僕と天音が付き合うまで その5(いとこの美智瑠のアドバイス)
3日間のログイン停止……
運営からの警告メールが来てしまった……次回やったらBANしますと……
「今日から3日間ルナに会えない……うう、泣きたい」
学校からの帰り道、いつもなら嬉々として家路に着くのに今日は足取りが重い……
「私の生き甲斐が……今日から3日間も……」
でも昨日は遅くまでルナに慰めて貰った……ちょっと嬉しい……
いつもは学校の授業が終われば何はなくとも家に帰宅、すぐにパソコンの前に座る、でも今日はそれが出来ない……仕方なく駅前に寄り本屋でパソコン雑誌とゲーム雑誌アートオブドラゴニアの特集号を買って帰る。
「え? 誰かいる? 外国人!?」
家の前まで来ると玄関の所で銀髪で女子の制服姿の女の子が立っていた……え? 誰
私はその場で立ち止まり、歩けなくなる……家の前に誰かが立っているっていうのが凄く怖い……
私がその場で止まっていると、その子がこちらに気が付き笑顔になる……
なんだろう? 外国の人がうちになんの用だろう?
するとその子が……
「やあ、君が新しい妹さんかな?お母さんから聞いてないかい? 誰も居なくて困っていたんだ」
「日本人?」
銀髪碧眼で白い肌、日本人離れした顔立ち、妖精の様な佇まい……本当に?
「ん? そうだぞ、僕は正真正銘日本人だぞ!」
「ぼ、僕!!」
え、男の人? えええええ
私は混乱した、え?怖い……でも女の子っぽいし、スカート姿で制服着てる……え?え?
「美智瑠? なんだ美智瑠じゃん、どうした」
後ろから兄の声!!
私はびっくりして大声を出してしまった。
「わ、私の後ろに立たないで、変態いいい」
「へ、変態だとおおおお」
私はその美智瑠さん? を突き飛ばし家に駆け込んだ……
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ああ、またやってしまった……なんでこんなに臆病になってしまったんだろう……突然の出来事に弱い……凄く臆病……人を信用出来ない……
私は部屋に駆け込み本と鞄を机の上に投げ捨て、制服のままベットに寝転がった……
「私このまま一人寂しく生きていくのかな……」
涙が出てくる、こういう時はルナと話して気分転換を……ってログイン停止だった……
「ふえ~~~~んルナあああああ」
いつも嫌なことはルナと話して忘れる。でも今日は出来ない……頭の中にぐるぐると嫌な思いが廻る。
「そういえばさっきの美智瑠って子は誰なんだろ?」
兄の知り合い?私の事を妹って言ってたし結構親しい間柄?
「彼女?」
凄く綺麗な子だった、銀色の髪、白い肌、細い身体
兄と並んだら凄く目立つ美男美女カップル……私と兄が並ぶより全然合ってる……
「って私なに考えてるのよ! あいつと並んで歩くなんてあり得ない!」
それよりもあの子僕って言ってた……スカート履いてたし制服だし……
ひょっとして男の娘?
つまり、兄の……彼氏?
みちるじゃなくてみつるって言ったのかも……
「ええええええ、でも……ありえる………………えへへへへへ」
は! いけない! なにカップリングとか考えてるの私! どっちでも行けるんじゃって違うの、兄のヘタレ攻めとか考えてない!!
『コンコン』
ノックの音が聞こえた!!
「だ、誰!!」
「僕、美智瑠、天音ちゃんちょっと話しがしたいんだけど、良いかな?」
「だ、だめ!!」
男の子かも知れない人を部屋に入れるとか無理!!
「うーーん、じゃこのまま聞いてくれ、僕は君のいとこになった渡ヶ瀬美智瑠だ、お兄さんと同じ高校1年花の女子高生だ! よろしく!!」
「女子高生?」
女の子だったか……僕っ子って奴かな? そして……いとこ?
私は立ち上がり扉の鍵を開けそっと扉を少しだけ開く
「やあ! 天音君」
彼女は満面の笑みで私を見ている……凄く綺麗、言われてみれば少し兄に似ている……
「下に降りてこないか? 3人で話そう」
何バカな事を言ってるの、話せるわけないじゃない
「無理……」
美智瑠さんは凄く残念そうな顔をする、どんな顔をしたって無理な物は無理なの!
