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リポップワールド ~ゲーム世界のバグは勇者を殺す~  作者: 佐倉コージ
第2章 バグってデータ消えましたって、詫び石よこせよクソ運営
32/166

2.0.30 幕間 ケイ

 第2章スタートです。

【カムナ版 3019年 4月11日 風曜 第1版】

『第2聖女ユウナのパーティ ダンジョン攻略に失敗し全滅』


 先日第2聖女ユウナと第5勇者ハルトのパーティーが全滅していたことが判明した。

 美貌の天才聖女ユウナにとっては、これが初めての挫折となった。

 10日前、1日の日曜日に初の敗北を喫した人気聖女ユウナは、カムナ聖都の中央大寺院で回帰の法により復活している。


 天才聖女の呼び声も高い第2聖女ユウナは、これまでに世界中の全ての高難度ダンジョンを攻略してきた。

 その中には世界最難関のダンジョンであるカムロ大迷宮も含まれており、第2聖女ユウナはそのダンジョンマスターである超級魔物ドラゴンアークですら討伐している。

 ドラゴンアークはカムナ教会が所在を確認している魔物の中では世界最強の魔物であり、天才聖女ユウナが苦戦するような魔物はもはや存在しないと考えられていた。


 そんな第2聖女ユウナのパーティーを全滅させた相手が何者かは明らかにされていない。

 第2聖女ユウナは中央大寺院で復活したあと、誰にも何も語ることなくひっそりと出発した。

 目撃情報によるとカムクラ王国北東部へ向かった模様である。

 天才聖女ユウナのパーティーは、全滅する数日前に獣人国の北西に位置する大森林にて災厄級魔物マンティコアの討伐依頼を達成しており、付近にはそれ以外には強力な魔物は確認されていない。

 周辺に存在する主なダンジョンとしては、高級推奨ダンジョンがマヤの大迷宮、上級推奨ダンジョンがタイシャク魔境、イイデの森、アラカイダンジョンなどがあるが、いずれも天才聖女ユウナにとっては、、、、、




ーーーーー




リポップワールド 第2章

『バグってデータ消えましたって、詫び石よこせよクソ運営』


■カムナ3019年 4月4日 地曜

◎ケイ


 なんで?

 なんでなの?

 おかしいの。

 絶対何かの間違いなの。

 だってだって、絶対そんなことあるわけないもん。


 わたしはメグリの迷宮のあるミカグラ大火山へと全速力で急いでいた。

 焦る心を落ち着かせて必死で速度を上げる。

 異変が起きたのはもう何日も前だから、今さら急いでも何も変わらないことはわかってるんだけど、それでも逸る心を鎮めることができない。

 この目で見ないとそんなこと信じられない。


 そもそもこんなこと起きるわけないんだもん。

 だからわたしのせいじゃないもん。

 わたしはパパに言われたとおりやっただけだもん。

 そりゃ確かにちょっと順番は変えたけど、、、

 だけど、メグリの迷宮は聖勇者選定が終わってからじゃないと誰も来ない場所なんだから、予定より早めに置いてきちゃったけど問題ないはずなの。

 それに、あそこはコクちゃんがいるんだから、誰か来ても大丈夫なはずなんだもん。


 それなのに、それなのに、なんでこんなことになっちゃったの?

 怒られちゃうかな?

