1章 新たなる世界
彼女が再三、光を眼に映し出した時、彼女は暖かな感覚に包まれた。
そして彼女を覗き込むように、1人の女性の心配そうな顔が大きく映えていた。
幻想郷では見た事も無いような、明るい光。紅魔館では何時も夜は蝋燭の光だった為、新鮮な光の因果が彼女の中で気になるような形で引き摺った。
「―――だ、大丈夫か?」
彼女の応答に、静かに起き上がっては首を縦に振って見せた。
周りを見渡すと、観た事も無いような家具や道具が置かれており、目はその鮮烈な光景をしっかりと捉えられていた。何処となく幻想的で現実的な、そんな感覚であった。
彼女は寝かされていたことを自覚し、ベットを椅子にしては1人の女性の顔を見つめた。
「此処は何処なの……?」
「……ここはアーゼムの7番街。しかし裏路地で倒れてたから私が助けれたけど、これが大通りとかだったらフィロソフィアの奴らに酷い目に遭わされていたんだぞ」
彼女は理解出来なかった。
アーゼムの7番街とは何なのか、フィロソフィアの奴らとは何なのか。
唐突に発された音韻は、彼女の朧々ような記憶に重たく響き渡った。
彼女は深く考えてみたが、其れが無駄な足掻きであることが分かると、蓴羹鱸膾、何処かにあった記憶を果つる懐かしさが込み上げた。
「……フィロソフィアって何?」
「お前、フィロソフィアも知らないのか…!?……まぁいい、フィロソフィアってのは……」
その時であった。状況けたたましく、爆発音がすると思えばドアが勢いよく壁に飛ばされ、中に武装した3人の兵士が押し入って来たのである。
銃を構え、物騒にもガスマスクをしては煙の中から姿を現した存在は2人に銃口を差し向けたのだ。
彼女は唐突な状況に理解に苦しんだ。そして、突然に姿を晒した3人の事が気に食わなかったのであった。
彼女を介抱していた存在は現れた兵士に苦い顔を浮かべては、咄嗟に近くに置いてあった拳銃を構えては、必死に抗戦して見せたのである。
「……手を挙げろ!お前が此処に隠れてるのは分かってるんだぞ!指名手配犯、クラウンピース!!」
「おっと、それはご無沙汰しておりませんでしたね。そんなに私に会いたかったですか!」
嫌味っぽく返すや、彼女と兵士たちはにらみ合った。
一触即発、とはまさにこの事だろう。彼女はそんな時を、自身の眼に研ぎ澄ませて見据えた。
感情の高ぶりは、この運命を隔てて思い知った。
「……其れに何だ、コイツはお前の仲間か?…なら、コイツも除去するまでだな!!」
威勢よく兵士たちはそう言うや、そのうちの1人が銃口をベッドに座る少女を狙った。
その行動にクラウンピースは目を疑い、彼女を庇うように仁王立ちしては弁解を始めた。
銃を手放さず、必死さを伴わせて。
「……この子には何も関係ない!狙うなら私だけにしろ!」
「…ふはは、愛娘ってやつか。滑稽だな、例え指名手配犯の子であれ、上層部は殺戮を許可している。
恨むなら俺たちでは無く社長を恨めよ、クラウンピース」
その瞬間、引き金は引かれた―――。
咄嗟に少女は行動に反射するかのように動いては、急に現れた深紅の剣で銃弾を斬り裂いていた。
其れは彼女が意識すること無く、僅か数秒の間で行われた。続いて目の前にいた3人を、スローモーションに見せるが如し瞬間的な速さで一気に斬り抜いたのであった。
腹部に深い切り傷を負った3人は出血と同時に床に伏せ、少女は初めて意識を取り戻した。
彼女の周りにはパソコンの画面のようなウィンドウが幾つも存在していた。
其れはまるで機械のように、彼女そのものが蓄えていた超次元の力を示唆しているかのようであった―――。
そして、急展開なクラウンピースは今の事象を理解しうるに時間を要したが、最終的な定理は1つだけしか無かったのであった―――。
「……この子は……クロノスドライヴを搭載しているのか……!?」