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Knight Of Dragon  作者: 愛兎麦丸
第二章
20/28

D-XV.鬼ヶ島③/being repaired

 リョウヤの腕試しをする為の試合は、提案され承諾された翌日の昼頃には決行することになっていた。

 朝のうちにエタフルにそう告げられたリョウヤは、その時に一緒に渡されたおにぎりを食べ終わると、徐ろにKODのメニューを開いた。

 旅館だったであろう施設の離れの一室は、リョウヤ以外には誰もおらず、周囲にもひとの気配はない。


 昨夜、久しぶりに開いた自身のステータスを再び展開する。

 KODの主人公(プレイヤー)の基本ステータスは体、力、防、速、魔、精からなる。

 正確にはVIT(バイタリティ)STR(ストレングス)DEF(ディフェンス)AGI(アジリティ)MGI(マジック)MND(マインド)となり、VITが体力、STRが攻撃力、DEFが防御力、AGIが速度、MGIが魔法攻撃力及び魔法防御力、MNDが精神力及び魔法防御力、となっている。

 後半の二つに魔法防御力が存在している理由は単純だ。

 MGIの値は魔法攻撃力は数値分の能力を発揮するが、魔法防御力は七割しか発揮しない。そしてMNDでは数値が割り当てられた分の補正がMP(マインドポイント)にかかり、数値三割の魔法防御力が付与されるのだ。

 例を上げるとMGIとMNDがそれぞれ十の場合、魔法攻撃力が十、魔法防御力が十、マインドポイントが十となる。

 ただ実際にはレベルアップボーナスやスキル、職種などによって加減するので、そう簡単な話ではない。


 レベル五百に到達時点で一度ステータスの伸びが完全に止まり、六百から再び伸び始める。再スタートしてからの伸び方や入手ポイントは徐々に伸びていくのだが、それまでと打って変わって取得ポイントは格段に少なくなってしまう。

 それでもレベルが千二百を超えた時点での総獲得ポイントは――六千を超える。

 尤もメディアなどに露出、所謂"顔出し"をしているプレイヤーにおける高レベルは六百から八百代が主だ。

 上記のことに関与していないプレイヤーには、千代も珍しいが出始めているというのが実情だった。

 顔出しプレイヤーは千代に乗ったプレイヤーを"ガチ勢"や"超高レベル帯"と評している中、レベルが千二百六十七にまで至っているリョウヤは異質なのだろう。とは言え本人にしてみれば「うちのギルメンは皆レベル千超えてるし……」と言うほかにない。

 何より団長(ギルドリーダー)のレベルは千プラス四百を超えている。

 リョウヤとは百五十以上の差があるのだ。


 時間がものを言うのはどんなゲームでも言える。

 それでもKODOのプレイ人口が増え続けている理由は、運営が初心者向けのイベントにも力を入れているからだろう。

 具体的に言うのならば、文字通り初心者向け難易度のイベントや初心者限定イベント、初心者限定ランク戦と言ったところだが、何より珍しいのはランキング戦のトーナメント分けである。

 レベル帯毎に行われるので、レベルの低いプレイヤーでも上位を狙えるようになっているのだ。当然、高レベル層とは賞品が異なるが、レベルを考えれば優秀な物が多いし、大抵の場合が順序よく強化していけば高レベル層の賞品と同じ物になるように設定されている。

 武器や防具、スキル、職業、それらの装備には必要なステータスというものがあるので、それらを踏まえると低レベルプレイヤーには寧ろありがたい仕様のはずだ。

 と、ここまではあくまでゲームの話である。


 本来ならステータスの数値が書かれている筈の場所に"being repaired..."という文章が点滅していた。


(修復中……)


 表記されている文の意味は簡単に分かる。

 だが何を? そう考え、すぐにステータスをだと理解した。

 昨夜、調子を確認しておこうと思い換装した大剣だったが、両手でも重さを支えきれずに落としかけたのだ。地面に叩き付けてしまう寸前に消すことが出来たので、大事にはならなかったのが幸いだったと言える。

 その際、地面に寝かせるように大剣を換装し、それを持つことが出来ないという異常に気が付いたというわけである。


 笑えない話だ。

 リョウヤは自分の基礎ステータスをきちんと把握している。スキルや職で増減があるが、元となる数値は上から千、千二百、千、千二百、千五十七、千五十だ。

 このレベル帯まで至ってしまうと、完全に自己完結したステータスになっているように思える。

 最後の二つ以外の数字のキリが良い理由は、単に一つ一つのステータスを極めていく振り方をしたというだけだったりする。上記ならばMGIが千六十になったらMNDを同じにするといった具合だ。