 でもでも、わたし悪くないよね。

 だってこんなことになるなんてわかるわけないもん。

 そりゃ確かにクジュウの星祭りに行きたくて、ちょっと予定変えちゃったよ。

 でも、わたしいっぱいいっぱい仕事してるんだし、ちょっとくらい遊びに行っても悪くないもん。

 だから星祭りの時期と被ってる仕事を先に済ませちゃっただけなんだもん。

 そうなの、わたし仕事を先に終わらせた出来る大人だもん。

 だから何も悪くないもん。



 そんなことを考えているうちに雲の切れ目の下にミカグラ大火山が見えてきた。

 わたしは翼にさらにマナを込めて速度を上げる。

 眼下の景色が、そして上下左右を囲む雲が凄まじい速さで後ろへ流れ去っていき、ミカグラ大火山の火口がどんどん大きくなってくる。

 それにつれて数週間前に来たときとの違いがだんだん見てとれるようになってきた。


 メグリの祭壇の部屋とその手前の大広間は、火口の中にせり出した地形の中に作られてる。

 だから空からの入り口は、大広間の上の方の小さな隙間だけのはずだった。

 前に来たときは、その隙間から入ってメグリの祭壇に行ったんだもん。

 それなのに、いま上空のこの位置からでも大広間の中が見えちゃってるなんて、、、


 やっぱりおかしい。

 いや、よく見たらそれどころじゃない。

 大広間の火口側が崩れ落ちて無くなっちゃってる。

 そのせいで、メグリの祭壇の部屋の扉が外から丸見えだ。


「そんなぁ」


 思わず弱々しいつぶやきが出ちゃう。

 気持ちが落ちこんで、速度まで落ちてきちゃった。

 そのまま力なく大広間へと飛び込み、ゆっくりと着地する。

 だけどちゃんと立てなくて、膝をついちゃった。

 この大広間の惨状を見たせいで、体の力が抜けちゃったんだもん。


「やらぁ。ケイ、もう怒られるのやらもん」


 こうやって膝をついて俯いていると、思わず泣きそうになってしまう。

 いや、泣かない。

 ケイは大人だから泣いてないもん。

 わたしはボロボロと零れ落ちる涙をぬぐって立ち上がる。


 そうだ、大広間はひどいことになっちゃってるけど、メグリの祭壇は無事かもしれない。

 そうだもん、きっと大丈夫なの!

 そう思うと元気が出てきた。

 翼を広げてメグリの祭壇の部屋へと駆け出す。

 扉を開けて勢い良く部屋の中に飛び込むと、部屋もメグリの祭壇も無事に見える。

 そうだよ、この部屋は並みの人じゃ入ることすらできないんだもん。

 やっぱり大丈夫だった!


 わたしはメグリの祭壇に駆け寄り、祭壇の上を見ようとせいいっぱい背伸びする。

 だめだ、ぜんぜん見えない、、、

 翼にマナを込めて飛び上がる。

 そして絶望する。

 翼が力なく萎れていき、メグリの祭壇の前にゆっくり落下していくと、両手と両膝を付いて今度こそ泣き出してしまう。


「わらしのぜいじゃないぼん。もうおごられるのやらぁ」


 メグリの祭壇の上に置いておいたはずの天恵のポーションはどこにも無かった。




 どれだけ泣いただろう。

 わたしは部屋の外にとぼとぼと歩き出す。

 このままじゃ本当に怒られちゃう。

 今度はもう許してもらえないかもしれない。

 なんとかしないと。

 どうすればいいんだろう。

 なんでこんなことになっちゃったんだろう。

 そもそもどうしてこうなったんだっけ?

 そうだ、コクちゃんなら知ってるはずだよね。


「コクちゃーん!コクちゃんいないのー!れてくるのー!」


 大声でコクちゃんを呼び続けていると、ようやくコクちゃんが姿を現した。


「五月蝿いぞ、羽虫が。捻り潰すぞ」


 コクちゃんが何かカッコつけて言ってるけど、今はそれどころじゃない。

 早く何が起きたか聞かないと。


「あのね、コクちゃん、あのね、あのね、天恵のポーションがないの。部屋もぼろぼろなの。何があったの?られか来たの?あれはらめなの。ないと怒られるの。コクちゃん、あれはぜったいぜーったーいいるの。ろこいったの?られが持っていったの?」


「やかましいわ、羽虫が。我をそんなふざけた名で呼ぶな、踏み潰すぞ。聞け、我の話を聞け!」


「コクちゃん、ケイ、もう怒られるのいやなの。今回は本当にらめなの。あれは本当にらめなやつなの。コクちゃん、ケイ、こんろはもう許してもらえないかもしれないの。コクちゃん、あれはぜったいもろさなきゃらめなの」


