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Knight Of Dragon  作者: 愛兎麦丸
第一章
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D-II.プロローグ②

 多くの人からの視線をリョウヤと分け合いながらも、「しんぱいかけて、ごめんなさい」ときちんと頭を下げたマコ。

 それを見て色々な意味で放心していたマコの母親は、慌ててマコに駆け寄り、その小さな体を目一杯に抱きしめる。

 言いたいことはたくさんあった。

 心配したし、不安だった。

 勝手にいなくなったのを叱りたかった。

 たくさんの人に迷惑もかけた。

 だが、その全ては後回しだ。

 娘の温もりを肌で感じた母は、ただただ良かったと涙を流す。


 そんな様子を見て涙を流す女性もチラホラと居る中で、男衆は騒ぎ始めた――のだが、ママがすぐに諫めた。

 まだここだってモンスターは出るのだから、さっさと町に帰るよ……と。

 そうしてリョウヤが半ば強引に連れて来られたのは町一番の食堂だった。

 マコ、マコの母、マコの姉、マダム・マイアー(ママ)、そして冒険者の少女を中心にリョウヤから事情を聞いていた一同は、説明が終わるとすぐに騒ぎ始めた。

 いや、正確には今名を連ねた者以外が騒ぎ始めた。


「……そう言えばきちんと自己紹介してなかったね」


 日が沈みかけているとは言え子供も多くいる場で、平気な顔で酒盛りを始めた男達に呆れながらママは言う。

 少なくともリョウヤはマコ以外にもママ、茶髪の年若い女性であるマコの母(アルマ)、白髪でポンチョを羽織っている少女のマコの姉(ルコ)……の名はゲームで知っていた。

 そして――


(……ラナン、だよな?)


 ――綺麗な金髪をした軽装の少女も、恐らく知っている。


「この度は娘のこと、感謝してもしきれません」


「妹を助けてくれて、ありがとうございました」


「あぁいや、偶然居合わせただけだからさ……」


 最早何度目か分からない謝礼に、リョウヤはこれまた何度目か分からない「気にするな」という言葉で返す。が、やはり家族の危機を救ったとなれば何度お礼言っても言い足らない。寧ろ、返し切れる恩なのかとすら思えてしまうアルマ。

 姉のルコは十歳程の少女だが、それでもマコよりは大人だ。こちらも母と同じ程度に事の重大さを理解していた。原因の一端が自分にある分、責任も感じているのだ。


「はいはい、まずはアタシらにも自己紹介させておくれよ」


 自己紹介の途中とのこともありママが割って入ることで、リョウヤはどうにか感謝の言葉の嵐から解放された。

 そんなリョウヤの感情の機微を感じ取り、僅かに苦笑いを浮かべたママ。


「アタシはマダム・マイアー……バーをやってるからママって呼ばれてるね、興味があるならおいで」


 サービスするよ、とママはウィンクを飛ばす。


「私はラナン! 新米冒険者です!」


 良ければ色々教えて欲しいな、と笑むラナン。


 冒険者というのはKODの世界――エデンに於いては職業の一つだ。

 ゲームの剣士や槍兵といったシステム上の(ジョブ)ではなく、現実でもある働いてお金を稼ぐ職業の方である。

 仕事の内容は狩りや採取に始まり、護衛……果てには家事や飼い猫探しまである……言うなれば何でも屋に近い。

 中には冒険とは似ても似つかないものもあるが、それは冒険者のクエスト制が関係してくる。

 探索や採取は冒険をする者なら誰でも行う。モンスターや(ドラゴン)が闊歩しているので狩りも同じだ。

 元来の冒険者は探索で集めた物や、倒したモンスター達から剥ぎ取った素材を売ることで生計を立てる。

 だが家事や飼い猫探しのようなものは、国家間を越えた組織が依頼(クエスト)として民間に仕事を回しており、その中身は民間人からの頼み事が多く混ざっているのだ。こちらは依頼人から成功報酬で生計を立てる、或いはお小遣いを稼ぐもの。

 前者は純粋な探索型冒険者、後者は依頼型冒険者と二分されている。


(それは小説(ノベル)版の設定になるけど……)


