「回想終わりで叫ぶぜっ! 風ちゃんは俺の嫁だぁぁぁ!」by阿部隆浩
1
「リミッター解除の許可は出していないのだけど……あなた達、何か言い訳はある?」
怒っています、という雰囲気を醸し出しながら目の前に座る婆さんはそう俺達に尋ねた。
だが、俺達に対してそれが向けられるのはいつものことだから気にすることもない。
「悪いのはおいらじゃなくて、このナマケモノニートだ!」
「俺に責任転換してんじゃねぇぞ、クソ狐! テメェがあんなもんぶちかまそうとするからだろうが!」
ちなみにここは学園長室。
つまり目の前にいるのは、俺たちが通う高天ヶ原学園の学園長、皇叶江。
十三組の生徒からは『ババア』、『婆さん』、『お婆ちゃん』と呼ばれている。完全に年寄り扱いだな。
何で俺たちがそんな所にいるのかというと、よくは知らねぇ。模擬戦が終わると同時に、俺たちはここに連れてこられただけだからな。
「失礼なこと考えなかったかい?」
「いいや」
「はぁ……それよりも、何であんた達にリミッターなんて物が付いているのか、忘れた訳じゃないね?」
「…………」
「…………」
「おい、クソ狐。何だった?」
「さあ?」
「あなた達の魔力を押さえ込むためですよぉ」
言われてみればそんな理由だった気がする。
「あんた達、本当に忘れてたね」
「しゃーねぇだろ。リミッター外すなんて、そうそう起きることじゃねぇんだから」
「というか、か弱いおいらにそんな物必要ないんだけど」
「……お前たちと話してると頭痛がしてくるよ。まあ、そういうわけだからリミッターは許可がない限り外さないように」
「「善処する」」
俺達の言葉を聞いて大きなため息をつくと、
「今日はもう戻っていいよ。私も仕事があるからね」
その一言に甘え、俺達と先生は学園長室を後にした。
そんな俺達を待っていたのか、扉の外にある意味会いたくない奴らがいやがった。
「ここれはこれは、誰が学園長室に呼ばれていたのかと思ったら。学園一の落ちこぼれクラスの筆頭と東雲先生ではないですか」
優等生一組の生徒とその担任。
「また呼び出しですか。落ちこぼれ共の担任だと苦労しますね」
「彼らは落ちこぼれではありません」
「では、あなたの教育者としての問題ですかね。くくく……」
「テメェ!」
クソ狐が動こうとするが制して止める。
ここでまた騒ぎを起こすとこいつらがうるせぇし、それに先生の眼が細くなった。他の奴らはそれに気がつかなかったみてぇだが、俺は見逃さなかった。
一瞬だけダークモードになったらしいな。
「流石落ちこぼれ。すぐに暴力だな」
「怖い怖い」
「少しは最低辺だということを自覚しろよ」
「躾がなっていませんよ、東雲先生。あなたの腕で足らないというなら、私がやりましょうか? この一組担任の須藤が」
「結構ですぅ。行きましょう、二人ともぉ」
ニヤニヤと笑うあいつらを無視して、俺達は教室に向かう。
この時、隣を歩くクソ狐はずっと何かを呟いていた。
「あ、一真!」
「遅かったじゃない。ナニを、いえ何をしていたの?」
文字にしないと分からないボケは本気で止めてほしい。ツッコミできないから。
「学園長室だ。ババアにどやされてたんだよ」
「どうしてカズ君が?」
「っ!」
アッシュの声を聞くと、どんな内容でも身体が拒否反応起こしちまう。
「い、いや、俺だけじゃなくて、クソ狐も……って、あいつは?」
気づけば隣にいたあいつがいなくなっていた。どこに行きやがったんだ、あの野郎は?