 ちなみにレベル百時のリョウヤの場合は、上から九十九、百五十、九十九、二百、百五十、百五十となる。完全に性格が出ている。

 所謂"攻速型"と呼ばれている振り方に近く、攻撃範囲の広い魔法攻撃の対策としてMGIとMNDにも振っているという、現状に至って尚もリョウヤのステータス振りの基盤となっている振り方だ。

 KODOでは各ステータス最低五百あれば良いとされている。本当にあくまで最低値ではあるのだが、これはレベルが四百になる頃にはクリアできる数値だ。

 詳しく言うのなら、四百になった際に貰えているステータスポイントが四千五十一なので千五十一は余裕がある計算となる。

 各五百を二倍、もしくは二倍以上超えたリョウヤは、前述の通り自己完結している……ように思える。実際、この領域までいくと装備できないアイテムやスキル、職業の類は存在しない――とは言い切れないのがKODOだ。

 例えばリョウヤが好んで使うディスペアドミネイターVVなのだが、必要ステータスがVIT六百、STR九百五十、DEF五百五十、AGI四百、MGI九百、MND千となっている。

 STRの値は武器の重量の目安にされることもあるので、それはリョウヤも「まァ分からなくもない」と言える。何せ大鎌と大槍という巨大な武器だからだ。

 魔刀機巧というスキルが武器そのものにあるので、MGIが要るのも分かる。

 だが、"絶望の支配者"などという名を持つ武器である故なのか、MND……精神力が最も要求されるのは予想外すぎた。

 MND千ってなんだ――作ったは良いが、装備することが叶わずに呆然と呟いたのは比較的記憶にも新しい。

 話が逸れたが、要は何が言いたいのかと言われれば――各ステータスが千を超えていても装備できない武器やスキルといったものが存在するということだ。


(それだけのステータス補正があったからこそ、俺は余裕をもって過ごしてこれたんだぞ……)


 それが修復中とは、どういうことだ。


(……ファフニールの毒、か?)


 それとも鬼ヶ島という環境下だからか――とも考えたが、すぐに否定した。

 KODEで訪れた鬼ヶ島は、今リョウヤがいる鬼ヶ島よりもよっぽど悪環境だ。けれどステータス異常が起こるフィールドではなかった。

 だがそんなことを言えば、ファフニールもステータス異常を起こすタイプの毒ではない。


(いや、そもそも修復中ってなんだ……誰が、何が修復してくれている?)


 ステータスに"being repaired..."と表示させているのは誰なのか、何なのか。修復中などと出るのなら、やはり此処はゲームの世界なのか? 思考があらゆる方向へと枝分かれしながら伸びていく。

 レイは数少ない"星"属性の龍だ。リョウヤに常時発動している【星龍の加護】に、その特徴が現れている。今の状況で関係がありそうなのは【状態異常回復力】くらいのもので、これはリョウヤが状態異常に陥った際の自然回復するまでの時間を早めるものだ。……とは言え、その効力が発揮して英文がステータスに表記されたことはない。


(――ファフニールと言えばDDVVも消失(ロスト)しちまったんだ……)


 リョウヤは先日のファフニール戦で、一度だけレイの背中から投げ出されてしまったのだが、ディスアドミネイターVVの刀身を二つに分け、突貫してきたファフニールに突き出して対応したのだ。より具体的に言うのなら、別れた刀身は当然だが一つに戻すこともできる。タイミングを計り、ファフニールの肩辺りで刀身を一つに戻したのだ。鋏、或いはペンチの要領でファフニールを挟み込む。すると、突貫されことをを回避すると同時に落下することも防げるのだ。

 後はファフニールの動作を読み、レイの動きと合わせて――DDVVから手を放せば終わりである。

 言うまでも無くDDVVはファフニールに残されることになったのだが――


(……換装で消せば回収できたのかなァ……)