「そうか、じゃあ僕と少し話そうそれならいいかな?」
「少しなら……でもここで……お部屋に入れるのは嫌……」
私は扉を大きく開ける、美智瑠さんの全身が見える、凄くスタイルも良い……ガリガリの私と比べても細く見える、でも運動をしていたのか整った身体……
顔も良くてスタイルも良いとかズルい……
「今日は君のお母さんから着物を貰えると聞いてね、お邪魔してしまった、すまないね」
「ううん、お婆ちゃんが着物道楽してたから……古いの一杯あるし、お母さんも昔着てたから」
引っ越して荷物になると悩んでいたから親戚に要るか聞いて回っていたのは知っている……
「そうか、朋が聞いていたらしく、用意してあったのでそれを貰って行くよ」
「朋……あいつとは仲が良いの?」
「うーーん、小さい頃会ったきりだよ、僕は去年こっちに引っ越して来たからな、朋と会うのは本当に久しぶりだ」
「そうなんだ……」
「君たちは仲が悪いらしいなさっき朋が下で悩んでいたぞ」
「別に……興味ないだけ」
嫌いっていうのはなんか悔しい……興味ないって言いたい……
「まあ兄妹になったばかりじゃ無理もないか……僕の友達に凄く仲が良い兄妹が居てな、もうこっちが恥ずかしくなるくらいの二人で、君たちとは正反対な」
「あの!!」
「うん?」
「あの……そろそろ良いですか?私受験生なんで勉強したいんですけど!」
仲が良い兄妹の話しなんて聞きたくない……
「あ、ごめんごめん、じゃあそろそろ帰るよ、お母さんにありがとうって言っといてくれ」
「はい……じゃあ」
私は扉を締め鍵を掛ける。
そのまま再びベットに倒れこむ、美智瑠さんか……イイ人っぽいけど少し天然?私と兄を一緒にするとか空気読めないのかな?
受験って言って追い返しちゃったのは少し悪い気が……でも……
嘘は言っていない、勉強はしないといけない………
ただ家から遠くの学校に通うのは怖い、でも一番近い高校は兄が通っている、そしてそこなら今の学力でも余裕で受かる……
「女子高が近くにあればいいんだよな~」
男子は今でも苦手で話すことも出来ない……
「いつかルナに会ったときに話せるようになってなくちゃいけないかも……」
女子高じゃいつまで経っても男性恐怖症は治らないんじゃ?
兄と同じ高校が一番なんだけど……凄く嫌……でも……あいつ私との仲を悩んでるとか言ってたって……
ああ、また嫌な考えがぐるぐると……
ルナと話したい、ルナに会いたい……ルナってどんな顔してるんだろう……
ああ、早く3日経たないかな……ルナ……話したいよ~~~
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「うーーん駄目だね」
「だから言ったんだよ」
「あははははは」
「あははじゃないよ、美智瑠ってそう言う所ホント変わらないよね」
「いや、まあ彼女は本当に取り付く島もないな……うーーん」
「僕もこういう関係で居るのはお互い良くないと思ってるんだけど、ああいう感じなんで、なかなか改善出来ないんだ……」
「お義母さんはなんて?」
「放っておけって……」
「なにか理由でもあるんじゃないのか?」
「前の学校でなんかあったらしいんだけど、教えてくれないんだよね」
「ふむ……それが彼女を自分の殻に閉じ籠めてしまった原因なんだろうね」
美智瑠は子供の頃からこんな感じで僕に構ってくる。同じ年なのにお姉さん気取りでいる……ちょっとイラっとしたときは、美智瑠の弱点を突けばいいんだけどね、では……
「そういえば、こっちに引っ越して来たってことは、愛しの君には会えたのかい?」
子供の時に友達になった子に昔から恋をしている美智瑠、そんな昔の奴に会える分けないと僕はいつも逆襲していた。
前ならそこで落ち込んだり、泣いたり、怒ったりしていたんけど、でも今日は違った……
「え!!」
美智瑠の白い顔が瞬時に真っ赤になるって……えええええ!!