「隆浩ならあそこ」
アリスの指さす先にでは、隆浩と他数名が何やら真剣な顔をして話し合っていた。
あの話し、内容はなんとなく予想できる。さっきの一組との出来事で間違いないだろう。
面倒なことにならなきゃいいがな。こういう時の予想は、たいていの確率で外れるんだ。
「はぁ……疲れたし寝るか」
昼休みに寝て起きたら、今日の最後の授業終了まで残り三十秒だった。最初から受ける気なんて無かったからどうでもいいんだけどな。
そういや、この授業の担当は東雲先生だったな。
「あらぁ、そろそろですねぇ。それじゃあ、今日はぁここまですぅ」
「起立! 礼っ!」
『ありがとうございました!』
「ありがとうございましたぁ。皆さん、気をつけて帰ってくださいねぇ。それとぉ、神童君に阿部君はぁ喧嘩しないで帰るようにしてくださいねぇ」
そう付け足して教室から出て行く先生。
足音が教室から聞こえなくなると、クソ狐はこう叫んだ。
「同士よ! 集会の時間だ!」
それを合図に全員が、どこから取り出したのか法被を羽織り鉢巻を巻いた。
何だこれ? というところまでが回想だ。
「つまり、一組のメガネが風ちゃん先生のことを悪く行ったことがこの奇行の原因、ということでいいのね?」
「さっきこいつらが叫んでいた内容から察するに、そうなんだろうな」
本当にバカばっかりだな。いつものことだからしょうがねぇけどよ。
しかもこの中には千歳にアリス、更にアッシュまでいやがる。このファンクラブすごいな。
「つか、クソ狐!」
「何だ、会員番号0032の神童一真」
あれ? ファンクラブなんぞに入った覚えはないのに、いつの間にか会員番号があるぞ?
「ちなみに私も会員よ。番号は0005」
手に負えないバカしかいないことが分かった。
まあ今はそんなことはどうでもいい。
「お前ら今、『一組は皆殺し』だとか物騒なことを叫んでやがったけど、具体的に何をするつもりだ?」
「決まっているだろ。それは……」
「それは?」
「それは…………」
考えてなかったなこの野郎。それに今考えてやがる。
誰かがフォローに入るのかと思ったら、誰も喋らねぇ。つまりこいつらも何も案を思いついていなかったわけだ。
そんな中、会員番号0005が一言。
「一組の生徒の部屋に侵入。そして練炭を置いてきて一酸化炭素中毒で暗殺」
恐ろしかった。物凄く恐ろしかった。
「採用!」
「採用すんなや! それにお前らは、この年で前科者になりたいのか!」
「なめるなよ、一真。おいら達はなぁ!」
『風ちゃんのためなら法なんて関係ない!』
この言葉を聞いた瞬間、あることが脳裏に思い浮かんだ。
普通なら思いつくこと事態ありえないが、こいつらに対してなら問題ない。
「……お前ら、先生をストーカーとかしてねぇよな?」
『……』
一斉に俺から視線を逸らしやがった。今すぐに110番に通報してやろうか。
集団の犯罪者が、今目の前にいますって。
「文句ばっかりだね、一真! 風ちゃんファンクラブの会員なら、少しは風ちゃんのために何かをしようとは思わないの!?」
何で俺は千歳に怒られてんだ? 意味が全く分からない。
というかこいつに怒られていると、小学生に叱られる高校生みたいな構図が出来上がるな。
「何か失礼なこと考えなかった?」
「…………いや、そんなことはないぞ」
しかし、望んで入った訳じゃないファンクラブに対して思い入れは全くない。あってたまるかこのやろう。
だがそんなことを今ここで言ってしまうと、今日が命日になっちまう。どうしたものか。
全員がこっち見てるけど、この変態クラスメイト共を納得させる名案が全く思いつかない。
「……」
「やっぱり一真程度じゃダメか」
クソ狐の一言に誰もが頷く。
今ここでぶち殺してやろうか、こいつら。今の俺なら出来るぞ。
「しょうがない。じゃあ一美の案をーーーー」
「姉さんにストーカーしてたこと言うぞ」
たったそれだけで全員が凍りついた。
姉さんがどれだけ強くて、どれほど恐ろしいのかをこのクラスの生徒は皆が身を持って知っている。
だから異常なまでの効果を発揮したわけだ。
「か、カズ君。嘘だよね?」
「は? 嘘に聞こえたなら、おめでたい耳を持ってんだな。俺は有言実行だぞ。でもまあ、テメェらが犯罪を犯さないと誓うなら姉さんには言わない」
さてどう来る?
