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リポップワールド ~ゲーム世界のバグは勇者を殺す~  作者: 佐倉コージ
第3章 序盤からハードモードとか、人生はクソゲーだ
81/166

3.25.78 巫の断章.3 決意

 70話の巫の断章.2の最後の場面の続きです。

 そして胸糞展開も継続中です。

 セクシャルにハラスメントしまくります。

 ご注意ください。


■カムナ3005年 10月1日 日曜

◎リリナ



 あんな悪の権化のような男に嫁ぐなんて絶対に嫌だ。

 死んだ方がマシだとさえ思える。

 私はそんなことのために巫女になったわけではない。

 こんなことになるなら、カムナ教会で受戒した意味なんてなかった。


 ん?

 そうだ!

 こんなふざけた命令を突きつけられて、それでもまだカムナ教会に留まる理由などあるのだろうか?

 だったら逃げてしまえばいいのでは?

 うん、それがいい。


 本当はシオンと2人で逃げ出したいところだけど、それはできない。

 シオンはカムナ教会の中で偉くなり、教会を、国を、世界を変えることを目指しているのだから。

 脱走するなら、私1人だけでだ。

 これ以上、シオンを巻き込むことはできない。


「何を泣いている?」


 私の思考は唐突に遮られた。

 涙を流す私の様子を不審に思ったのか、レイカイ中僧正が問い詰めてきたのだ。


「まさか拒否しようなどと考えているのではあるまいな」


 冷酷な視線で睨みつけてくる中僧正。


「ぃえ、、、突然の、ことで、驚いて、、、」


 しどろもどろに言い訳をする私に、中僧正が追い打ちをかける。


「わかっているとは思うが、そなたに拒否する権利などない。それに、もし駄々をこねるようなら、、、生まれてきたことを深く後悔するほどの罰を受けることになるぞ」


 私の本心を容易く見透かしたかのように、中僧正は脅しをかけてきた。

 けれども出奔を決意しつつある私には、そんなもの何の意味もない。

 適当に話を合わせてこの場だけは切り抜けて、後はこっそりと、、、

 だが続く中僧正の言葉は、私の反抗心を粉々に打ち砕くものだった。


「いや、それだけではない。そなただけではなく、あのシオンとやらいう僧侶にも責任を取ってもらう」


 だめぇっ!!

 それだけは絶対に駄目っ!


