表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘイト! Two people of the same name are Hate  作者: 穂積 蓮
200年戦争 恐竜種編
6/7

使途の素顔

「入るよ。義経爺さん。」


シドの話を断ち切り、入ってきたアラン。そのあとからシャロンが、ご機嫌で入ってくる。・・・何か食ってる。コイツ食い物につられたか。


義経「シャロン。外は良いのか?」


シャロン「アランが命令したニャ。手を出すなって。」

尻尾をパタパタさせてシャロンが答える。


コイツは言葉が足りない。何かを説明させるには不向きだな。アランが、兵士に命令したんだろ。手を出すなと。意味が伝わらない片言の言葉よりもシドは、ネコ耳巨乳娘そのものが気になるようだ。エロさは健在だな。シドよ。


シド「アラン。その子は誰だ?」


アラン「ああ。コイツはヘイトの使途でシャロン。

    知らなかったか?普段はネコに化けてるからな。」


シド「あの・・バカでっかいネコか・・・。」


シャロン「バカでっかいとは何だニャ~。カワイイと言うニャ。」


義経「ネコの姿は魔力制限されてるイマジン世界だけだ。」


シド「そうだったのか、ならばゾウも人型か?」


義経「それでも長官かよ。ゾウの名前はトニー。人型だ。

   魔力制限されているイマジンでは二人とも

   周りに遠慮して動物になっているだけだ。

   ちなみにトニーとシャロンは俺の命令にも従うから

   変な気は起こすなよ。外のレールガン以外は

   こいつらの敵にもならないからな。」

こんな至近距離で使ってもレールガンから発射された弾頭は、大気圏外に飛び出すだけだが、その衝撃波で半径5㎞は蒸発するだろう。


シド「お前の命令に従うだと?それは無いだろう。

   第一、お前には魔力がない。

   魔力無くして使途を従わせる事は不可能だ。」


義経「役人になってから更に、頭が固くなったな。

   俺が使途を呼び出せば解るだろうよ、トニー!出てこい。」


トニー「お呼びでしょうか? 義経様。」

実体化したトニーはアラビアンナイトから飛び出たような姿でターバンを撒き、刺繍入りのベストと、真っ白の絹のようなゆったりとしたパンツに、細身で筋肉質の青年。自由奔放のネコ耳、巨乳のシャロンと正反対の従順な使途だ。もっともシャロンも自分では従順で、ご主人さま思いの使途と思ってるようだが。


義経「シドとアランにお茶でも出してくれ。それとシャロン。

   ヘイトを起こして、ここに連れて来てくれ。

   あっ。静かに起こせよ。」


トニー「それならヘイト様にも、お茶を持って行ってくれ。

    ハーブティならヘイト様も心地よく、お目覚めになるだろう。」


シャロン「??・・・!。いい考えニャ~。ハーブティーなら

     ヘイト様もご機嫌になるんだニャ。ホントだにゃトニー!」

なにか、間違えてるように思えるが・・・。まあ、大丈夫だろう。


シド「そんな・・・ありえん。

   君達はヘイトの使途のなのに、なぜ?

