竜王様は今日も抱え込む1
はじめてみたとき、
ハレーション起こしそうなガキだ、
とおもった。
「結愛、食べてるか?」
俺は育児袋を覗き込んだ。
食べてないな…子竜の癖に遠慮深い奴だ。
「結愛、食え。」
俺は竜果草パイを結愛に押し付けた。
「お腹一杯なの。」
結愛が言った。
真珠がかった紫銀の巻き毛が顔にかかった。
可愛い、可愛すぎだ。
竜王位についていらい卵から生まれる子竜は
沢山見守ってきた。
手が空けば子竜たちを構い倒してきた。
でも、こんなに構いたい子竜は初めてだ。
まあ、結愛は食べなすぎだが。
…食べない事も気になるが
結愛にはもっとなにかがある。
気になって仕方ない。
「竜王様、お外出してください。」
結愛が言った。
こいつは外の恐ろしさがわかってない。
いつ、他の雄竜に抱き上げられるかわからんし
さらわれるかもしれないんだぞ。
「まあ、まて、人間の街に手が空いたらつれていってやるから。」
俺は結愛に竜果草クッキーを食べさせながら言った。
「普通にお外行ければいいの。」
結愛が言った。
外への憧れが強いのか?
こんなガキなら人型はとれんよな?
まあ、なんとかなるだろう。
色々アイテムも術もあるしな♪
シュレイル国の都が近くだし。
結愛が調子が良さそうな時でもいくか?
「竜王様、騏麟公から連絡です。」
竜伯が言った。
「分かった、まわせ。」
オレはいって遠通機にむかった。
こんな水晶みたいな円盤で遠方のものと通信出来る時代がくるなんて
思いもよらなかった。
結愛は少しウトウトしているようだ。
『竜王様、結愛ちゃんは元気ですか?』
騏麟公アーディスが言った。
「元気だ、何かわかったか?」
オレは言った。
「うーん、結愛ちゃんがこの世界の竜の里の子じゃない事くらいですかね。」
騏麟公が言った。
なに?結愛はこの世界の子竜ではないというのか?
「マイナーな竜の小規模な集落はわかりませんが…。」
つまりだな…この世界でたよれるのはオレただ一人か?
まあ、こんなに可愛い子竜なら竜族なら手をさしのべるとおもうが…。
「結愛、安心しろ、オレがしっかり面倒みてやる。」
オレは結愛には悪いが喜びがこみあげてきた。
そっと、可愛い巻き毛をなでると結愛は目を開けた。
「竜王様、お仕事大変ですよね、私、セリアお姉さんのところにいってます。」
結愛は言った。
紫色の目が空の色みたいだと思った。
「いや、ここにいろ。」
オレは言った。
結愛がこの世界でただ一人なら…
オレは結愛とすっと一緒にいたい。
子竜に何考えて…。
子竜時代なんてあっと言う間だ。
大人になれば、雄竜が放っておかない美竜になるだろう。
だから囲ってるわけじゃない…とおもうが。
まあ、当分子竜だしな。