秘密訓練
やあ、みんな!ボクの名前は『テースト』
シエラザードと呼ばれている世界の、
魔族のみが暮らす島国『ゾパン島国』に生息している
ナイス・ガイさ!・・・と言っても、
弱冠5歳のィヤング・ミィエンだけどね(笑)
実はボクには、パパやママには言えない大きな秘密があるんだ、
一見、この島国では良く居る、
おでこにチョコンと生えた、小さな角がチャーム・ポイントの、
ラブリーな魔族少年だけれども、
ここ、シエラザードとは異なる世界にある、
日本という国で生涯を過ごしたという、前世の記憶があるのさ!
いや~、日本の病院で108歳という大往生にて人生を終え、
天国だか、地獄だかは分からないけれども、
死後の世界へと向かうとばかり思っていたのに、
この世界へと、生まれ変わった時にはビックリしたものさ、
でも、ボクが前世で多く持っていた趣味の一つである読書で、
ラノベも結構読み込んでいたから、
自分の置かれている状況は、直ぐに呑み込めたんだ。
「お~い、テースト!教会に行こうぜ!」
「うん!今、着替えてから、
直ぐに行くから待っててね~」
今、ボクの家の外から、
バット イン グローブを肩に乗せた
超有名な、某ガキ大将みたいな声を掛けたのは、
隣に住む幼馴染の少年で『モーブス』っていうんだ。
モーブスの父親と、ボクのパパが同じ工場に勤めていて、
家が隣同士なんで、家族ぐるみの付き合いがあって、
モーブスの年齢も、ボクと同じ5歳なので、
物心が付いた頃からの親友で、双子の兄弟みたいな存在なんだ。
「お待たせ~」
ボクは、外着に着替えると、
玄関でクツを穿いてから表に出て、
玄関前で待っていたモーブスに、声を掛けた。
「おう!とっとと教会に行って、
『コクセイの儀』を受けようぜ!」
モーブスは、余程早く教会へと向かいたい様子で、
ソワソワとした仕草を見せながら、ボクに、そう告げた。
「別に、早く行ったからって、
良い魔法や、スキルが貰える訳では無いんだよ?」
「そりゃ、分かってるけどよ~
何か、早く行かないと、
良い魔法や、スキルが先に取られちゃう様な気がするんだよ」
「まあ、モーブスが、
この日へと向けて掛けて来た努力を、僕も知ってるから、
その、気持ちは分から無くはないんだけどね」
「おう!オレは、今日の儀式で、
剣術と火魔法とアイテム・ボックスを授かって、
大きくなったら大陸に渡って冒険者になるのさ!」
「うん、そうなれたら良いね」
しかし、実のところ、
ボクは、モーブスが望み通りのスキルや魔法を、
入手するのは難しいと思っていた。
だって、毎日、気の棒を振り回していたり、
焚火の火起こしや、ポケット一杯にドングリを詰め込んでいただけで、
それらの、スキルや魔法が手に入っていたなら、
世間には、もっと、それらのスキルが使える人が溢れ返っている筈だから・・・
僕は、モーブスが連日繰り返していた
それらの、秘密訓練と称する行動を、
生暖かい眼差しで見守った日々を思い起こしながら、
せめて、どれか一つだけでも与えてあげて下さいと、
神様に、お願いをした。