   義経の命令を聴くのだ?」

トニーは答えて良いものか困惑し、こちらを見る。俺はうなずき、トニーに説明するように促す。


トニー「我々使途は主人からの魔力供給で生きています。

    主人以外からの命令を聴いても、命令者から魔力供給を受けられ無いばかりか

    命令を実行するために主人の魔力を消費します。

    それは魔力を無駄に消費し主人共々、自滅することを意味します。

    しかし、私とシャロンは義経様の身を守る事と

    義経様の命令に従うことでも、ヘイト様より魔力供給されるのです。」


シド「なるほど、強力な魔力を持つ、ヘイトだから出来る事か。」


義経「解ったかシド。それよりもヘイトが起きて来る前に

   もう少し話を聴こうじゃないか。

   自爆装置位にしか使えないギミックソルジャーにレールガン。

   ただ事ではないだろう。ましてや大型恐竜種やドラゴンと言っても

   イマジンで戦闘経験豊富な第三、第四世代の敵ではないはずだ。

   まあ、奴らが魔力でも持っていれば別だがな。」


シド「それが、持っているんだよ。魔力を。」

驚きで言葉が出ない俺をシドは気遣う事も無く話し出した・・・。


大型恐竜種と初めて交戦したのは第三世代と純魔族の混合部隊だった。始めは大型恐竜種に驚き、劣勢に立たされた混合部隊だったが、純魔族の火炎雷とライゾルで大型恐竜種を壊滅まで追い込んだが後方から現れた、新手の大型恐竜種に返り討ちに遇ったらしい。


新手の大型恐竜種は、たった3体だけだったが、溶岩と岩石が飛び交う火炎雷の中を平然と歩いて来たらしい。しかも魔力攻撃を使う上に、小型種を統率し混合部隊を翻弄した。トドメはドラゴンだった。大型種はドラゴンをも配下に置いているらしく、大型種の命令で飛来したドラゴンが火炎を吐き、混合部隊は壊滅状態に追い込まれる。知里尻になり戦意を喪失した混合部隊に興味を失った大型種は、ドラゴンを呼び寄せ何事かを命令した。するとドラゴンは防護壁を軽々と飛び越え、数千度の火炎を武器に外縁地区に甚大な被害をもたらし、あざ笑うかのように防護壁の中えと消え去った。


小型恐竜種ばかりか、今まで姿さえ確認できなかったドラゴンをも統率する知力を持ち魔力まで使う大型恐竜種は確かに脅威だが・・・。


義経「話は分かった。だが、それだけで、お前は核弾頭代わりに亜光速レールガンを

   持ち出し、ヘイトが従わなければ、ご近所様を蒸発させるつもりか?

   ヘイトが従わなければ人類は死滅するから半径5㎞くらいなんでも無いと?

   ならば、防護壁の中でぶっ放せばいいだろうよ。レールガンをよ。

   確かに、知能と魔力を兼ね備える大型恐竜種にドラゴンは脅威だが

   暴走も良い所だ。考えなお・・・。」

話の途中でシドが話し出す。


シド「レールガンで打ち抜くのは簡単だが、地球は崩壊する。

   防御壁の中でレールガンを作動させれば、粗悪宇宙コピー機は

   蒸発するかも知れないが、残ったワームホールが何を起こすか

   予想できない。要するに・・・打つ手が無い。

   もっと早くに、お前に相談しておけば良かったと後悔しているよ。」

表情が曇った。何をそれ程まで後悔している?短い沈黙のあと、シドは続けた。


シド「半年前に粗悪タイムマシーンの向こう側をサーチすることに成功した。

   サーチ結果を信じろとは言わないが、恐竜種の生体反応は300億を超える。」


義経「馬鹿な!人類の最盛期でも90億だぞ!間違いは無いのか!」


シド「間違いない。・・・但し、サーチ出来たのは此方から確認できる半球だけだ。

   サーチ出来なかった裏側には、同じ数の恐竜種が居てもおかしくない。」


義経「600億・・・。」

それ以上言葉が出なかった。600億。そのすべてが民間人などいない戦闘員。狭すぎる。それだけの数が生き延びるだけの食物は地球サイズでは賄えない。ならば彼らは殺し合うのが日常になるのも頷ける。増えすぎた人口は、容易に殺し合いを起こすだろう。原因は子供でも解る。食うためだ。少ない食料を奪い合い、殺し合いが始まる。それでも、600億が生存すると言うのか。ならば、この世界と繋がった途端に食い物を求め弱者は逃亡するだろう。・・・??? 弱者だと。


シド「察しが良いようだな。

   我々の世界と繋がった時にあふれ出した恐竜種は

   あちら側の世界では、弱者に過ぎないだろう。

   ドラゴンまで操る3匹の大型種でも

   弱者の部類に属するのは容易に想像できる。」


そんな・・・。小型種だけでも手を焼いているのに、こちら側に来た恐竜種は弱者だというのか?

