はじまり
錬金術をご存知で?
一般的に言われるものは、卑金属から貴金属を生み出す技術と言われますな。
まぁ、金を生み出すみたいなね。
ところが、今回、紹介する青年は、ちょっと違います。純粋な錬金術を学ばなかった。
訳有りでしてね。
一部の人間は、半端な物、デッドコピー、練成術モドキとも言いますが。
しかし、この力、意外に現代では有用なようで、彼は、その力を順調に貯蓄、活用していきます。
同時に敵も増やす事になるのですが。
では、その一部をお話ししましょう。
【学生時代】
「なんでそんな事もできないの?」
「逆上がりできるまで帰ってくるな!」
「2重飛びができるまで家には入れない!」
「隣の河合君は、県で2番だったのに。」
「私の子供なのに!」
「中村さんの所の娘さんは、美術で賞をもらったそうよ。」
「アホ、クズ、カス!」
「私の子供なのに…」
「お前は短足だから、長ズボンは履くな!」
「お前は失敗作、欠陥品だ。」
「あの子が長男だったらよかったのに。」
「私の子供なのに。」
「お前なんか。」
【会社員時代】
「やれるかどうか聞いていない。やれ!」
「倒れるなら、その書類完成させてから倒れてな。」
「あれ、壊れたから、新しい人間用意して。」
「また、昔の夢だ。」
誰に話す訳でなく、一人つぶやいた。
忘れかけた記憶なのに。
鬱病を患い、薬を飲みだしてから頻繁に見るようになった。
両親が憎い。兄弟が憎い。会社が憎い。
僕をコケにしやがって。
お前らの性だ。お前らの性で僕が歪んだんだ。お前らの…
頭痛が酷い。吐き気もする。
「結局、また、同じ朝が来る。」