 KODEとKODOは広大なマップ、ダンジョンを自由に動き回れる。

 当然だがKODOならフィールドで不特定多数のプレイヤーと遭遇するわけだ。そうなると狩りたいモンスターが狩れないということも多々起こる。

 その対策がサーバー増設と依頼制だ。


 モンスター討伐系の依頼を受ければ他人の邪魔なく戦えるし、ある程度の素材を入手できる。デメリットは素材のドロップ率の減少と、参加プレイヤーの人数制限及び時間制限、ダンジョンが本来のものより縮小し探索範囲の狭まりと言ったところか。


 依頼を受けると本来より小さく()簡略化された()ダンジョンで探索をすることになる。

 これは当初のKODOでは大型モンスター討伐系の依頼しかなかったので、ダンジョンはモンスターと戦えるだけの広さがあれば良かったからだ。

 今ではそのミニという特性を生かし、探索で得られるアイテムは最小限にするという分かりやすいデメリットにしている。


 ゲームの特性上、装備を作るとしても大型モンスターの方が単純な火力や防御力は優秀な物が多い。故に依頼で大型モンスターを周回した方が良いと思われがちだが、そこでデメリットとモンスターのPOPする(わく)までの時間が関わってくる。

 一人用オフラインゲームKODEの大型モンスターならともかく、多人数用オンラインゲームKODOの上級者向け大型モンスターを人数制限と時間制限ありで倒せる者は限られてくるのだ。

 勝率、時間、メンバー、調子、そういった要素を把握し、自分が依頼(ミニダンジョン)を使うがダンジョンに向かうか決めなくてはならない。


(とまぁ、それは置いておいて。――小説版の主人公(ラナン)がいるなら、設定が追加されてもおかしくはない、か)


 ゲーム版の主人公はプレイヤーの数だけいる。

 だからだろう。小説となったKODの主人公は、ラナンという長い金髪の特徴的な女の子だった。ちょうど目の前にいる同名の少女は、リョウヤの記憶に残る小説版KODに登場するラナンと瓜二つだ。

 小説という特性上、描かれた絵の枚数は多くないがラナンは主人公。

 表紙にも描かれているし、挿絵の数も他と比べて多い。

 無類のKODファンのリョウヤは、学校の暇な時間で何度も読み返している。

 アプリをしていた時間も多いが、中学の間に存在していた朝読書の時間は全て費やした。見間違えているということはない。


「改めまして、俺はリョウヤ」


 最初にラナンを見た時は大層驚いたが、NPCとして実装されたのかもしれないと大きな反応をしなかったリョウヤではあるのだが、ここに来て一つ不自然なことに気が付いていた。

 よろしくと平然と自己紹介をしつつも、思考はそちらに大部分が割かれている。

 それは先ほどからずっとテーブルに並べられ続ける料理の数々だ。

 減っては補充されが繰り返されているせいで一向に無くならず、ついつい摘まんでいたのだが……お腹が膨れてきたのだ。


(おいおい……これ仕様変更じゃないよな?)


 全感覚型VRということで味覚も再現されている。刺激が強く、攻撃と判断されかねない辛味などですら記憶の中の経験から読み取って味わえるレベルだ。

 そんなKODにおける料理だが、プレイヤーが満腹感を得ることはない。

 ゲーム内で空腹を感じるということは、それは現実でも空腹ということだ。

 空腹というのは体の血糖値が下がった際に脳から発せられるシグナルのようなものだが、要は最後に食事を摂ってから時間が経過したということ。

 それをゲーム内の食事で誤魔化すということは、実際に食べていなくても食べた気になれるということで。そしてそれは言うまでもなく錯覚――脳を騙すということだ。

 現実に帰ることなく、そんなことを続けていたらどうなるか?