 ――少なくともゲームであったのならば、敵を挟み込んだ状態での換装魔法での武器変更は不可能な仕様だった。だからこそ、咄嗟の判断でDDVVを手放したのだ。

 今でこそ換装魔法を試さずにというのは軽率だったと思ってしまうが、一瞬の判断では仕方がなかったのもまた事実だった。

 だが、無くなってしまった物は仕方がない。

 それこそ今、頭を悩ませるようなことではないのだ。

 重要なのは、修復中のステータスがどこまで反映されているのか。

 各ステータスが完全に零だった場合、本気でどうしようもない。が、そうでないのならば、まだ希望はある。


 ふと、スキルはどうなのかと考える。

 リョウヤの装備(セット)しているスキルは終期スキルがメインだ。

 この"期"で区別されるスキルも、オフラインゲームであるKODEとオンラインゲームであるKODOでは微妙に異なる。

 KODEの初期スキルとはレベル五十までに会得できるものを指すのだが、KODOではレベル二百までに会得可能なスキルを指す。

 そして、中期後期終期と進む毎に差異は更に広がっていく。

 基本的に初期スキルはセットするのに制限がないのだが、逆に言えば最高ランク帯の終期スキルには条件があって当たり前だ。

 そして、武器や防具のスキルは基本的に元のものから変更が出来ない。

 逆にプレイヤーズスキルと呼ばれるスキルスロットは変更が可能だ。ただしKODOではマイハウスやギルドホームのマイルームでみ、という制限が付く。

 つまり、どうあっても現状での変更は不可能だろう。


(装備にしろPs(プレイヤーズ)スキルにしろ……一度でも外すのはハイリスク過ぎる)


 修復中と言うくらいなのだ。

 ステータスに関しては、修復中と言うのだから元に戻るのだろうと推測できる。

 当面の問題は、現在の状態でどれだけ戦えるのかということだ。

 この世界に来てしまった日、マダム・マイアー(ママ)のバーの客室で確かめた手段――自らの手の平を軽く裂いてみると、傷は一秒で塞がった……ことは既に確認済みである。

 リョウヤがセットしているスキルで、回復を促す類のものは流星雷光龍衣と合わせて二種類。


(内訳は流星雷光龍衣(ぼうぐ)とPsスキルに一つずつ……)


 スキル【再星(さいせい)灯火(ともしび)】と【再星の篝火(かがりび)】である。

 前者は流星雷光龍衣にデフォルトでセットされており、後者は再星の灯火が発動しているという条件をクリアすることで発動するスキルだ。

 灯火で【体力(HP)自動(オート)回復(リジャネ)】と【精神力(MP)自動回復】が発動し、篝火では灯火で発動するスキルに加えて、更に【状態異常自動回復】と【相棒(パートナー)(ドラゴン)自動回復】【相棒龍精神力自動回復】の三つが追加される。

 故に体力自動回復は二つとなる。


 灯火で体力回復量は秒間にして凡そ十。これはリョウヤの総体力値からすると微々たるもので、リョウヤが普段KODOで戦っていたモンスター達の攻撃力では、とてもカバーしきれたものではない。のだが、一秒で十ということは十秒で百だ。その間を繰り返せれば二百、三百と増えていく。百秒で千、ここまで耐えることができたのなら、それはリョウヤの体力値の十分の一に匹敵する。

 篝火での回復量は、六十秒毎に体力の十分の一が回復するというもの。つまり凡そ千。こちらは固定数値の回復ではなく、割合で算出される数値だ。

 六十秒をダメージを受けずに済めば、六百プラス千の千六百程を回復することができることになる。これは仮にリョウヤの体力が零でも、十分あれば全回復する計算だった。

 尤も戦闘中に無傷で時間を稼ぐというのも難しい話だったりするので、言うほど簡単なことではない。


「……」


 再び現実世界なのか仮想世界なのか分からなくなってしまったリョウヤだったが、傷が再生したことを踏まえると、少なくとも【再星の灯火】は発動していることが推察できる。

 【再星の篝火】に関しては、少なくともファフニールとの戦闘までは発動していた筈だ。小さな怪我では灯火で補ってしまうので、今となっては確認のしようがない。いや、確認は可能だが、自ら進んで大きな怪我を追うというのは嫌である。


(灯火の発動条件は……各ステータス六百)


 破格と言える緩い条件だ。その辺りは流星雷光龍衣の会得条件が厳しいことと、絆装備の設定から来たのだろう。

 最低六百はあると考えるべきなのか、と思う。

 確かに、その数値ではリョウヤが所持していた大剣を持てなかったことにも頷ける。


「――リョウヤ! そろそろ時間だぞ!」


 襖が軽く叩かれ、エタフルの声がかかった。

 どうやら、これ以上の時間はないらしい。

 自分で思っていた以上に時が流れていたことに驚きつつも、ゆっくりと、けれどもしかっかりとした足取りで、リョウヤは一歩を踏み出した。

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