と、身構えてみたがそんな必要はなかった。なぜならこいつら全員、自分の欲望を取るか、自分の身の安全を取るかで葛藤してやがったからだ。
俺なら間違いなく後者を取る。だって死にたくねぇし。
「よ、よし。各自、案を考えてくるように! 解散!」
その号令で全員が法被と鉢巻を取り、解散していく。
圧倒的な力に屈した『公式風ちゃんファンクラブ』であった。
「……」
「帰るよ、一真」
「あ、あぁ……」
さっきとは別人の顔をした千歳やアリス達が、すでにカバンを持って俺を待っていた。
つか、切り替えが早すぎないか? 俺は怖いんだけど。
「どうした、一真?」
「……」
このクソ狐もさっきとは違う。
多重人格かなにかですか?
「いや、何でもねぇ」
何というか、めんどーーーー、
「面倒なことになりそうね?」
ニヤリと笑いながら、俺にしか聞こえないように囁いた。
というか俺のセリフを取るんじゃねぇよ。
2
次の日。
運動場に集合している十三組の生徒の空気はとてつもなくピリピリと張り詰めていた。
それは今日の合同体育の相手が原因だ。
「今日の体育は一組と十三組の合同で行う。くれぐれも十三組は一組の足を引っ張らないように」
まあこうやって言われるのは俺達は慣れてるからな。今更教師に対してあーだのこーだの言わない。
まあ慣れていても腹が立つのは、ニヤニヤと俺達を見て笑ってやがる一組の野郎共だ。
「本当に器の小さなクソ虫共ね」
と、本当に虫、いや、それ以下の存在を見るかのような目で見る一美。
そして、
「へぇ、珍しく同意見ね」
と、こっちを見ながらアッシュが同意する。
つか、俺の方をみる必要性はねぇだろ。
「もう私のことを「お義姉ちゃん」と呼んでもいいのよ」
全く意味が分からなかった。こいつは何を言ってやがんだ。
「あなたをそんな風に呼ぶなら、お兄ちゃんの老廃物を食べ続けることを選ぶわ」
「んな選択肢がどこに存在した!」
何と比較してやがんだこいつは。
「静かにしろっ!」
教師の大声で両方の組の生徒が、ほぼ同時に静かになる。
と言っても完全に静かになったのは『優等生』の集まりである一組だけ。十三組の生徒は、お互いに分かる程度の大きさの声で話し続けていた。
進めるのに支障がないと判断した教師はそのまま話を続ける。
「組み合わせは一組と十三組の混合だ。文句があるなら十三組ではなく、俺に言うように。模擬戦で勝ったら聞いてやる」
文句を言いたそうにしていた一組はそれで止まった。
まあそうだろうな。この学校で教師の強さは異常。そんな教師に勝てる生徒なんて限られてくる。
ちなみにその生徒と言うのは、神童神無(姉さん)を筆頭とした会長連合、通称会長連の連中だ。あそこは化け物しかいない。
あそこには喧嘩を売りたくない。
「では組み合わせを発表する」
この授業が無事に終わることができることを祈らせてもらうか。
「よりにもよってお前が俺の相方とはな」
完全に見下したように言ってくるこいつは、何でも『優等生』一組のトップらしい。
名前は……えーっと。何だった? まあどうでもいいか。こいつの名前をどうしても知りたい訳じゃねぇしな。
「……さて、相手は」
関わるとめんどくさくなりそうだから、ガン無視して組み手の相手に目をやる。
そこには背の高い男子と背の低い女子。つまり片方は千歳だ。
「一真と組み手なんて久しぶりだね」
「ある意味お前とは拒否したかったんだけどな」
「へへへーーーーっ!」
突如現れた拳。
それにギリギリ反応して千歳はしゃがんだ。
「テメェっ!」
拳の主は千歳の相方の背の高い男子。
「勝手に喋ってんじゃねぇぞ、底辺共が。つか女ぁ。勝手に避けんな」
「何言ってんだ……」
「ああ? 格下がうるせぇよ。貴様等は俺達のサンドバックになってりゃいいんだ。特にこいつみたいな女をボコボコにすんのが楽しい訳なんだけどよぉ、やってもいいか?」
「止めておけ。無駄に力を消費するだけで、サンドバックにもならないからよ」
「ちっ……」
何なんだこいつは。危険すぎる。
「では組み手を始めろ!」
運動場にいた二クラスの生徒、合計すると九十人超が一斉に動き始める。
もちろん俺達も。
千歳の相方の大男。千歳から引き離すために、あの野郎へ走る。
あいつは危険すぎる。本能でそれを理解できていたから。
「おらよっ!」
しかし当たり前だが隣にいたあいつの方が、俺がたどり着くよりも早かった。
その拳は完全に油断していた千歳の腹へ吸い込まれていった。
「かはっ!!」
くの字に曲がる千歳の身体。
あいつの一撃が完璧に入っていた。
「何してやがる!」
「俺のオモチャに何しようが俺の勝手だろ? そんな当たり前なことにいちいち大声出してんじゃねぇよ」
そう言って奴は俺の隣に立つ一組生徒に眼で合図を送った。
何だ?
