔法は『風魔法』と『白魔法』で、
スキルは『小剣術』と『投擲』でした。」
「ほう、なかなか君は多才な様だね、
特に『白魔法』に関しては、我々魔族には授かりにくい魔法だから、
君の助けになると思うよ」
モーブスが若干、気落ちした様子だったので、
どんな残念魔法やスキルを授かったのかと、
期待・・・いや、心配していたのだけれども、
祭司様が仰る通りに、
中々良い魔法やスキルを入手したと思うよ・・・チッ
さて!残念だった事はとっとと忘れて、
いよいよ次はボクの番だぞ!