 ただでさえ私のせいでシオンに迷惑をかけてしまったのに、そんなことになったらシオンが出世する道が絶たれてしまう。

 私のわがままで、世界を変えたいというシオンの夢を潰すわけにはいかない。

 私の個人的な感情なんて、世界中のか弱い人々を救うという目標に比べたら、あまりにも些細なことだ。

 そんなもの、大義のためには投げ棄ててしまえばいい。


 シオンはこの腐りきった世界を変えるために、幼い頃から必死で努力してきた。

 私に生きる目標を与え、私の人生を変えてくれた。

 今までずっと、私のことを支えてくれた。

 私は、シオンに数えきれないほど多くのものをもらってきたのだ。


 そんなシオンの足を、これ以上引っ張ることなどできない。

 シオンを悲しませたくない。

 シオンにはずっと笑っていてほしい。


 もう自分の気持ちを偽ることはできない。

 私はシオンを愛している。

 そして私が望むことは、シオンと結ばれることではない。

 愛する人と結婚するなんていう夢物語は、受戒して巫女見習いになるときに、きっぱりと諦めた。

 私がいま願うことはたった一つだけ。


 シオンの力になりたい。


 だから、、、



 私は決意を固めた。



「いえ、本当に驚いてしまっただけなのです。あまりにも光栄なことで」


 レイカイ中僧正に言葉を返す。

 内心の激情を完全に抑え込んで、できる限り平静を装いながら。

 そうして覚悟を決めると、私は決意を言葉にする。


「私にはもったいないほどのお話ですが、謹んでお受けいたします」


 疑うような視線を向ける中僧正に、とびっきりの作り笑いを浮かべてみせる。

 シオンのためならば、私はこれからもいくらでも笑ってやろう。

 これが私の決意。


 私は大僧正の側室になる。

 だけど何の力もない人形になるつもりはない。

 大僧正夫人の立場を最大限に使って、カムナ教会の中で力を手に入れる。

 そして、シオンの後ろ盾になるのだ。

 そのためなら、大僧正派のクズどもにも、いくらでも媚を売ってやる。

 諸悪の根源である大僧正に、この身体などくれてやろう。


「左様か。ならばよい」


 ようやく納得したのか、中僧正は話の続きを語り始めた。


「そなたの側室入りは正15歳を迎えてすぐに行う。だが大僧正はその前にそなたとの顔合わせをご所望だ。近々その場を設けることになる」


 カムナ教会の悪の中枢と直接まみえることになるのか。

 話を聞いて、背中にゾクっとするものを感じる。

 だが一方で、これは絶好の機会かもしれない。

 できる限り、『私』を高く売り込んでやるのだ。


 私が思考を巡らす間も、中僧正の話は続いていた。


「せいぜい気に入られるように努力することだ。大僧正はそなたの容姿と能力を買って取り立ててくださったが、、、寵愛を得るのは今のままでは難しいと思え。そなたは性格に問題があるからな」


