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高天ヶ原学園十三組  作者: 村正
第一章
14/25

「妾のせいにされても困るのう。のう、我が主様……ん? それはいろいろとダメだ? じゃあ、兄上……妾じの初めてを貰ってほしいのじゃ」by玉藻

どうも、お久しぶりです。

かなり間を開けてしまいましたが、ようやく最新話を完成させることができました。

なのでさっそくの更新です。

それでは最新話、お楽しみください。

   1




 先ほどの大きな音を確かめるために外に来ていた6人は模擬戦場に向かっていた。

 あの音が模擬戦場から聞こえたと判断した訳ではなく、断続的にそちらから何かが爆発するような音が聞こえてきているからだ。

 しかし千歳と杏子以外の4人の足取りが重い。音の聞こえる方へ近づくに連れて、どんどんそれは悪化していく。


「さっきから、気持ち悪いんだけど……」

「確かに息苦しい感じがするわ。何のかしら?」

「そうですか? 私は何ともないですけど……」


 息苦しさを訴えるアリスと一美。そして同じようにしているアッシュと鈴蘭だが、杏子は何も感じていなようでそう返す。その理由に他の彼女達は気が付いていた。


「それはしょうがないですよ。私達の調子が悪い原因は、この場に漂う魔力ですから」

「濃すぎるというか、異質なのよ。普通の魔力とは違うのだけど、そこにいるカズ君の金魚のフンは何も気付いていないようだけど」


 『魔力』と言われて杏子は自分に何も症状が出ていない理由を、その時知ることが出来た。だが、それでは片付けることのできない人物が一人いる。それは戦闘を歩く小柄な少女である。

 彼女は、杏子のように『魔力無効化体質』を持ってるわけでもない。なのに平然とした顔で歩いているのだ。

 これに対して何も思わないわけがない。


「ホントうるさいワカメだなぁ……さっさと干からびて出汁になればいいのに。言われなくても気づているよ。九頭龍と九尾の魔力でしょ?」


 その一言に、杏子以外の全員が固まってしまった。


「いつもは二人とも魔力を九頭龍や九尾も手伝って、周りに影響が出ないようにしているんだよ。それでもここまで周りに影響が出てるってことは、二人とも本気なんだと思う」

「本気って……カズ君、こんな力を持ってるなんて……」

「最高すぎるわ、お兄ちゃん……」

「「その力で私を虐めて欲しいわ」」


 頬を赤く染めながらそんなことを平然と言ってのける一美とアッシュによって、今までの真面目な雰囲気が全く無くなってしまう。良いことなのだが、発言が発言なのでいろいろと問題がある。

 当の本人達は全く気にしていないどころか、お互いをけん制し合っている。


「いや、それ死ぬから……」


 アリスが冷静にツッコミを入れるが、二人は妄想の世界に入っているのか無反応のまま。足は真っ直ぐ同じ方向に向かって動いているが、正気に戻るまで時間がかかるだろう。

 そのうちにアリスは聞いておきたいことがあった。


「杏子が大丈夫なのは体質だとしても、千歳は大丈夫なの?」

「…………あれ? 言ってなかったっけ?」

「え?」

「私の契約獣も”九”の数字を持ってるんだよ。私はクッキーって呼んでるけど、真名は九鬼くき。それが私の契約してる最強の鬼の名前だよ」


 妄想の世界にダイブしている二人を除いた三人は絶句。初めて聞いたという顔をしていた。

 千歳としては大分前に伝えたつもりでいたのだが、そうではなかったとたった今気が付いた様子。


「初めて聞いたわよ!」

「そんなに怒ることじゃないよ、アリスちゃん」

「怒ってないけど……鈴蘭は知ってた?」

「何らかの契約獣と契約していることは知ってましたけど、アリスさんと同じくらいしか知らなかったと思いますよ。というか、お兄ちゃんの時も契約してからしばらくしてからだったし……契約した人は大事な伝え忘れるのが当たり前になってるのかな」

