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プロローグ

无何之郷むかのきょう夢幻泡影むげんほうよう

平穏と安寧が築かれた世界は一瞬にして灰燼と化し、帰属せし人々は無我夢中に逃げ惑った。

燃え行く大地、煙が覆う大空。どっと湧く慟哭は秩序が崩壊された無辜の民の叫びか。


薄倖の運命は、何もかもを変えた。

突然として豹変した1人の人物による、世界の大革命。其れは今、世界を終わらせようとしていた。

……終焉の幕開けである。何をも寄せ付けぬ、独立不羈どくりつふき、無我な表象はありとあらゆる有象無象を変化させた。


そんな中、洋式で建造された建物の中では未知なる実験が行われようとしていた。

魔法…所謂、科学とは背反した、非現実的な実験である。図書館の一角、俗に大図書館と仇名される魔法使いと、1人の吸血鬼は真剣な目つきで話し合っていた。

2人の前にあったのは、錆びついた寝台。其処に手足をテープで固定されていた、1人の少女は目を覚ますこと無く静かに寝ていた。


「……次元の流れは良好、やるなら今しか無いわ」


「―――これが最後の別れだと思うと、やはり抵抗感は生まれてしまうものなのね…。

―――でも、後悔は…してないわ。これがフランに対する、姉の最善の行動なのよ……」


魔法使いは魔導書を展開すると、目の前に次元の歪みが出来上がる。

其れはまさしく、別世界へ繋がる異次元への入り口であった。歪みの中は渦巻いており、再び同じ場所には戻れないということが中傷的ながらも髣髴とさせた。

そんな歪みの中、2人は寝台を押した。車輪は錆びつきているために回転は遅かったが、ゆっくりと着実に歪みへと進んだ。そして、2人は最期に力いっぱい寝台を押したのである。


「―――フラン、別世界で元気でね。私は…貴方の事を忘れたりしないわ」


その時、寝台に磔にされた少女はそのまま歪みの渦の中へと姿を晦ました。

歪みを作ることに、とうとう魔導書の魔力は切れてしまい、歪みはそのまま消えてしまった。

辺りは再三静寂に覆われ、レミリアは懺悔の思いを表情に出す。


「―――フラン、元気でね……」


しかし、世界は至極不条理なものであった。

図書館を襲う、謎の爆発。其れが連続に続き、雨が降り注ぐように起こった時、2人は不安を募らせた。

爆発の多寡では無い、襲撃された時点で彼女たちは既往苦しまされた因果の登場に苛立ちを浮かべて。


「―――来たわね、出来るだけ被害を最小限までに食い止めるわよ」


「了解、私もパチェについていくわ」


◆◆◆


―――彼女は静かに、その時を迎えた。

隔たりの無い、解放された空間。先程まであった姉や魔法使いの顔は無く、唐突として現れた渦の中の自分に自己を自己と否認したくなるような感覚に襲われる。アイデンティティーの当惑であろうか。


大きく背伸びをしては、宇宙に放り出されたかのように身が浮いた空間を理解した。

そして、彼女は自分に起きている事象を大まかに理解しようと試みたが、厖大、やはり露呈された現象さえ飲みこむことは不可能であった。暫時、彼女は推察する。

―――この世界は幻想郷と言う表象と、また別の世界と言う形而下の表彰を結ぶ過程に過ぎないのだ、と。


「フラン、捨てられたのかな……」


周りにいない姉の顔を脳裏に貼りつけていたため、彼女は困惑していた。

しかし、そんな彼女が佇む浮遊世界にも竟には終わりを見せた。渦が切れ、光がゆっくりと溢れだしたのだ。そして、光はそんな彼女を包み隠すように緩徐覆っていった。



―――異次元で彼女は何を見出すのか?其れを、この話の肴としよう。


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