 答えは簡単、栄養失調である。


 家族と暮らしている者ならまだ良い。

 けれど一人暮らしなどのプレイヤー、その極一部……一般に廃プレイヤーと呼ばれているのは、一日の大半をゲームに費やす者達だ。

 ゲームという特性上、時間を忘れてプレイすることもあるだろう。

 その集中を乱し、プレイヤーに休息をとらせる為にもゲーム内で満腹感を得られないようにされているのだ。


(……あぁクソ、痛みもちゃんとありやがる)


 手首の調子を確認するフリをしながら強く抓ってみて、リョウヤは漸く事の重大さに気が付いた。


「一応、冒険者ってことになるのか」


 自称したことのなかった自称をし苦笑するリョウヤだが、その苦笑は当然ながら自身の現状を信じたくない故に零れたものだ。

 抓った手首は出血こそしないが真っ赤になっており、ゲーム内で感じたことのない強い痛みが走っていた。

 頭の中で「まさか!」と連呼する。

 だがもし自分の考えの通りならば、ここはゲームの世界などではないということになってしまう。


「おにいちゃん、どうしたの?」


 マコが自分を心配げに見ていたのに気が付き、ハッとなるリョウヤ。


「……ボーッとしてたか? ごめん、なんでもないんだ」


 いつの間にか自分をお兄ちゃんと呼ぶようになっていたマコに対して、誤魔化すように微笑むリョウヤ。その様子を見ながらママは「疲れが出てるのかもしれないね」と労う様子を見せた。


「町に寄ること無く迷いの森に向かった……そうだね?」


「……ああ」


 リョウヤが最初に話したのは、迷いの森で偶然にもマコを見つけたこと。長い時間を歩き、疲れ果ててしまったマコを抱えていたこと。抱えてまで移動したのは森の特性上、夜になると危険なのを知っていたからということだ。

 森に入る以前を勝手に補完したママに、ラナンがどうして分かったのか問いかけた。


この町(イーストジーハ)は大きくないからね、リョウヤの風貌だったら噂になるのさ」


 だいじょうぶ? と首を傾げるマコの頭を撫でているリョウヤを見、ラナン、アルマ、ルコの三人は納得したように頷いた。

 ただでさえ珍しい格好なのに、袴は腰の両脇と膝の両脇が空いており、中から白い細身のボトムスが覗かせているという奇抜さも併せ持っている。

 どこからどう見ても目立つが、流星雷光龍衣はリョウヤの持つ装備の中では間違いなくトップクラスのものだったりする。


「宿もとってないだろう? うちにおいで」


「あ、それならうちに……」


「アンタん所は空き部屋ないだろう」


 アルマ親子の住む家に空き部屋はない。それに男が一人もいないのも問題だ。

 リョウヤなら問題ないだろうとは思うが、それでも知り合って間もない男を……というのはママとしては感心できない。

 母親ではあるが、アルマはまだまだ若く美しいのだ。

 一方ママは熟年で、別室には駆け出しとはいえ冒険者もいる。バーの場所も夜でも人通りのある位置にある。何より店の性質上、夜間も客がいるのだ。……客の男女比がほぼほぼ半々なのはママの人柄故だろう。

 どちらが良いかなんて明白だった。


 アルマとしては折角のお礼の機会を逃し残念そうで、マコはお兄ちゃんと過ごす時間が減り不満げだったが、リョウヤとしては反論する気もない。

 お金はあるので宿でも良いが……個室があるなら別にどこでもいい、というのが本音だ。


「じゃあ今から行きたいから……場所、教えてくれるか?」


 知っているのだが、聞かなくては不自然なことってあるんだな。などと考えているリョウヤは、申し訳なさそうに問う。


「いっしょにいく!」


「じゃあ私が案内するよ」


 ほぼ同時に二つの声が上がった。

 マコが率先する理由はリョウヤとて分かる。


(なんでラナンまで……?)


