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空から落ちてきた序章。

気付けばそこには『海』がある。

とても不思議なものではないだろうか?

水が「沢山」という言葉だけでは表現できないほど溜まってる場所。

海だけではなく池や湖も対象で、今では当然のように存在している。


海を見るのは趣味の次に好きなことで、波の音やその動きを見るのが特に好きだ。

静かな場所で、単に水がぶつかり合うそれはとても心を安らげてくれるものなのだ。

そうだな、例えば空から隕石が落ちてきたその後からも『海を見る』という行為は好きだった。

―――空から隕石が落ちてきた、その後も。



3か月前。

俺の人生を大きく変える出来事だった。

『隕石』が落ちてくるなんざ思いもしなかった。

いつも通りの日常で、いつも通り海を見に行く。

実質俺からしたら海はもう『家族』のようなものなんだ。一方通行(みがって)な思いではあるがそれくらい日常、習慣だった。


隕石が落ちてくる5分前の話。

なんだかいつもより海がざわついてる気もしたんだ。

「逃げて!」なんて、海が喋っていたのかもしれない。

それとも「いい加減に来るのやめろよ」?いや、さすがにそれは消極的か。ネガティヴな思考に過ぎない。

どうにせよいつもよりとてもざわついていた。


空から微かに光が見えてきたんだ。航空機ではない、またもや戦闘機やヘリでもない。

地球外生命体にしては、露骨すぎないか?

30秒、いや28秒後だったか。見るには十分すぎる光、燃えるその石はやっと俺の目に映った。

その瞬間は時はゆっくりと過ぎた。感覚の問題だが。

「早くも遅い」とはこれだ。


隕石(それ)が近付くと次第に海はもっと騒ぎ出す。

その最中に確信した。


――――海は『逃げて』って言ってるんだろうな。



勿論、気付いたころにはその風圧を食らっていた。

海、地上、そして隕石がぶつかる音は遠くまで聞こえるだろう。

近くにいた俺は、吹き飛ばされ風圧に負け倒れていた。

隕石がなぜ落ちてきた、などではなく何よりも『なぜ痛みを感じない。』かが疑問だった。

身体中を見ても、傷はない。

身体を見ながら立ち上がる。

歩けるし、五感も恐らく、大丈夫・・・機能してるはず。

次に気にするべき事項は?

昨日食べた夕飯?明日の朝飯?それか、運勢?

いいや、目の前に燃え盛る場。


爆発が発生し、初めて見る人物に「ここには海があった」と説明しても信じてもらえないであろうほど、地形は変わっていた。

なぜ生きているのかさえも、疑問である。

目を凝らす。隕石は所々炎を身に着けている。触れると反射的に出すあの「あつっ」という言葉を言う時間さえも貰えず火傷を起こすだろう。

炎、炎、炎、そして・・・女の子。

目を見開いた。何故?そこには、少しだけ、本当に少しだけ汚れた服を着た・・ふむ、女子高生くらいだろうか。それくらいの女の子が横に倒れていた。



「お、おい!!」

女の子から発されたものではないのはわかっているのだが、女の子に近づこうとするだけで周りの炎が熱気で邪魔をする。大きな声を出してとりあえず気付いてもらおうじゃないか、と試みたはいいもののぐっすりと眠っている。

彼女がなぜここにいるのかさえも謎でならないのだが、早くしなければ火傷をするかもしれない。それか、もうしているのかもしれない?

そんな己の思考は、早く助けなければいけないと足を動かそうとする。


熱気にも耐えて、石にも触れないようにと、彼女に近付く。

やっと、といった感じで触ることができる距離まで近づくことができた。

倒れているからといって、襲うなんて理性をなくした男のような考えは出てこなかった。

助けなければこの得体のしれない女の子はもしかして死ぬのかもしれない。


「大丈夫か・・!?」

耳元で話しかけると彼女の体はピクりと動き、次第に力を得たかのように動き始める。

「ま、まあ急ぐな・・!とりあえず自由にしてろ。」

「・・が・い・・」

彼女の口から出たその初めての声は、とても弱かった。

微かにしか聞こえなかったその声を聴き返す。

「なんだ!」

「お、ねがい・・・」

「お願い・・?」

そういった俺の肩を彼女は強く握る。

「私を・・匿ってください・・」

弱々しいその声を合図に彼女の眼は、ゆっくりと開いた。

銀髪碧眼の女の子はとても綺麗だった。


使命感に駆られた。こんな状態で助けを求める美少女。

前世に仲が良かったか、あるいはとんでもない事情でない限りそんな展開になることはないだろう。

初対面の少女を背負(しょ)う。


◆◆


それから一日。

住むマンションの一室にあるベッドに彼女は横になっていた。

その近くで座り、テレビを見る。

テレビの内容は、落ちてきた隕石の話題ばかりで例えば「落ちてきた隕石はすごい価値がある。」だったり「隕石はどこから落ちてきたか、感知することができていなかった。」だとか。

急に隕石が降ってきたなんて言い出すのだろうか。


改めてそのテレビに向かってため息をはいて、片手近くにあったリモコンを手にし赤い電源ボタンを押す。

それに従うように光を放っていたテレビは一瞬で一面黒になる。


「こいつはどうしようかねぇ。」

そんな独り言をこぼしながらベッドに横になる彼女を見る。

可愛い、が第一印象であるが案外こういうのは生意気だったりする。推測に過ぎないが。

彼氏がいてもいいのだが、銀髪碧眼というのがどうにもこの世の中では異端だったりする。

とりあえずあれだ。寝よう。

あれからベッドは占拠されたし、ネットで隕石について調べていて24時間以上も寝ることができなかった。

とりあえず寝る。それだけ。床で寝るのも時にいいだろう。『腰が痛くなる』?知らない。寝るんだもう。


◆◆◆


まああんな隕石如きで海はなくなったりしないのだが、近場で、ゆっくりと海を見れる俺のお気に入りスポットはあの隕石によって壊された。直るのではあるが、長い期間俺のこれまでの日常は少しだけ変わる。

「仕方ない」という解釈でいいだろうか。


俺の脳は完全に目覚めた。あとは目を開けるだけなのだが、やはり起きたときには瞼を開けるのが苦痛である。

ゆっくりと瞼を開ける。目の前は、どこかで見たことのある少女がこちらをキョトンとした顔で覗いていた。

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