表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

目覚めから始まる変化。

 さて、「起きてほしい」だなんて思ってはいたが、いざ起きてもらうと気まずい空気を作り出してしまうものだ。

 寝ていたベッドの上には、銀髪 碧眼へきがんの女の子が座って、床に座る俺を見つめているのだ。

 だが今にでも知りたいことがある。『なぜ、隕石(あそこ)にいたのか。』


 勇気を振り絞り、声をかけることにする俺だったのだ。


「こんばんは」


 ―――何を言ってるんだ俺は。何故(なにゆえ)「こんばんは」で御座るか。

 いやなんで御座るで御座るか。御座る御座る御座る御座る御座る・・・・・・。

 おっと頭が回りすぎて頭が追い付いていないようだ。ほらもう矛盾してるじゃん。


 ――あの――――あの?―――

 そんなことを考えているうちに声が耳元に入っていく。


「あ、あの・・・」

 ふと気が付くと、目の前に俺の顔を伺う少女がいた。驚くことさえもしなかった。

 そんな感じで、やっと普通に話すことになったのだった。


 ◆


「ふむ?」


 理解したが、理解していない。まさに『矛盾』という言葉を説明できるような感じだが本当にそれなのだ。

 言っては現実的ではないのだ。その彼女の言っている内容が。


「もう一回、説明をお願いできる?」

「え、ま、またですか・・?」

「うん。本当によくわからない。」

「・・私はセルフィシアという国から来た者です。」「セルフィシア。」

「移転魔法に失敗したのか・・・」「移転魔法。」

「目覚めたらここにいて・・・」「目覚めたら。」


 初めて聞いた用語を復唱してみるが、相手は違和感もなく普通に喋っている。

「え、えっと・・・ここは、どこでしょう?」

 一瞬それを聞いてみては、『何言ってんだこいつ』と感じてはみたが、この子が本当のことを言っているのならば所謂『異世界転生』なのだろう。嘘だと思いたいが、隕石で発見した女の子なんて只者ではない。

 信じてみるのもまた一興だろう。


「その『移転』に失敗してからは記憶はないの?」

 その質問に対して、少し考える彼女の姿はあったが、どうやら覚えていないらしい。

「本気か・・・」

「はい・・・」

 よく見れば結構申し訳なさそうにこちらをチラチラとみている。

 ここが人の家であるということは理解できているようだ。


「で、あ、あの、ここは・・・」そうだった、説明がまだだった。

「ここは・・・・・日本だよ。」

「ニホン?」

 おかしい、発音がおかしい。日本(にほん)二本(にほん)になってる。だが今はそんなこと気にしている場合ではない。

 言語が通じるので、日本というものも理解しているとは思ったが違うらしい。

 ラノベで『異世界転生もの』は沢山見てきたが、まさかのこちらが迎える側になるとは思わなんだ。


「・・・まあいいや。で、これからどうするかとか決めてるの?」

 詳しいことを聞かれるのは、今さっき目覚めた彼女からしたら頭を痛くすることだろうから、聞くのは野暮だと思って未来のことを聞くことにした。

「え、えっと・・・。」

 彼女はわかりやすい反応を見せる。決めていないらしい。

「じゃあさ・・・ここでしばらく泊まったりする?・・・はは、なーんちゃって。」

 ボケをかます俺にキラキラとした視線を向ける彼女。

 どうやら、本気(ガチ)でそれでいいらしい。


「大丈夫?わかってる?異性の家で多少一日は生活するんだよ?」

 これに対し、「うんうん」と首を縦に振る女の子であるがその国では、世の中では躊躇(ためら)いはないのだろうか。まあ日本人は世の中全体みてシャイではあるが、さすがに初めて会う人の家で生活するなんてどこの国においても断るべき案件であろう。

 少ししか疑っていなかったが、この子本当に『異世界転生』をしてきたのか・・・。


 ◆


「ここがお風呂。」「はいっ!!」

「ここがトイレ。」「はいっ!!!」

「ここが台所だね。」「はいっ!!!!」


 素晴らしく張り切った声で返事をしてくれるのだが、キラキラした目は絶対に変わらない。


「まあこの部屋に関しては、一通り説明できたかな。」

「ま、前から気になっていたんですけど・・・」

「ん?どうしたの?」

「この黒いものはなんですか?」


 電源ボタンが青く光るゲーム機『PL4』

 かつての日課であった『海を見ること』以外に、『ゲーム』ももちろんあった。


「これは、娯楽をするための機械だよ。まあやり方は教えてあげるよ。今度ね。」

「はいっ!!!!!!」


 未知の世界の中で、こんなに好奇心をむき出しにした子はかつてまで見たことはない。


 ◆


 それから3か月後。今に至る。

 コンビニでの仕事を終えてまあ長くもない家路を歩き、家につく。

 疲れた様子で部屋を開けるわけだが、その瞬間耳に入ったのは、ゲーム音とコントローラーそして・・・


「あぁーもぉー!!・・あれ?帰ってきた~?」


 銀髪碧眼。あの女の子の声だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