 疑問に持つリョウヤに、ママが「この子いまうちに居候してるんだよ」と説明している間に、アルマとルコがマコを説得する。今日はもう休ませてあげよう? と。

 木製の椅子に腰掛けたリョウヤの右足の膝を両手でギュッと掴み、マコはうるうると目を滲ませた。


「またあした、あそんでね……?」


「ああ、約束だ」


 そんなマコの頭を優しく撫でてリョウヤはゆっくりと立ち上がった。

 二人の様子を皆が微笑ましそうに見つめていたが、ママからバー裏口の鍵を受け取ったラナンが立ち上がり、次いでアルマとルコも立ち上がった。

 ラナンが「着いてきて!」と率先して歩き始め、リョウヤはそれに続く。そんなリョウヤに、アルマとルコは頭を下げるのだった。


 店内の喧騒をBGMに暫く歩いていると、前を歩いていたラナンが笑顔でクルンと振り返った。


「リョウヤ君は冒険者を始めてどれくらいなの?」


 純粋な好奇心からの質問なのだろう、一切の邪気を感じさせない問いかけに、リョウヤは一瞬だけ思考する。

 いや、思考と言うほど大したことはせず、ほとんど咄嗟に八年と口から出た。


「そっか、八年かー……八年!?」


 近くを歩いていた人が注目するような声量でラナンが驚愕する。


「リョウヤ君って私とそんなに変わらないよね!?」


「こ、今年で十六だな」


「私より一個上……じゃなくて!」


 ん? とリョウヤは詰め寄ってきていたラナンを見つめる。

 近い距離で不意に目が合ったラナンは慌てて数歩離れたが、何を勘違いしたのか道行く人々に「若いって良いわねぇ」などと囁かれ、恥ずかしそうに頬を少し赤らめている。

 対してリョウヤは冷静そのものだ。


(小説版ラナンの歳は十六……)


 僅かな相違に疑問を持ちながら、あわあわとしているラナンのフォローに回る。


「確かにガキの頃からやってるけど、別に全くないって話じゃないだろ?」


「そ、そうなの……?」


 リョウヤの口から咄嗟に出た言葉は全くの出鱈目ではない。

 リョウヤがKODEを初めてプレイしたのは発売日……彼は当時まだ七歳だった。そしてその一年前にKODAが配信されている。

 大凡ではあるが、プレイ歴は八年から九年ということになる。それを冒険者歴として言ってしまったというわけだ。

 だから間違いではない……はず、とリョウヤは思う。

 そしてそんな歳からKODEをやっていたであろう者が、ほぼいないだろうことは理解している。だが携帯電話ならどうだろうか?

 防犯上の理由から持っていた子供もいるのでは?


(いないか? うちが特殊だったのか?)


 だが今となっては置いておこう。


「他にも何人か知ってるしな」


 でっち上げではあるが、知らないラナンからしたら簡単に信じてしまう話のようだ。

 というかリョウヤはラナンの性格をある程度ではあるが知っている。

 基本的に彼女は純粋なのだ。

 それにリョウヤのようにプレイ歴イコール冒険者歴とするなら、嘘とは言い切れないのもミソだろう。


 再び歩き始めたラナンは「そっかー……」と相づちを打ちながら、つい先日……黒い竜に惨敗した苦い記憶を思い出す。

 零れるのは自身への情けなさ。


「そういう人達から見たら私なんてヘッポコなんだろうなぁ……」


「最初は誰でもヘッポコだろ」


 自嘲するラナンの独り言に間髪入れずリョウヤは返答する。

 リョウヤの場合はKODEをプレイし始めた歳が歳なので、序盤からただひたすらにコンテニュー祭りだった。

 一周クリアするのにするのに八ヶ月を費やしたのは懐かしい思い出だ。


(まぁ、その経験が活きるかもしれないっていう皮肉な状況なんだけどな)


 やべぇマジでどうなるんだ俺。そんな不安が頭の中で渦巻くリョウヤは、目の前を歩くラナンが少し嬉しそうにしていることに気が付かない。

 リョウヤに聞かせるつもりはなく、ほとんど無意識に零した弱音に返答されたのは驚いた。驚いたが、返された言葉一つで、落ち込んでいた心情から「これからもっと頑張ろう!」なテンションへと切り替わったラナンは、端から見たら分かりやすかったのだが如何せんタイミングが悪かった。

 本人の意図ではないままに一人の少女を立ち直らせたリョウヤは、その後ラナンから話しかけられるまで自身の状況を纏め続けていたのだ。


 食堂から歩くこと五分、目的地であるママのバーまで着いたリョウヤは、ラナンに二階の一室へと案内された。なんでも「自分にどの部屋がいいか聞いた時に教えられた部屋」とのこと。