だとしたら、ヘイトでも手に負えない化物がゴロゴロしている可能性は大きい。俺の思考を遮り、今まで黙って聴いていたアランが思いつめたように話し出す。


アラン「義経爺さんよ。問題はそれだけじゃないんだよ。

    親父はヘイトと義経爺さんが、『こちらの要求をのまなければ』と言ったはずだ。」


義経「・・確かに、そう言ったが・・・。俺になんの関係がある?

   俺は粒子論を齧った技術者でしかない。戦闘とは無縁だ。」


アラン「3匹の大型種は剣を持っていた。って事は、剣を作る技術を有するとなる。

    それだけでも驚きなのだが、魔力制限がない現実世界で使途が変化した

    生体ソードもカーボンナノチューブの盾でさえ、あっさり切り裂く剣だ。

    その剣は振り回すだけで光を発した。剣や盾を切り裂く時も同じだ。


    振り回すだけで輝き、全てを切り刻む剣。もう・・・解っただろう。

    クォーク結合キャンセルシステム。これに触れた物質は全て分解され

    光に変わる。アンタが作り出したアルゴノートソードだ。」


義経「そんな・・・馬鹿な・・。ありえん。

   恐竜種が持っている・・だと。

   あれは、地球の重力場に捉えられ、触れる事さえ出来ないはずだ!

   そうだ、観測結果では今でも恐ろしい程の熱に耐え・・・。

   アルゴが3本・・ありえん。」


シド「解っている。我々とて馬鹿では無い。お前の作ったアルゴは

   今でもコアに鎮座しているのは観測済みだ。だから、まずい。」


義経「作った・・のか!アルゴを作ったのか!

   そんな訳はない。作っただと?アレは・・」


「うぎゃ~あ!アッチ!なんだ? シャロン~!!」


突然の悲鳴。しかも、ヘイトの声だ。あいつの悲鳴なんて何十年ぶりだ?シャロン・・・何をした?


シャロン「ゴメンなさ~い。トニーが・・トニーがぁ!

     ヘイト様が喜ぶと言ったからぁ~ニャ。

     ハーブティーを持って行ってあげたニャあ。」


言訳をしながらシャロンが勢いよく走り込んでトニーの後ろに素早く隠れ、少し遅れて上半身裸のまま、毛布をタオル代わりに耳に当て、ヘイトが入ってくる。逃げ込んできたシャロンとは対照的にヘイトは、逃げるシャロンを追いかけようともせずに、ゆっくりと歩いてくる。その顔には怒りは無く、憐れんだようでもあり、あきれ果てたようでもある、微妙な表情が伺える。なんだ?揉め事はもうごめんだ。何をした?


ヘイト「義経爺さん。新しい端末くれ。

    シャロンのやろ~のせいで壊れちまった。」


シャロン「シャロンは悪くないニャ。トニーが言ったニャあ。」


???解らない。ただでさえシャロンの説明は意味不明なのに、パニック状態では尚更不明だ。ヘイトは怒りもせず呆れ、トニーを盾に隠れているシャロンを目で追っている。一応、侍従関係にある2人だが、その関係は微妙でチョコチョコ揉め、その争いは何の前触れもなく巨大化する。30年前には、この二人の痴話喧嘩で家を破壊された・・・。あの時の事は今でも腹が立つ!


