クォーツ式?
「それじゃ、やるよ」
ボクは、モーブスから借りたナイフを右手に持つと、
左手の人差し指にスッと刃を走らせた。
普段から、ちゃんと刃の手入れをしている様で、
ナイフの切れ味はバツグンらしく、
殆ど痛みを感じぬまま、指に血の線が浮かび上がる
「そ、そんじゃ、や、やるからな?」
「モーブス、もっと落ち着いて、
ナイフの性能が良いから、ボクは余り痛くないし、
さっき教えた感じで使えば白魔法が発動する筈だからさ」
「お、おう、そんじゃやるぞ『治癒』・・・どうだ?」
「うん、ちょっと待ってね」
ボクは、右手のナイフをモーブスに返すと、
ポケットからハンカチを取り出して、
指の血を拭き取ってみる
「どうだ?テースト」
「うん、この通り白魔法は、
ちゃんと成功したよ」
僕は、傷が消え去った指をモーブスに見せながら、そう告げた。
「お~!やったぜ!」
「うん、良かったね、モーブス」
(ホントに一回で成功させるとは、
モーブスは、割と魔法の才能が高いんじゃ無いのかな?)
「おう!これもテーストが、きょうりょくしてくれたからだぜ!
サンキュな!テースト」
「うん、モーブスの礼は受け取っとくよ」
「そんじゃ、次はテーストの『フヨ魔法』だけど、
フヨ魔法って、どうやって試せば良いんだ?」
「う~ん、そうだな~、
多分、何か物に特別な効果を付ける魔法だと思うんだけど、
前に読んだ本には、『魔法を使用する者の素質により、
その効果の種類や強さが変化する』って書いてあったと思ったよ」
「それって、どういう意味なんだ?」
「その『付与魔法』を使う人に才能があれば、
色んな種類の効果を、強力に付けられるってことかな?」
「ふ~ん、そんだったらダイジョウブだな、
祭司様も、テーストには魔法のサイノウがあるって言ってたじゃん!」
「うん、ボクも、それなりには使えるんじゃないかって期待してるんだ、
そうだな・・・まず手始めに、このハンカチを使ってみようかな?
そんじゃ、やってみるよ『付与魔法』・・・ふ~、なんとか無事に、
魔法が発動したみたいだね」
ボクが、右手に持ったハンカチに向かい魔法を発動すると、
ハンカチに付いていた僕の血のシミがスッと消え去った。
「血のシミがきえたけど、
なんのコウカをハンカチにフヨしたんだ?」
「ああ、『洗浄』の効果を付けてみたんだよ、
汚れたら直ぐに綺麗になるハンカチって便利そうだろ?」
「おお、そりゃたしかにベンリそうだな」
「僕の魔法も2つとも無事に使えたけど、
どうする?スキルの方も試してみるかい?」
「う~ん、そうだな・・・まだ、母ちゃんがカエるまでには、
ジカンがあるから、スキルのほうもタメしていこうぜ!」
モーブスは、服の袖をめくり上げると、
手首の腕時計で時間を確認してから、そう告げた。
そう、この魔族が暮らす島国には、
魔獣から採れるという魔石のカケラを、
動力として内蔵した腕時計があり、
5歳のモーブスが付けている事からも分かる様に、
安価で、一般的に広く普及しているのであった。
かくいう僕の左手首にも、
最新の、中が透けて見えていて、
歯車の動きが面白い腕時計を、パパに買って貰い付けているんだ。