 問題があるのはお前たちの性根だろ!と思うが、そんな気持ちは笑顔の下に押し込める。


「それに、、、」


 言葉を続ける中僧正は、私の顔から少し下の方へと視線を落とす。


「そなたは胸の発育にも問題があるようだしな」


 中僧正が心ない暴言を吐く。

 私の膨らみかけの胸を見つめて。

 いや、14歳6ヶ月になっても、ちっとも膨らんでこない私の胸を、残念そうな目で見下しながら。




 その日、私は生まれて初めて、他人に殺意を抱いた。




ーーーーー




 それから2日後、私は大僧正カンナギ・ミコトと初めて面会することになった。

 向こうにとっては、これはただの顔合わせ以外の何物でもない。

 だが私にとってこれは、自分とシオンの全てを懸けた、人生最大の『試験』である。


 このまま何もせずに状況に流されてしまえば、私はカムナの加護を失い、何の力もない第4夫人となる。

 大奥に押し込められ、子を産む道具となり、大僧正の寵愛をせがむだけの存在と成り果てる。

 そうなってしまう前に、私は自分の立場を確立しないといけない。

 中央大寺院の中で、側室でありながら大僧正の隣に立てるだけの地位を築きあげるのだ。

 シオンの後ろ盾となれる力を手に入れるために。


 そして私が無価値な人形と成り下がるか、それとも私たちの夢に繋がる力を手にできるか。

 その運命の分かれ道が、今日この瞬間なのだ。

 今日ここで、大僧正に私の価値を示すことができるかに全てがかかっている。


 私がこれから勝ち取らないといけないのは、1日でも長くカムナの加護を失う日を先延ばしにすること。

 あの男に嫁いで純潔を奪われたら、その瞬間に私はカムナの加護を失ってしまう。

 だけど半年後に側室入りすることはもう変えられない。

 だからせめて大僧正に嫁いだ後、この身体を捧げるまでの猶予を勝ち取るのだ。


 そのためには、私がカムナの加護を失うのは大きな損失になると、大僧正に思わせること。

 教会にとっても大僧正にとっても、私が有意義な人物だと納得させないといけない。

 今日のこの面会の場は、その交渉を行うための最後の機会なのだ。



 補佐役の僧侶に案内されて、私は大僧正の私室の前までやってくる。

 覚悟を決めると、私は決戦の場へと足を踏み入れた。


「よく来た、リリナ。言葉を交わすのは初めてだな。カムナ教会大僧正のカンナギ・ミコトだ」


 執務席に腰掛けたままの大僧正が言葉をかけてきた。

 醜悪な本性の持ち主だというのに、驚くほどに美しい容姿の男だった。

 歳は30代半ばくらいのはずだが、いまだに若々しさを保っている。

 だが青臭さなどは微塵もなく、この若さにもかかわらず威厳と自信に満ち溢れていた。

 一見しただけで、人の上に立つために生まれてきたと感じさせられる人物である。

 性根の腐りきった人間だと知らなければ、いや、知っていてもなお、多くの女性が一目で見惚れることだろう。


「お初にお目にかかります。リリナと申します。この度は望外のお引き立てを賜り誠にありがとうございます」


 そんな大僧正に、練習してきた最上級の笑顔を浮かべながら挨拶を返す。

 すると大僧正は軽く驚いたような表情を見せた。


「ほぅ、聞いていた話と随分違うな。問題のある人物だと耳にしていたが」


「身に余る光栄に預かり、考えを改めたのです。誠心誠意この身とこの心を捧げて御奉仕することを誓います」


 胸の内の反抗心をおくびにも出さず、殊勝な態度を心がける。

 まずは初対面のこの男にいい印象を与えて取り入ってやるのだ。


「そなたほどの佳人にそのように言われれば、誰だろうと悪い気はせんが、、、私を甘く見るな」


 だがそんな私の考えは見透かされていたようだ。

 演技を見破られたのか、かまをかけているのか。

 確かに大僧正はこれっぽっちも尊敬できない悪人だが、それでも飛び抜けて優秀な男であることは間違いない。


「そなたはそれほど物分りのいい人物ではあるまい。何を企んでおる?」


 大僧正が問い詰めてくる。

 ここは無理に上辺を取り繕うよりも、正面からぶつかる方がいいかもしれない。


「企むなど滅相もございません。私はただ、並の側室として以上に大僧正のお役に立ちたいと願っているだけでごさいます」


「並以上だと?それは第4夫人より上の地位を欲するということか?」


「いえ、そのような畏れ多いことなど望んでおりません。ただ一つだけ私が望むことがあるとしましたら、、、」


 覚悟を決めると、大僧正の瞳を真っ直ぐに見つめて交渉条件を口にする。


「私が大僧正に大いなる力をもたらすための猶予をいただけないでしょうか。いましばらくカムナの加護を使える時間をいただければ、私はあなたのために新たなる奇跡の力を作り上げてみせます」