「会えたの?」
僕が聞くと美智瑠はうつ向き、コクコクと小さく頷く……
「本当に?」
「う、うん……会えた……同じ高校だった……」
「え、えええええええええええええ!」
「うん……僕もビックリした……」
「そいつは覚えていたの?」
「うん……」
美知留の顔がさらに真っ赤に、トマトかってくらい真っ赤な顔になる。色が白いので本当に真っ赤でヤバい。
「それって……凄くない?」
「うーーん、そうかな? あいつの地元だし……でも同じ高校だったのは本当にビックリした……」
「凄いよ……凄いよ美智瑠! 運命だよ、もうそれ運命だよ!! 神様のイタズラとしか思えない、そんな偶然って……」
「え? そうかな……、そうだよな!!」
「そいつも凄く運命と感じてるんじゃない? 美智瑠の恋が実るかも、て言うかもう付き合ってとか言ったのか?」
僕は興奮気味で美智瑠に問いかけるとさっきまでの赤い顔がスッと元に戻る……え?
「あいつは僕の事を男友達としか見ていないんだ……」
一気に落ち込む美智瑠……そうか、そうだった、男の子として会っていたんだっけ……
「そうか……でも今の美智瑠なら女の子として見て貰えるんじゃ?」
「うん、でも僕は今の関係が嫌いじゃない、むしろこの関係を壊したくない……」
その言葉を聞いて、僕は自分とリン、美智瑠とその彼がだぶって見えた。
「そうか、うんわかるよ」
僕もリンと今の関係が凄く好きで楽しい、壊したくない……
「でもな、最近思ったんだ……前に進むには目の前の大事な物も壊していかないと進めないんじゃないかって……」
「え?」
「うん、このままで良いけど、でも諦めるのは嫌なんだ……だから今日ここに来た」
「え?」
「僕はやるよ! 僕が女の子だって分からせる、告白だってする。着物でも水着でも何でも着て女の子だってアピールする! そのチャンスを生かすなら何だってしてやる、それで前に進めるなら……」
美智瑠は僕に向かってそう熱く語る。昔と違う、以前の美知留とは……そいつの話しをするだけで落ち込む美智瑠はもう居なかった……でも僕は、僕とリンの関係を壊したくない。意地悪とは思ったが一番肝心な事を聞いてみたかった。
「でも……それで、そいつとの関係が崩れたら? 嫌われたら? 拒絶されたら?」
本当に僕ってどうしようもない……でも今の美智瑠の答えは僕の希望になるかもと思ってしまった。
「ふふふ」
すると美智瑠は笑った。凄く可愛い笑顔で思い出すように笑う……
「え?」
なんでそんな事を聞かれて笑ったのか、それを聞きたく僕は美智瑠の言葉を待った……
美智瑠は一度目を瞑り、そしてゆっくり思い出すように話し始める。
「あいつはね、物凄く優しくて、物凄くお人好しで、そして僕のヒーローなんだよ、だから僕がどう言おうと、関係が無くなる事はない……ないと思う。今の関係が変わる事はあるかも知れない……、でもあいつが僕を嫌ったり、拒絶する事はないよ!」
「本当に?」
そう言われても、僕は疑った、そんな事言っても本当にそうなるとは限らないだろうと……
でも美智瑠は一つの迷いも、戸惑いもなくキッパリと僕の目を見て言った。
「ああ、僕はあいつを……裕を信じている! 信じられない奴の事を僕は好きになんかならないよ!!」
「!!」
その言葉に僕は衝撃を受けた……信じられない奴を好きとは言えない……確かにそうだ……信じる、好きな人の事は信じてあげる。いや信じなくてはいけない、信じられない人を好きにはならない……
僕は…………、僕はリンを…………信じる!……だって、大好きなんだから!!
「そうか、そうだよな……美智瑠、ありがとう!!」
僕は美智瑠に感謝した……本当にありがとうと……
「ん? なんで礼を言われるのかわからないが、どういたしましてって言っておくか」
そう言うと美智瑠は笑った、凄く可愛い笑顔で……
その笑顔は、リンが居なかったら惚れてしまいそうな位の凄く可愛い、最高の笑顔だった……