 自分が使ってる部屋の次に広いよ! と無邪気に言われたリョウヤは、案内してくれたことも含めてお礼を告げる。


「お礼なんていいよ! 私もマコちゃんが無事で嬉しいし……それに実は気になってることもあって」


「気になってたこと?」


「あ、でもそれは明日でいいよ! 今日はもう眠りたいでしょ?」


 リョウヤにとってはありがたい申し出だった。

 大人しく好意に甘えさせて貰うと、ラナンはおやすみと挨拶を告げて階段を降りていく。恐らく食堂に戻ったのだろう。

 バタン、と木製の扉を閉める。

 ベッドや本棚、テーブルといった必要最低限の家具の置かれた窓が一つの部屋だ。


 KODシリーズに於ける宿泊施設は宿だけではない。

 条件を満たせば、それこそ民家にも泊まれ、体力を回復できる。

 ママのバーもだ。

 なのでリョウヤも最初は何も思っていなかった。


(――けど、こんな宿屋みたいなスペースが複数あるのも変な話だ)


 ママにも明かされない設定があったのだろうか。

 今更ではあるが、そんなことを思いながら羽織を脱ぎ、ベッドに深く腰掛ける。

 ギシリと軋む音を聞きながら「あああああああぁぁ……」と慟哭ににも似た溜め息を零し、両手で頭を押さえるリョウヤ。

 ここがゲームの世界なのか?

 それともKODに似た別世界なのか?

 現実の肉体はどうなっているのか?

 そもそも今の体が現実のものなのか?

 上げればキリがない程に疑問が沸いてくる。

 何より重要なのは――元いた場所に帰れるのかどうか、ということ。

 ラナン達と居るときもずっと考えていた。


(……あ、そうだ)


 リョウヤは腰にぶら下げたままだった刀を見、徐ろに刀身を抜き放った。

 刀は柄側が最も斬れ難いと聞いたことのあったリョウヤは、その刀身を軽く撫でてみる。


「……っ」


 手の平に綺麗な線が痛みと共に走り、じわりと血が流れ始める。が、それも一秒もすれば塞がる。


(自動回復が発動してる……けど、今の痛みは……本物)


 KODなら痛みはほとんどなく、触覚……触られた感覚のみが強く残る。それに血液が流れることもない。

 リアルとゲームが混ざり合っているとでも言うような現状を目の当たりにして、リョウヤは再度溜め息を吐く。

 深く、長い溜め息。


(……俺の攻撃で、今日会ったモンスター達は普段と変わらない対応ができた)


 つまり最初に確認したステータス通りの攻撃力があるということだ。

 このことから察するに、他のステータスも同じだろう。体力に関しては不明だが、試せるわけもない。

 攻撃スキルは問題なく扱え、今の自動回復(オートリジェネ)で条件を満たせば発動するタイプのスキルも確認できた。

 武器の装備は問題なかったが、防具の装備はエラーのため不可能。


(正確には流星雷光龍衣から変更が出来なかったわけだが……)


 再び試してみるが、先と結果は変わらない。

 では流星雷光龍衣を取り外してみたらどうなるだろうか? とメニューを操作しようとして、止まる。

 外して……再び装備できなかったらどうする?

 そんな予想が脳裏を過ぎったからだ。

 流星雷光龍衣はリョウヤしか所持していない、所謂ユニークと呼ばれる装備だ。基礎防御力が同レア度防具と比べると低いが、スキルの多くをプレイヤー自身で選択できるという破格の性能を持っている。

 外すには、流石にリスクが高すぎた。


 リョウヤは無造作にトップスの前を止めていたボタンを外し、脱ぎ捨てる。中には一枚のタンクトップしか着ていなかった。

 次に袴を脱ぎ捨てる。スラッとしたボトムスが露わになる。

 タンクトップとボトムス、これらは初期装備だ。

 キャラメイクに含まれており、今のリョウヤの格好がゲーム上の全裸となる。

 そのままベッドに仰向けに横たわり、目元を右手で覆う。


「どうすんだよ、俺……」


 弱々しい呟き。

 それから暫くリョウヤは何かと考え込んでいたが、疲れからかすぐに寝息を立て始めてしまったのだった。

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