「たぶん、一真に問い詰めないといけないことが増えてるかも……」

「それってどういう――――――ッ!?」


 千歳に聞き返そうとして、鈴蘭は感じた魔力に足を止めることとなる。正確には止めざるおえなかった、というのが正しい。

 もちろんそれは鈴蘭だけではなくアリス、そして妄想に浸るどころか溺れきっていた変態二人も戻されて立ち尽くしていた。誰も恐怖と本能が鳴らす警報から、その場から足を動かすことが出来ない状態だ。


(クッキー)

――――――あの二人、自分達が張った結界の限界を忘れて力使っておる。このままと、被害は拡がるだけじゃぞ――――――


 九鬼の言葉に千歳は呆れて何も言えなくなったが、そんな悠長なことをしている場合ではないとすぐに身体を動かす。

 千歳の額に生える一本の角。

 そして魔力で作った剣を地面に突き刺す。


「九鬼の魔力で壁を張った。これで少しは楽になったろ?」


 雰囲気の変わった千歳に杏子は戸惑うが、千歳自身はそんなことおかまいなしに状況を進めていく。


「あ、ありがとうございます」

「小娘にしては良い仕事をするじゃない」

「小娘は余計だ。あたしはあのバカ二人のとこに行ってくるからな」

「あんただけカズ君に会うなんておいしいこと――――――」

「うるせぇよ。今はそんなこと言ってる場合じゃねぇことくらい、テメェにも分かるだろ?」

「この変態は私が止めておくわ。だから早く行ってバカ兄と駄狐を止めて来て欲しいわね」

「分かった」


 魔力の剣から手を放すと、今度は杏子の方に顔を向ける。


「杏子」

「え、あ、はいっ!」

「ついてくるなよ?」

「いや、でも私ならこの魔力の中でも動けますし……それに、あなただけじゃ」

「問題はそこじゃねぇんだ。喧嘩してやがる二人が本気を出して契約獣の力を使っているということが問題なんだよ。”九”の数字を名前に持つ契約獣と契約している人間は、存在するだけで災害と同じだ。そんなのが本気の力でぶつかっているということが、どんなことを意味するのか分からないわけじゃねぇだろ?」

「それは……」

「そんな災害に対抗できるのは、今の所同じ災害。つまり私だけだ」


 今のところ。

 つまり近い未来、対抗できる物が、または者が現れると分かっているかのような口ぶりに違和感を感じたが今はその時ではないと言葉を飲み込む。


「それに、お前には頼みがある」

「頼み、ですか……」

「ここにいる三人のことを頼んだ。絶対にこの結界の中から出すなよ」

「わ、分かりました」


 杏子の返事を聞いた千歳は一人結界から出ると大きく跳躍する。

 今彼女がいる場所から目的地まではかなりの距離がある。学園と言っても高天ヶ原学園は初等部から高等部まである、いわゆるマンモス校。その敷地面積は小さな町ほどある。


「本気、といっても二人が九本目まで出してないことを祈るか……」

――――――そうも言っていられないみたいじゃぞ、お嬢――――――

「は?」

――――――どっちかは分からないが、顕現せておる――――――

「ホント、加減を考えやがれ!」


 そう吐き捨てた千歳は一気に走る早さを上げる。

 これ以上魔力汚染の範囲を広げないためにも。




   2




『いい加減に潰れろ!』

「断固拒否する! テメェが斬られてろ!」


 顕現した魔力の塊である巨大な九尾・玉藻の前足を、人間の姿のまま黒月だけで受け止めている。本来ならそんなことは出来る訳もない。やろうとしたら、その瞬間に人間せんべいの出来きあがるんだからな。

 だが、俺はせんべいにならないで人間の姿を保っている。

 それは俺が試したかったことの一つが成功したという証ということ。


――――――『神降しかみおろし』、間にあったな――――――

(間にあってもらわないと、お前の手を喰った意味がねぇからな)


