捜査員は今日こそ追い込む
善意の都民から通報があった。
今度こそ奴に決まっている。
「こちらへどうぞ、お嬢さんはお預かりしましょう。」
オレは言った。
オレはキャスア・ボーラ
シュレイル交流国の都チシエルの捜査員だ。
まだ、駆け出しだが。
「結愛にさわるな。」
黒い髪の男は黒い目でにらんだ。
ますます怪しい。
「こちらにおいで。」
強面のダスラ捜査員が女の子にさわろうとして男にはばまれた。
「結愛にさわるな!」
男は怒鳴った。
やはり、こいつが犯人の一人かもしれない。
童女を保護しないと。
最近、シュレイルでは女子どもの行方不明があいついでいる。
失踪なのか誘拐なのかわからなかったが
最近、そこから逃げてきた少女が言った。
自分は人身売買の組織に誘拐されて
もう少し売られるところだったと。
少女の証言にビックリし警察署に
両親が駆け込んで発覚した。
その後、少女の証言通り隠れ家がみつかり
何人もの女性や子どもが見つかった。
彼女らはすべてある程度の基準を満たした美人だった。
犯人の逮捕には至らなかったが
組織的な犯行なのは判った。
つまり、行方不明の女性たちはオークションにかけられていた。
その後も行方不明者は止まらない。
警察の調査を嘲笑うかのようにだ。
「逆らう気か?」
もう連行するしかないか?
やっとつかんだ、捜査の糸口だ!
バッグ屋の女店主が怪しい言動をしている
男がいると教えてくれたんだしな。
「さからうもなにも、いったいなんのようなの。」
童女が言った。
幼すぎて気がついてない?
それにしても、美しい童女だな。
「人身売買のうたがいだ、袋に積めると言ってたそうだな。」
オレは言った。
「それ、冗談なの、クロお兄ちゃんはお世話になってる人で犯罪者じゃないの。」
童女が言った。
「オレが結愛を人身売買すると?なぜ、里の大事な子竜をそんな事せねばならん。」
男が不機嫌そうに言った。
「……子竜?子どもじゃないのか?」
オレは言った。
どうみても、人間に見えるぞ。
竜なのか?
「…オレはハタヤ竜人国のものだが。」
男が微妙なことを言った。
ハタヤ竜人国…全部竜じゃないが
竜族が多い国だったな。
正体不明の謎の隣国だ。
「人身売買など、オレには関係ない、里の子竜がさらわれたらどこまでも追うが、里に入るバカがいるだろうか?」
男ははなでわらった。
まるで、オレが無能みたいじゃないか。
間違いなくこの男は狂ってるか
竜と思い込んでるか。
もしかしたら竜かもしれないが。
「キャスア君、ハタヤ竜人国の人と問題を起こさないでくれ、失礼いたしました、もう結構ですよ。」
ダスラ捜査員が言った。
「そうか。」
男は童女と共に去っていった。
「ダスラ捜査員!なんで!怪しいですよ!」
オレはダスラ捜査員に食って掛かった。
「キャスア君、君は僕の髪を薄くする天才だ、ハタヤ竜人国は古ハタヤ王国の領地を奪い取って、いつでも、取り返してみろっていってる好戦的な国だぞ、シュレイル交流国は武力がないんだからな。」
ダスラ捜査員の頭の寂しい髪が風にヒラヒラした。
「…犯罪に目をつぶれと言うのですか?」
オレは言った。
あの綺麗な童女が被害者だったらどうするんだ。
「疑わしきは罰せずだよ。」
ダスラ捜査員が言った。
何て弱腰なんだ。
オレはきちんと捜査して
この人身売買の犯人を見つけてみせる!
あの男も捜査対象だからな!