 なかなか話の通じないコクちゃんからなんとか事情を聞きだすと、なんと聖勇者でもないただの勇者候補っぽい人たちが天恵のポーションを持っていったらしい。

 おかしいよ、ただの勇者候補がメグリの迷宮まで来れるわけないもん。


「なんれ、コクちゃん、ちゃんと守ってくれなきゃらめでしょ。やっぱりコクちゃんのせいらもん、それれその人たちろうしたの?コクちゃん、その人たち食べちゃってないよね?食べちゃったんらったらケイ、コクちゃんのおなかの中入って探してくるの」


「ふざけるな、我はここをねぐらとしているだけだ。あれを守る役目など、おい、話を聞け。おい、何をする、口に触る、このっ」


 コクちゃんの口に入ろうとしたところを思い切り吹き飛ばされる。

 どうやら食べてはいないらしい。


「そもそもコクちゃんは聖勇者を食べちゃらめなんらからね。コクちゃんの役目は聖勇者の力を試すことなのに、コクちゃんは食いしん坊らからすぐにおなかが空いちゃうんらもん」


 コクちゃんは本当に食いしん坊なんだもん。

 毎日寝る前のおやつ用にわざわざこの大広間にスライムのリポップポイントを用意したくらいだ。

 いっつもなんでも食べてばっかりの食いしん坊さん。


「だから食っとらんわ!11年前に来たサルどもはそれなりの強さを持っておったので認めてやったが、今回のサルどもはとてもとても。あのような子ザルどもが力も無いのに忌々しい悪知恵で我を傷つけるなど我慢ならん。塵一つ残さず消し飛ばしてやったわ。そもそも我が聖勇者の相手をしてやるのは唯の暇つぶし、役目などではないわ。気に入らんやつなら、おい、だから話を聞け」


 コクちゃんが何か言ってるけど、どうでもいいことなので無視して、わたしはどうすればいいか必死に考えていた。

 どうやらコクちゃんは負けた腹いせに勇者っぽい人たちを消し飛ばしちゃったらしい。

 すぐに人を殺しちゃう悪いコクちゃん。

 確かによくよく見ると、コクちゃんの体は焦げだらけ、穴だらけでボロボロだ。

 よっぽど手酷くやられちゃったんだね。

 ボコボコにされちゃったコクちゃんを見ていると、可哀想になってきた。


「残念なコクちゃん、やられちゃったんらぁ、、、」


 思わずそんなことを呟きながらも、その勇者っぽい人たちに興味が湧いてきた。

 だってまだ聖勇者でもないのに、すっごく強いコクちゃんをやっつけちゃうなんて、すっごくすっごいの。

 これなら聖勇者に選ばれること間違いなしだよね。

 だったらすこーしだけ順番を変えて、先に天恵のポーションを授けてもいいんじゃないの?

 ということは、わたし悪くないよね。

 うん、そういうことにしよう。

 だってちょっと天恵のポーションを渡す時期が変わっただけだもん。

 だから大丈夫、だいじょうぶかなぁ?


 とにかく、これで行き先は決まった。

 コクちゃんに消し飛ばされたのなら、カムナ教会の中央大寺院の回帰の祭壇で復活してるはず。

 なら、すぐにカムクラ王国のカムナ聖都に行けば、その勇者っぽい人たちも見つかるし、天恵のポーションも返してもらえるの。

 わたし、すっごくすっごい頭いい!

 これで怒られなくて済むの。


「負けとらんわ!誰があのような子ザルどもに負けるか!そういえば、あの子ザル、一度消し飛ばしたのに、おい、話を聞け!まだ話は、、、」


 コクちゃんはまだ何か言ってるけど、急がないとカムナ聖都から出て行っちゃうと探すのが大変になるの。

 急いで飛んでいくの。

 急いで急いでカムクラ王国のカムナ聖都に行くの。


 第2章のヒロイン、ケイ登場!

 その正体は果たして?

 そして食いしん坊疑惑の巻き起こるアホの子はどうなる?


 次回 第31話 『カムロ村』


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