 『神降し』。

 それは契約獣と魔力的に完全に融合することをそう呼ぶ。

 メリットとしては”九”の契約獣に対抗出来る力を手に入れることができる。デメリットとして、尋常な力を身体に宿すことから連続使用が出来ない上に使用時間が短い。そして身体にかかる負担が大きいことが、どうにか改善出来ないかと俺は考えている。

 そんなことよりもだ、これを発動すると外見的にも変化が起きる。クソ狐であれば九本の狐の尻尾が現れ、千歳であれば額に角が生えるといった風にだ。そして九頭龍と『神降し』した俺の場合、


「そんなに変わったようには見えねぇな」

――――――結構変ってるぞ―――――

「そうか?」


 龍の腕ではない右手を見ればどう考えても人の物ではない爪と、甲の辺りにまである黒い鱗。これ、九頭龍の物か? つか、これが俺に現れた変化ってやつか。

 他にも変化があるかもしれないが、今は確認している場合じゃあない。すぐに片づけなければならないのは、現在進行形で俺を潰そうとしているこの狐だ。

 対処方法として斬る、弾く、クソ狐ごと消滅させるの三つ。

 一番簡単なのは斬るだが、狐自体に罠がないとも限らないからないな。こんな至近距離で爆発なんてされたら防御は絶対に間にあわない。それだけはごめんだ。

 二番目にクソ狐ごと消滅、だがそれだけの魔力を溜めるのはかなりの時間がかかる。そもそもこの前足を抑えるだけでも面倒なのに、同時進行で魔力を溜めるなんて更に面倒くさい。

 だとしたらやることは簡単、弾き上げればいい。そうすれば離れた位置から九尾を斬ることが出来る。


「ふんぬっ!」


 黒月と俺の身体に魔力を流し、上から押さえつけている狐の前足を全力で弾き上げる。

 玉藻の身体は後ろに仰け反るようにして体勢を崩す。すぐさま全力の高速移動でその場から離脱して、九尾の狐を真っ二つにするべく魔力を込めた黒月を頭上に振り上げる。

 素早く体勢を立て直した玉藻も反撃のために口を大きくあけて巨大な魔力の球を作っていた。

 あれ、ぶっ放す気か。

 避けたら……とんでもない被害になるんだろうな。

 しょうがねぇ、ぶった斬るとするか。


「九龍之太刀一刀!」


 赤黒い魔力が一気に凝縮されて、黒月からあふれ出していた魔力が完全に収まる。


『招来!』


 玉藻の身体から放電される大量の雷が魔力の球体に吸い込まれていく。そして始まる放電と同時に、空気中の魔力も収束していく。

 そんなのありかよ……あいつ、本当に殺る気か。

 つーことは一刀じゃ無理だ。ありゃあ五刀以上じゃないと対応できない。


九龍くろ!)

――――――言われなくても分かってる!――――――

「ぐっ……」


 一刀を発動させるために溜めていた魔力に五刀以上の魔法を発動させるために必要な魔力を追加する。本来ならば溜める時間が必要なのだが、今回はそんなことは言っていられない。そのため一瞬で追加したことから俺の身体、更には『鬼臓』と『天心』にまでとんでもない負担がかかる。

 すっげぇ気持ち悪い……。


「九龍之太刀六刀!」


 顕現した六匹の黒い龍が黒月の刀身に巻きつき、一本の巨大な魔力刀に変化する。

 足を開き、体勢を低くする。

 そして切っ先を地面に向け、見つめるは一点だけ。

 魔力球の中心。正確にはその向こうに立っているクソ狐を俺は睨む。


『六尾!』


 全く同じ数字を言い放つ俺とクソ狐。

 こいつと気が合うとは、あいつと同じ考えをしているようでムカついてくる。つか、気になったんだがあいつの六尾、前に一度見たことがあったがあんなにデカイ魔法だったか?

