異世界生活経験者な友達は今日も子竜を探す①
結愛!どこにいるのよ!
消えかたてきにあんたまさか!
「異世界トリップよね。」
あたしはため息をついた。
友だちの二瀬結愛が消えたという里の道には結愛の足跡が突然途切れていたと聞いた。
「志甫、諦めるんじゃないよ!」
静音お祖母さんが応援してくれた。
あたしは栗落花志甫
有名な異世界トリップや召喚されやすい体質の一族の人間だ。
恐らく、栗落花といえば
すくなくとも日本人、もしかしたら
三次界人全員が…は言い過ぎだが
まあ、大部分の人たちが
あの異世界落ちの一族と想像するだろう。
「あの子、しっかりしてるように見えてとぼけてるからね。」
あたしは言った。
友だちの結愛とは就職以来あまりあってない
結愛は竜の里での父親の役割を継ぐために
修行中で外回りの仕事をしているからだ。
「あたしの異世界落ちの体質移ってないよね。」
あたしは呟いた。
じつはあたしも異世界落ちを経験している。
詳細は省くが結愛が探してくれたと聞いた。
栗落花の一族はまあ、いつも通り騒がなかったらしい。
異世界落ち時の家訓とはいえ
なんだか寂しい。
異世界に落ちたものいつか帰ると落ち着けだっけ?
まあ、対策は練ってたらしいけど。
あたしが帰ったとき
『志甫ちゃん帰ったの~嬉しいの~。』
ってぐしゃぐしゃに泣いてた
結愛が嬉しかった。
でも、ボロボロになるまで
時竜の時空制御術使わなくて良いからね。
パニック起こして力使いすぎてないといいけど。
あの子竜みたいなちっちゃい体で…。
『志甫、僕の世界にはいないです。』
眼鏡をかけた美青年が端末画面の向こうで言った。
あたしが落ちた世界の人だ。
端末につながるように向こうの通信設備を
改造したんだ、こいつが。
「イルハース、本当にいないの?」
あたしは確認した。
『ええ、志甫の役に立てると良いのですが、残念ながら志甫のくれた、手がかりの女性は居ません。』
イルハースが言った。
不本意ながら信用するしかない。
異世界落ちの原則守れず。
この世界魔王に付きまとわれたお陰で
どんなに苦労したことか。
『志甫、あなたはいつ頃帰ってくるのですか?』
イルハースが言った。
あそこいくと、志甫様呼ばわりされるからな。
「当分帰らない。」
あたしは言った。
『……あなたの好きなヒエーラシル準備したのに。』
イルハースが言った。
ヒエーラシルかぁ…あのクリーム煮
酒にあうんだよね…。
だめ、ダメダメ、あたしは
結愛を探してるんだからね。
酒は結愛が見つかってからで充分。
「イルハース、ありがとう!」
あたしはそういって通信を切った。
ああ、あぶなかったよ。
「志甫ちゃん、パーウェーナ世界は一応いないみたいだよ。」
従姉の栗落花律さんが
旦那さんに捕獲されて…じゃない
えーと、赤ちゃん抱っこされてきた。
うーん、律さんもたしか異世界落ちの原則
守れなかった人だよね。
たしか、王様だったよね、旦那さん、今は先代王だっけ?
「ありがとうございます。」
あたしは言った。
「えーと、風の精霊王に探ってもらったんだ、だから、あってると思うけど。」
律さんが言った。
「友は貴重だ、必要とあれば私も力をかそう。」
律さんの旦那さんが言った。
うーん、美人だな、中年になっても。
「ありがとうございます。」
あたしは端末を出しながら言った。
どりあえず、結愛の両親に報告しておかないとね。
本当にどこにいったのよ。
絶対に探し出すからね。
栗落花律は女王陛下(多分)と異世界人(確定)の主人公です。
よろしくお願いします。