直後後ろから、キンッ、という高い音が聞こえてきた。
魔法っ!
そう判断して防御姿勢をとるが、それは攻撃魔法じゃなかった。
「そこで寝てろ」
受け身を取ることができないまま、俺は地面に倒れ込んでいた。
何が起きた?
そう思ったのは一瞬。体が動かないことに気がついた。
魔力の鎖……。
この程度の魔法なら、
「ぐっ……」
壊せねぇ!
もう一度魔力を全身に流し、鎖を引き千切るために力を体に込める。
だが、さっきと同じようにビクともしない。
「流石は落ちこぼれの十三組だな。これくらいの鎖がすると、壊せないなんてな」
あのババアか……。
多分、つか間違いなく昨日のことが原因だ。
リミッターを今までよりも強力にしてやがる。しかもこんな時に。
「おらっ、おらっ、おらぁっ!」
防御させる暇も与えず殴る、蹴るなど攻撃を続ける。
「お前はそこで、あのチビがボロボロになるのを見てろよ。いいだろ? お前らは落ちこぼれ。一人壊れたところで、代えなんていくらでもいるだろ?」
「んなわけあるかぁぁっ!」
大声で叫んだ。でも叫んだだけ。それが行動に結びつくことはない。
目の前で傷ついていく千歳は反応が薄くなっていた。
蹴られているから反応している、という状態だ。
「もう、止めろ!」
「じゃあお前が止めてみろよ」
「ぐっ……ああぁぁあぁああ!」
「くははははは! 本当に会長の弟かよ。こんなのが弟なんだとしたら、会長も弱いんじゃないか?」
ブチンと何かが切れるような音。それが俺の頭の中で聞こえた。
聞き間違いじゃない。俺の理性が完全にブチ切れた音だ。
「ぶっ殺す!」
切れた理性を本能が一気に食いつぶし、俺の視界に映る物は全て真っ赤に染まっていく。
「はぁ? 鎖も切れない奴が何言ってんだ?」
「ぶっ殺す、って言ってんだよ! このクズがぁっ!」
俺の汎用デバイスが警報を鳴らしている。リミッターを無理矢理はずそうとしているからだろう。
んなこと知ったことか!
一組は、こいつらは俺が壊す!
