子竜は事件に巻き込まれる2
クロお兄ちゃん、本当にごめんね。
でも、私は里で役目をもらってるものとしてほっておけないんだ。
「…本当に良かったのかい?」
ゼアヤラゼ公が言った。
もう少し地方の領主さんなんだそうです。
「だって、人身売買は犯罪なの。」
私は言った。
ティナーラさんも心細い思いしてるよね。
クロお兄ちゃんの腕の中からうんしょと出たら
『結愛?いくなー。』
と今生の別れみたいな雰囲気でいわれたよ。
私が来たのごく最近なんだけど…。
クロお兄ちゃん、私がいないとき
ちゃんと竜王様できてたのかな?
ともかく、ごねるクロお兄ちゃんを
水竜の麒麟のゼストリーアさんに任せて。
ゼアヤラゼ公のおじいちゃんと
シュレイルのりっぱなホテルに来ました。
ここに宿泊してるんだって。
「おかえりなさいませ。」
ホテルの人が綺麗な礼をした。
さすが、高級ホテル、エントランスから
シャンデリアが夜空の星のように深い緑の天井に下がっている。
ソファーも適度な固さで座りやすそうだ。
部屋に行くと上品なおばあちゃんが心配そうに待っていた。
「キーロ、話は聞いたわ、本当にいいのかしら?」
おばあちゃんが言った。
「ティナーラのためだ。」
ゼアヤラゼ公が言った。
ティナーラさんはゼアヤラゼ公領から、
首都の学校祭の視察に来たんだって。
優秀な人材のスカウトのためなんだって
それで、気に入った職人さんがいたので、単独でティナーラさんが
ゼアヤラゼ公領にほしいって交渉にいって…帰ってこなかった…。
職人さんのところまで行きつかないうちらしい。
手口はわからない…。
将来の領主なんだってさ。
ご両親はすでに離婚してて
ティナーラさんのお母さんは後は継がないといってる、首都で官吏をしてるらしい。
入婿だったお父さんは再婚したらしい。
だから、ティナーラさんが跡取りなんです。
「こんなに小さい子を渡したくないわ。」
おばあちゃんが言った。
「大丈夫ですよ。」
私は安請け合いした。
だって本当は人型はこの大きさじゃないもん。
「連絡はきたかい?」
ゼアヤラゼ公のおじいちゃんが言った。
「まだよ…結愛ちゃんで良いのかしら?なにか食べる?」
おばあちゃんが言った。
こ、ここでもだべもの攻め?
「いいの、お話しするの。」
私は言った。
「遠慮しなくていいのよ、ここのパティシエは学校祭で最優秀賞に輝いた人なの、イチゴのチーズケーキが美味しいわよ。」
おばあちゃんはもう頼むたいせいだよ。
「私はルーリーナ獣魔国産のルリ茶を頼む。」
ゼアヤラゼ公のおじいちゃんが言った。
る、ルリ茶?あるんだ?
二次界のブルー・ルリーナ王国の特産だよね。
同じ名前の別物かな?
「興味があるみたいだね、のんでみるかい?」
ゼアヤラゼ公のおじいちゃんが言った。
「キーロ、子どもにルリ茶は無理じゃない?ルリケーキ頼むわ。」
おばあちゃんが言った。
あうー、ルリ茶好きなの~。
あのどくとくの酸味と口のなかに広がる爽やかさが美味しいのー。
「エメリー、結愛ちゃんは案外大人だよ。」
ゼアヤラゼ公のおじいちゃんが言った。
なんか見透かされてるみたい?
隠してないもん。
「抱っこもことわるし、手をつなぐのも遠慮するし。」
ゼアヤラゼ公のおじいちゃんが言った。
だって、クロお兄ちゃんがすごい目で見るんだもん。
いかくされたら困るし…。
キャスア捜査員はクロお兄ちゃんに良い印象持ってないみたいなんだもん。
しばらくすると応接間に
お茶とお菓子が運ばれた。
わー、イチゴのチーズケーキ
綺麗…イチゴのソースとクリームチーズのマーブル模様の上に
芸術的に絞り出されたイチゴ生クリームとイチゴスライスが花みたいにあがってる。
ケーキのまわりも花みたいなイチゴとクリームの模様がお皿を彩っている。
「お食べなさい、ルリケーキもあるわよ。」
おばあちゃんもチーズケーキを食べながら言った。
「良い香りだ、落ち着くよ。」
ルリ茶をのんでゼアヤラゼ公のおじいちゃんが言った。
どうみても…ブルー・ルリーナのルリ茶なんだけどな…。
「美味しい!」
私は思わず言った。
甘さと酸味の絶妙なバランスのチーズケーキ…ああ、時竜王様にも食べさせたい。
竜なんて、そんなもんです…自分の里の竜王様が一番なんです。
クロお兄ちゃんにも…たべさせたいな…。
案外、甘いもの好きだよね。
「ティナーラもこのケーキがお気に入りで…。」
おばあちゃんが口ごもった。
そうだよ、呑気にしている場合じゃなかった。
うまく取引にあらわれた人身売買の犯人をつかまえて、
ティナーラさんを…被害者を助け出して犯人を捕まえなくっちゃだよ。
「あの、戦士みたいな若者は本当に大丈夫なのかい?」
ゼアヤラゼ公のおじいちゃんが言った。
まあ、あのとりみだしようをみてればね…。
「大丈夫なの。」
私は言った。
うーん、たぶんだけど…まあ、私も隠し技あるし…。
外竜のしかも騏麟だから…護身術くらい…たぶん大丈夫?
…時空術…メインがいいかな…私、竜にしては戦闘系にがてだし…。
「いつ頃…くるのかしら…?」
おばあちゃんがあくびをしながら言った。
「…そう…だ…。」
ゼアヤラゼ公のおじいちゃんが持っていた。
優美な白い茶器を落とした。
器の割れる音が響いたのにだれもこない…。
なに?いったい?
二人も起きない…いったい何がおきてるの?
「おや、ねむくありませんか?」
声がして私は振り向く間もなく袋?をかぶせられた。
身動きがとれない…息はできるけど…。
梱包されてるみたいだ…。
「ねなさい。」
魔法の発動ワードらしいけど…竜だからきかないのかな?
どこかの籠のなかにいれられたようだ…。
車輪の振動と音がする。
まずい、クロお兄ちゃんに知らせる間が無い。
…でも、ここで騒ぐと…チャンスを逃すかもしれないし…。
様子をみよう…。
いざとなったら…全力でなんとかするよ。