追想
あの小娘の家にある、とある部屋。
誰もいないと思っていたその部屋の中からは、小さな声がずっと聞こえてきて幽霊かと思った。けど、その声は兄である神童一真の物だと直ぐに分かった。
ふすまを開けると、真っ暗の中お兄ちゃんは立っていた。ずっと、何かを呟いている。
「お兄ちゃ……」
「俺が守らなきゃ、守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ守らなきゃ……」
この時私は大きな勘違いに気がついた。
壊れたのは家族という物が壊れただけだと思っていた。だから両親二人が帰ってくれば全てが元通りになると思っていたけど、それは大きな間違いだった。
壊れていたのは家族というよりも、家族を作る私達が壊れてたということに。
新しい家族は作ることが出来ても、もう元の家族には戻ることはできないということを。
「お兄ちゃん……」
お兄ちゃんはこの時、自身に強力な誓いという名の呪いを自分自身でかけてしまった。
家族を傷つけるものは、たとえそれが自分自身であろうとも赦さない。そんな呪いを。
そうなってしまうと、お兄ちゃんを守るものは自分自身でさえいなくなってしまう。だから私も呪いを自分にかけた。
『お兄ちゃんを傷つけるものは、たとえ自分自身、家族であっても赦さない』
それが今から4年前のある日のこと。