       ****義経の回想は何故かヘイトのクッキーが、結びつく****


家ネズミを捕まえようと、家中を駆け回るシャロンに、イラついたヘイトが、まるで近所の子供に軽く注意でもするかのように『シャロ~ん!うるさいぞ~。』と、にこやかに注意しながら、あの野郎・・・さらっとボム(小規模爆裂魔法)を食らわせやがった。サラッとボムを食らい驚き一旦は、おとなしくなったように見えたシャロンだったが・・・。プルプルする事、数秒。


・・・あのバカ猫!腹いせにギガドム(手加減なしの爆裂魔法)を放ちやがった。勿論、家は柱数本と床を残しバラバラ。野原と化した我が家のリビングに黒焦げになったヘイトと俺。それに、いつの間にか実体化し俺を守ったトニー。トニー・・・守ってくれたのは、有り難いが・・・家、壊される前に・・・。


『それ・・・やりすぎだろ。』やっとの思いで口を開いたヘイトに、シャロンは逆切れ。まさかの、ギガドム二発目を繰り出しやがった!その衝撃でわずかに残った柱も吹き飛ばされ、あっけに取られる俺達にシャロンがまともな事を言った。


『家ネズミは、絶滅危惧種ニャ!保護しないといけないニャ。』

てか、家ネズミ絶滅させたのギガドムだろ?お前のギガドムな。


その言葉を聞いたヘイトが切れたようでユラリと動き、悪意に満ちた半笑いでミラーウォール(防御と攻撃、威嚇を兼ねた対人戦闘用万能魔法)を発動し戦闘態勢に入るが、シャロンの一言で腑抜けになった。


『ご主人様に、は愛がたりないニャ!』


シャロン。私は、今でも変わらずこう思っている。確かにヘイトには愛情が足りないかもしれん。が!お前には手加減が足りん!とな。まあ~なんだ。今の様子だったら、家を壊される事はなさそうだな。


       ****5分前からの回想 シャロンとヘイト****


トニー「シャロン。お茶が入ったぞ。ヘイト様に持って行ってくれ。」


シャロン「お茶?・・・?違うニャ!シャロンが持って行くのは

     ハーブティーにゃ!お茶じゃあヘイト様は喜ばないニャ!」


トニー「・・・。悪かった。これはハーブティーだ。」


シャロン「さっき、お茶って言ったニャ!」


トニー「うっ。しまった。でっかいネコ並みの脳みそしかシャロンには無い。

    ヘイト様はシャロンの脳みその半分は、やさしさで出来ている。

    が、あとの半分はキャラメルだ。と、言っていた・・・。

    アホのシャロンにハーブティーと、お茶が同じだと教えるのに3日は掛かる。」


シャロン「何か言ったニャ!」


トニー「・・・。!。すまなかった。

    このお茶は義経様達に持って行ってくれないか。

    その間に、ヘイト様用のハーブティーを準備しておくから。」


シャロン「解ったニャ!」


義経様達にお茶持ってったニャ。ヘイト様のハーブティは出来たかニャ~。おおっ!さすがトニー!さっき義経様達に持って行ったお茶とは、格段に違うニャぁ。特に、香りが違~う!。これならヘイト様も喜んで、ご機嫌になるニャ!


トニー「ああ、そんなに香りが違うか・・・お前、猫だよな。」


シャロン「そうだニャ!」


トニー「ああ、悪かった。ハーブティーは熱々だから注意して

    持って行ってくれ。」


シャロン「ヘイトさま~。ハーブティですニャぁ~。

     起きるニャぁ~。」


・・・。ハーブティー持って来たのに起きないニャ。???なぜ?もしかしたら、ハーブティーを持っているだけじゃダメなんだニャ!ヘイト様にあげないといけないんだニャ。でも、このハーブティー熱いニャ。そいえば・・・さっきトニーが熱いから、ゆっくりと言ったニャ。ヘイト様に、ゆ~くり~と、かければいいんだニャぁ。最初は優しく・・・。


シャロン「ヘイトさま~。と~っても熱い、ハーブティーニャぁ~。

     熱いから、少しずつ耳から行くニャあ!」


ヘイトはシャロンに熱々のハーブティーを耳に注がれた。

              ****続く****

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