子竜は事件に巻き込まれる6
この幕何とかしないと…。
空間術つかえばいいのかな…それとも…。
「結愛~大丈夫か。」
クロお兄ちゃんの声がする。
なんとか、布の隙間からクロお兄ちゃんが見えるみたいだ…。
「悪の竜、子竜は渡しませんよ。」
セファムが言った。
フフフって笑ってるよ。
完璧向こうのペースみたいだ…。
「素晴らしいショーですね。」
男が言った。
「悪趣味ですわ。」
女が言った。
あんたらの方が悪趣味じゃない。
人を買うなんて…。
大体、ここに集まってる人達って何をもとめてきてるんだろう?
シュレイルは見た限り進んだ国だよね。
少なくとも国は国民が才能を発揮する機会をあたえている。
「やるつもりか?」
クロお兄ちゃんがかまえた。
「こちらには、子竜がいるといってるんです。」
セファムがニヤリとして言った。
わーん、私人質?…竜質?
「く、卑怯だぞ!」
クロお兄ちゃんが言った。
「卑怯…それがどうしました?」
セファムが笑った。
「さあ、悪い竜を退治しましょう…水よ流れを!」
セファムが言った。
あれ?この人無詠唱だったよね…。
だって闇魔法の時聞いて…。
大きな水の柱がクロお兄ちゃんの所にたった。
クロお兄ちゃんが耐えてるのがみえる。
周りの観客は歓声をあげてる。
やっぱり、大きい魔法なんだ。
私…私がここに捕まってるから…クロお兄ちゃんが無防御なんだよね。
空間術がなんか練れない…。
「フフフ…まだ耐えられますか?水よまわれ。」
セファムが言うと水柱が回りだした。
クロお兄ちゃん苦しそうだ。
…私…どうすれば…そうだ…。
あの術なら息をするようにつかえる。
「クロお兄ちゃん!」
私は幕から抜け出した。
空間術でクロお兄ちゃんを被う。
「紫の美少女なんていたか?」
誰かが言った。
そう、私は人型をとったんだ。
本来の人型の大きさに。
そうすれば…幕から抜け出せるから…。
「ゆ、結愛か?…。」
クロお兄ちゃんが言った。
私はクロお兄ちゃんを被う水を空間術でセファムを含む会場の方へ
空間術で包んで飛ばした。
会場内が水浸しになる。
今度こそ大騒ぎになった。
このくらい出来るもん。
時竜の騏麟で未来の時竜東竜公なら。
「クロお兄ちゃん!」
私は今度こそクロお兄ちゃんに飛びついた。
「濡れるぞ、結愛!」
クロお兄ちゃんが言った。
「うん、大丈夫なの。」
私は微笑んだ。
「ほのぼのしてるところ悪いけど、僕をお忘れなく!」
セファムが言った。
「ふん、なんだ、やるのか?」
クロお兄ちゃんが言った。
「人質もいる事だし…今度こそ倒させてもらう!」
セファムが言った。
わー、本当に卑怯だな。
「人質?結愛はここにいるぞ。」
クロお兄ちゃんが言った。
これは竜王として正しい発言だけど…人としてはどうなんだろう?
「おや、可愛い娘さんたちはいらないの?」
セファムが笑った。
「結愛だけいればいい。」
クロお兄ちゃんが言った。
まあ、この場で子竜みたいなの私だけだしね。
「ふーん、いさぎ良いね、奇遇だね、僕もその子がいればいいや。」
セファムが言った。
どうせ今回の損害が売上で補てんとかだからだよね。
「結愛はわたさん。」
クロお兄ちゃんが威嚇した。
「君を倒してからもらうからいいよ。」
セファムが言った。
仮にも…竜王様をたおすっていうの?
笑っちゃうよ。
「風よ、刃になれ!」
セファムが言った。
風がクロお兄ちゃんを切り刻もうとする。
いくすじか、赤い傷が出来る。
「どうした、こんなもんか行くぞ!」
クロお兄ちゃんが咆哮をあげた。
「そこまでだ!人身売買の容疑で逮捕する!」
キャリア捜査員が飛び込んできた。
イクスファ主任捜査員も見える。
「セファムさん、商品のところに竜が…青い竜がきて…捜査員も来ました。」
ラリスが駆けてきた。
『セファムさん、捜査員が監視モニターに沢山映ってるわ!』
オリゼが放送で言った。
会場がざわつく。
探られちゃまずい人が沢山いるみたいだ。
でも、年貢の納め時だよ!
「撤退時のようだ、ではまた、可愛い子竜さん。」
セファムはそういうと消えた…。
会場には…警備係も職員も、ともかく組織の連中は一人もいない。
客も何人か消えたみたいだ…あのファリアードとか言う男も…。
重要な人物は…秘密を知る人物はのこさない?
「みなさん、動かないでください…事情をお聞きします…詰所の方でですが…。」
イクスファ主任が言うと一斉に捜査員と警備官が客たちを拘束しだした。
「なにをする、私をなんだと。」
「やめてちょうだい、触らないで!」
客たちが大騒ぎになる。
そう言えば…ティナーラお姉ちゃんは?
人身売買されそうだった人達は?
「クロお兄ちゃん。」
私はクロお兄ちゃんを見上げて
…ついでに自分の姿をみて恥ずかしくなった。
だって…下着姿の上濡れてるんだもん。
す、すけてないよね。
「結愛やはり…子竜では無かったんだな…。」
クロお兄ちゃんが言った。
別に…かくしてたわけじゃないもん。
「怒ってるの?」
私は聞いた。
「いや、お前が子竜じゃなくてうれしいぞ。」
クロお兄ちゃんが言った。
…どういう意味なんだろう…。
「娘さんたちは全員無事ですよ。」
ゼストリーアさんが人型でやって来た。
「作戦は成功だな。」
クロお兄ちゃんが言った。
そうか…最初から…この為に別行動だったんだね。
人質を見捨てる気なんてなかったんだ。
「結愛、帰ろう。」
クロお兄ちゃんが私に顔を寄せて言った。
「うん、かえろう、ゼストリーアさん、ありがとうなの。」
うん、助かったの。
「いえ、顛末は分かり次第お伝えしますね。」
ゼストリーアさんが言った。
私は下着姿で恥ずかしかったので竜体をとった。
「子竜じゃない、結愛をいれるのはおかしいが…ここへ。」
いつのまにかエプロンをしたクロお兄ちゃんが私を育児袋にいれた。
ああ、竜果草がいっぱいなの。
クッションにはなるの…。
体力的には子竜なみだから疲れたの…寝てもいいかな…。
大きくなれないんだよね…だから…この大きさでドラゴネット(少女竜)なの…。
竜果草たべればもっとおおきくなれるかな…。
反射的に子竜鳴きしないくらい大きく…。
眠い…でも何か忘れてるの…。
「おい、逃げる気か!」
キャスア捜査員の声がする。
逃げる…。
「逃げも隠れもしない!用があるなら地竜の里まで来い!」
クロお兄ちゃんが飛びたったみたいだ。
そうだよ…この事件解決してないの。
だって、犯人たち逃げたもん。
たぶん残された客も人質もなにも知らないんじゃないかな?
私はなんか…聞いた?
思い出すの…………ダメなの…眠い…の…。