 何をもって大僧正に私の価値を示すか、この2日ずっと考えていた。

 そうして出した結論は、、、新たなる奇跡の力の開発。

 それが時間的猶予を引き出すために、私が大僧正に差し出せる交換材料である。

 カムナの加護は教会の基盤システムや、数々の奇跡の力を管理するための能力。

 だがそれ以外にもできることが数多くある。

 新たな奇跡の力を生み出すのも、その1つだ。


 カムナ教会の奇跡の力の多くは、初代聖勇者ホノカが作り上げたものだ。

 魔法やステータス強化、聖都の防御結界など世間一般によく知られているものから、カムナの意思や広域理力分布計測などの教会内部に秘められたものまで。

 それらはホノカからカムナ教会に引き継がれてきたのだ。


 だがその後の長い歴史において、カムナ教会の聖職者が新たに生み出した奇跡の力もたくさんある。

 カムナ版の専用端末や魔法照明装置、各種の鑑定装置、緊急連絡装置などなど。

 それらは今や、人類社会を支えるのになくてはならないものとなっている。

 それはすなわち、カムナ教会が世界全体に大きな力を持つための材料であるということだ。

 そんな奇跡の力を新たに生み出すという話を、大僧正も決して無視できないはずである。


 何故なら奇跡の力の開発はそう簡単なことではなく、この数十年もの間、新たに生み出されたものなど何一つないからだ。

 過去に開発された奇跡の力は、それこそ歴史に名を残すような偉大な先人が、長い研鑽の果てに生み出したものなのだ。

 だからこそ今の腐りきったカムナ教会の内情では、もはや新たな力を開発するなど夢物語でしかない。


 だけど私とシオンは幼い頃から魔法やマナの使い方を研究し、自分なりに改良を施してきた。

 その結果私は高級上位のステータスを身に着け、基盤システムの適性で3位の数値を叩き出すまでになった。

 そんな私が死に物狂いで頑張れば、新たな奇跡の力を生み出せる自信はあった。


 その開発を行うためには、私はまだカムナの加護を失うわけにはいかない。

 何としてもこの交渉をうまくまとめるのだ。

 だが私の提案は、大僧正の気分を損ねたようだった。


「それは体の契りを結ぶのを拒むということか?」


 大僧正が態度を一変させ、怒気をまとわせながら問い詰めてくる。

 その冷たい話しぶりは、思わず逃げ出したくなるほどの恐怖を覚えるものだった。


 だがここで引くわけにはいかない。

 シオンを思い浮かべて勇気を奮い起こす。

 大僧正の怒りの視線を正面から受け止めて、負けないように見つめ返す。

 決して目を逸らさないまま、声にありったけの力を込めて答える。


「いつまでもとは申しません。1年だけで結構です。私に猶予をくださいませ。さすれば必ずや、未だかつて何人も成し遂げたことのないほどの成果をあげてご覧にいれます」


 大僧正は真っ向から立ち向かって反論した私の態度に、軽く驚いたような表情を見せる。


「なるほど、それがそなたの望みか。まあ望みが明確でわかりやすいが、話にならんな。実績のないそなたが何を言っても、小娘の戯言にしか聞こえぬ」


 少し怒気を緩めた大僧正。

 先ほどの怒りは半分作り物で、もしかしたら私を試したのかもしれない。

 巧妙に隠しているが、大僧正からはこの会話を楽しんでいるような気配が感じられる。

 だがそれでも説得するには、もう一押しが必要だ。


「お言葉ですが大僧正、私はステータスも、基盤システムの適正も、カムナの加護の扱いにおいても、この中央大寺院で5本の指に入ります。それが実績とはなりませんか?」


 大僧正はわずかに眉を緩める。

 その動作はともすれば見落としそうなものだったが、やはり間違いない。

 大僧正は、私が自分に立ち向かえるだけの気概を持っているのかを試しているのだ。

 できる限り自信に満ち溢れた態度を演じながら話を続ける。


「しかも巫女になって2年足らずの段階でです。その私がこれから1年以上、必死で努力を重ねれば、新たな奇跡を生み出すことも決して不可能ではありません。それは大僧正にとっても大きな恵みとなるでしょう。そんな私から今この時点でカムナの加護を奪い去るのは、勿体ないとは思いませんか」


「ふふっ、ぬかしおるわ。だが面白い。確かに1年程度ならば、そなたに時間を与えても何も困ることなどない。それに今はイオナが新たな命を授かったところだ。アオイも日に日に可愛らしく育ってきている。確かにこの状況ではそなたにかまけている場合ではないやもしれん」


 大僧正が長女であるアオイを溺愛していることは、よく知られている話だ。

 だがそのアオイを産んだ正室のカンナギ・イオナが懐妊しているなんて、私は今はじめて知った。

 正妻が出産で大変なときに、新たに若い側室を迎え入れて子作りを行うなど、あまりにもひどい所業だ。

 さすがの大僧正といえども、倫理的にも立場的にも、許されることではないだろう。


 特に正室のイオナは、私たち巫女上がりの側室とは違って、クナイ家出身の由緒ある家柄である。

 カムクラ王国で宮内長官を務める四大華族のクナイ家は、大僧正の後ろ盾であり、権力の支えなのだ。

 そのイオナ夫人の機嫌を損ねるようなことは、そうそうできないだろう。


 ともかく大僧正が初めて私の提案に前向きな姿勢を見せたのだ。

 ここに来るまでは不安だらけだったが、少し希望が見えてきた。


「でしたら正室の状況が落ち着くまでの間、私に時間をいただけないでしょうか」


「ふむ、確かにそれが論理的にして、全ての面で最善の選択であろうな」


 ついに大僧正から色よい返事を聞けた。

 期待に胸を膨らませて問いかける。


「それでは、、、」


「だが、ならぬ」


「なぜですか!」


 予想外の拒絶に、衝動的に声を荒げて聞き返してしまった。


「確かに私は論理的な人間なのだが、感情で動くこともあるのだ」


 そう言って大僧正は急に表情を緩めると、私の瞳を覗き込みながら話し始めた。


「ふむ、本当に美しい姿をしておる。才能もあり、しかも実に聡明だ。そしてこの私を相手に一歩も引かぬ芯の強さ。それに何より、清廉で高潔な精神。そなたのことが気に入ったぞ」


 それは私を褒める言葉なのだが、この男に言われても少しも喜べない。

 それどころか好意を向けられたことで、背筋がぞぉっとするような悪寒すらしてきた。


「始めはただ、美しく清らかな花を手折ってやろうという下卑た欲情だけだった。純粋に理想を信じる世間知らずの生娘をこの手で汚し、肉欲の快楽に溺れさせて染め上げてやろうとな」