「なっ!?」
バキンという音が響き鎖が砕け散る。
立ち上がった俺の手には黒月が。それを一気に振るう。
「させるか!」
「もう沈め」
刃はこいつの首へ向かう。
まっすぐ振り抜けばこいつの首は折れる。
残り数ミリ。
そこで俺の腕は絡みついた鞭によって、強制的に止められていた。
「何してるのかしらぁ、クソニートォ?」
鞭の主は俺達の担任。
俺達の目の前で以外はならなかったダークモードで立っていた。
「放せ。邪魔するならテメェも敵だ」
「それは困るわねぇ」
いつもなら怖いと感じる作り笑顔も今は何も感じない。
むしろ怒りの感情を増幅させるだけ。
「東雲先生! 授業の乱入は困ります!」
「これが授業ぉ。おかしいわねぇ。私にはそうは見えないのだけどぉ」
「これはどんな状況にも対応できるようにーーーー」
「へぇ……まあいいわぁ。ウチの子達は医務室に連れて行くからぁ、邪魔しないようにぃ。で、その前に」
体育教師から俺に視線を戻した先生は、
「面倒だからぁ、少し寝てなさいぃ」
魔法一発で俺の意識を刈り取っていった。
3
目が覚めると知らない天井が視界に入ってきた。
いや知ってるな。学校の医務室だ。今までも何度か来たことがあるし。
「あ、目が覚めたんですねぇ。よかったぁ。少し強すぎたから、もう目を覚まさないのかってぇ……ごめんなさいぃ、神童くぅん」
いきなり号泣し始めた先生。
「いや、泣かれても困る」
「あ、ご、ごめんなさいぃ」
「……そんなことよりも、何で止めた? つかどこから見てた?」
「神童君がリミッターを強制的に外した辺りからですぅ。止めた理由としては『やり過ぎ』だからですよぉ。あのままだと彼は死んでましたからぁ」
「当たり前だ。殺す気だったからな」
「……この話は後回しにしますぅ。今は神童君に状況を報告しないといけませんのでぇ」
そこでようやく千歳のことを思い出した。
「千歳は!? 千歳はどうなった!?」
「授業は強制終了ぉ。すぐに病院につれていきましたのでぇ、命に別状はありません。ですがぁ、身体強化して暴行されていたため複数箇所の骨折がありますぅ。なのでしばらく入院が必要ですねぇ。他の子達は打撲程度なのでぇ、一応問題ありません」
「……千歳」
一組のあの野郎共……。顔を思い出しただけであの時の感情が蘇り始めた。
このままだと押さえられなくなる。
「先生」
「何ですかぁ?」
「クソ狐と一美、アリスにアッシュは大丈夫なんだよな」
「はいぃ」
「なら学園長室に行くように伝えてくれ」
「え? え?」
「頼んだぞ」
そう言ってベッドから下りると、まっすぐ学園長室へと走った。
ババアに文句言わねぇと気がすまねぇ。
「そろそろ来る頃だと思っておったところじゃよ」
「そうか。なら、何でここに来たのか理由は分かってんだろうな。クソババア」
「ウム。今回ばかりはタイミングが悪かったといっても、わしがリミッターの出力を上げたことが原因者からの。すまなかった」
あの性悪ババアがこうも素直に謝るとはな。完全に予想外だった。
「気色悪いわね。あなたがそんな簡単に謝るなんて。何を考えているのかしら?」
「……」
「ババア。一組と戦わせろ」
「それはならん……」
まるで俺がそう言うのが分かっていたかのように、ババアは返答しやがった。
それは大体予想通りの内容。このババアはずっと俺達が他のクラスと模擬戦をさせてこなかった。
理由は知らねぇがな。
「と、言いたいところじゃが今回はそういうわけにもいかん。今までは目をつむっていたが、今日はやりすぎた。少しは痛い眼をみたほうがよいじゃろう」
「珍しいな。婆さんがおいら達のやりたいようにさせてくれるなんて」
「今回だけじゃよ。さて、お前たち。どう決着付けたい?」
「一人ずつ集団リンチ」
「部屋に忍び込み一酸化中毒でーーーー」
「全員を全裸で吊し上げて火炙り」
「爪を一枚ずつ剥いで、次に全部の歯を一本ずつ抜いていく。最後には指の骨をーーーー」
上から順番に俺、一美、隆浩、アッシュの案だ。
全員が言い終わったところでババアが却下しやがった。案を聞いてきたのはそっちだろうに。
「バカ者! 模擬戦の範囲内じゃ!」
「「「「チッ」」」」
「あははは……じゃあ、私から提案なんですけどーーーー」
アリスの提案。それは俺達にとっても納得できるものだったので、即決定したわけだ。
そして翌日。
学校にある全ての掲示板に掲示物が張り出された。
『一週間後。一組と十三組の決闘を行う』
というもの。
さて一週間後が楽しみだ。
《次話へ続く》