 虫唾の走るような性癖を、恥ずかしげもなく口にする大僧正。

 こんな男がカムナ教会の最高権力者だなんて、あまりにも腐っている。


「だが今日ここで話をして気が変わった。今すぐにでもそなたを我が物としたいほどだ」


 生まれて初めて男から欲情を直接ぶつけられて、全身に震えが走る。

 恐怖を感じるほどに。


「予定は変えぬ。そなたの価値を示したいのであれば、側室となる正15歳までの半年で結果を出すが良い」


「そんな、、、半年で新たな奇跡の力を生み出すなど、さすがに不可能です」


「いや、そこまでは求めてはおらぬ。可能性だけでも示せればよい」


「ですが、それでも半年後に私があなたのものになれば、私は加護を失ってしまいます」


 どれだけ成果を出しても結局半年後にこの男に抱かれるのであれば、私が力を失うことに変わりはない。

 それでは何の意味もないではないか。

 私は中央大寺院で確固たる地位を築き、シオンの後ろ盾となれる存在になるまでは、力を奪われるわけにはいかないのだ。

 だがそこで、大僧正は急に話題を変える。


「ところでそなたはなぜ私や教皇聖下、権大僧正たちが力を失わないのか知っているか?」


 確かにそのことは気になっていた。

 カムナの加護は、姦淫などで戒律を破った瞬間に失われてしまう。

 それなのに肉欲や権力に溺れる大僧正たちが力を失わないのはおかしいと思っていたのだ。


「教会がもたらす力は4つあるのだ。カムナの洗礼、カムナの加護、カムナの祝福、そしてカムナの記憶。今言った順に希少で、そしてより大きな力となる」


 カムナの洗礼はきっと洗礼を受けた一般人が使える力の呼び名だろう。

 だがカムナの祝福とカムナの記憶というものは初めて聞いた。


「教会の聖職者のみが使えるカムナの加護については、今さら説明の必要はあるまい。だがカムナの加護ですら、授かることのできる人数には実は上限があるのだ。受戒試験に合格した優秀な者しか、カムナ教会の聖職者になれないのはそのためだ」


 どうして受戒試験などという制度があるのか疑問に思っていたが、そんな理由があったとは。


「カムナの洗礼は、使える奇跡の力を最小限に制限することで、全ての一般人にも使えるようにしたものだ。逆にカムナの記憶は教皇聖下ただ1人のみが授かる本当に特別な力だ。カムナ教会の持つ全ての力を扱えるのだという」


 カムナ教会の教皇は、代々一人目の子だけが特別な力を引き継いで生まれてくると言われている。

 教皇聖下のみが使える、教会を支えるのになくてはならない力を。

 カムナの記憶というのは、きっとそのことなのだろう。


「それに次ぐのがカムナの祝福だ。16人だけしか使えない貴重なもので、カムナの加護よりはるかに多くの力を手にすることができる。そして何より、カムナの加護と違って戒律により資格を失うこともない」


 なるほど。

 悪事に染まりきった大僧正たちが大きな力を持ち、なおかつ失わないのはそのせいだったのか。


「いまカムナの祝福を受けているのは、私と正室のイオナ、4人の権大僧正、そして8人の中僧正の合わせて14人だけだ。つまり16人の枠で余っているのはあと2つ。そのうち1つはいざというときのために開けておく必要があるので、残された枠はたった1つだ」


 それってもしかして、、、

 大僧正の言葉に、希望が蘇ってくる。


「もしそなたが祝福に見合うだけの価値を示すことができるならば、、、カムナの祝福を授けることを考えてやろう」


 そう言って大僧正は私の瞳を見つめながら、、、


「リリナ、半年以内に結果を示せ」


 条件を突きつけてきた。


 大僧正がそんなに甘い男ではないことは理解している。

 口ではこう言っているが、本当に私に祝福をくれる可能性など1割もないだろう。

 だけどもしカムナの祝福を得ることができるならば、それは私が望んでいた地位が手に入ることに等しい。

 ならば、なんとしてでも結果を残してやる。

 大僧正が絶対に無視できないほどの結果を。


「承知いたしました。大僧正の期待を越えるものをお見せします」


 私は決意を固めてそう宣言するのだった。


 リリナのトラウマの原因となる出来事でした。

 これ以来、リリナにバストの話は禁句です。


 さて巫の断章は第3章ではここまで。

 この続きは次章以降に。

 そして次回は本編へ戻ります。

 第3章のラスボスバトルはここから中盤戦に突入です。


 次回 第79話 『正義の味方』


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