俺としてはこの魔法、九尾顕現時のみの限定魔法かもっと数字が上の魔法だと思ったんだが……。


鬼火おにび! 九尾Ver.!』


 間違いなく限定魔法だ……限定だが、大きさ違いすぎるだろ。

 絶対に周りへの被害を、全然考えていないことが丸分かりの魔法だ。

 あれごとクソ狐を斬る!


「死天龍封刃!」


 次の瞬間には二つの魔法は、俺達の間でぶつかっていた。

 魔力球は刃を通さず、龍封刃は鬼火を完全に受け止めている。この状況は数秒近く変らない。

 おそらく、何かしらの動きを見せなければこの光景に変化は見られないだろう。だからこそ俺もクソ狐も次の行動に移る。


「九龍!」

『玉藻!』


 一瞬で消える九尾の狐。

 それと入れ替わるように九つの首を持つ漆黒の巨大な龍が出現する。

 完全に状況は交代。

 クソ狐は『神降し』に移行していた。


『けし飛べ、クソ狐!』


 九つの顔の前に黒い球体が出現する。


『九龍之太刀五刀!』


 そして全ての顔が下に見えるクソ狐を見つめる。

 本来ならば広域用の魔法であるため同時に、そして同じ座標に撃ちこむことは出来ないように作っている。しかしこの方法なら違うタイミングで撃つことが出来るから、全てをクソ狐に叩きこむことが出来る。


『大黒天!』

「容赦なさすぎだろ!」


 一つ目の魔力球が撃ちだされるが、雷撃によって撃ち抜かれる。

 反撃されるなら、対処は簡単。反撃することが出来ないように、間隔を短く撃ちこんでいく。三発目までは打ち消されていたが、その後の攻撃は全て同じ位置に叩きこまれた訳なんだが……、


『何というか、手応えがねぇ……』

――――――相棒、上だ――――――


 たとえ魔力で身体強化しても大黒天の大きさはほぼ1km。そんな物が真上から落ちてきているわけだから、落下地点のど真ん中にいたクソ狐でも完全に逃げ切るなんてことは不可能。なはずなんだが、あいつは俺より高い場所で秋月を構えていた。

 光速移動でここまで来た、ということは簡単に想像が付いた。

 それよりも気になっているのは、あいつの周りに浮いている数枚の同じ大きさの紙。

 あの札には文字を使用して魔力が籠められており、書かれている内容によって用途が変わってくる。クソ狐が魔法に付加能力を付ける時によく使用する。


「招来・一尾!」


 クソ狐の大勢は完全に砲撃を撃つ体制に入っている。

 数字としては零の次。

 九まである魔法の中では下の方になるが、実際侮ってはいけない。使い方によっては、八までの魔法を簡単に超えることもある。

 発動前に九頭龍の頭に張り付けられるクソ狐の札。

 ハッキリ言って嫌な予感しかしない。


霆雷ていらい!」


 ど真ん中の頭に直撃。

 直後、一気に雷は威力を増して隣の頭にも飛び火。そしてそこでも威力を増して、更に隣に移る。

 それが何度も何度も繰り返され、全ての頭を吹き飛ばした。だが雷は止まらない。

 首を伝って身体にまで走っていく。

 あの札、雷の威力の強化と札がある部分に飛び火するような術式が組まれたのか……と、そんなことを考えている場合じゃないな。このままだとこっちが黒こげになっちまう。


『九龍! 魔力を解放しろ。じゃねぇと雷が残っちまう!』

――――――分かってる!――――――


 纏っていた魔力が辺りに散る。

 それを瞬時に龍の左手に吸収させて『神降し』のための魔力へ変換させ、再び魔力を融合させていく。また俺の右腕にも鱗が出現する。

 それが確認出来たと同時に身体強化の魔法を重ねがけし、跳び上がる。

 一度の跳躍で数十メートル上空にいるクソ狐のところまで到達する。と、同時に黒月を構える。


「ふっ!」


 赤黒い魔力を纏った漆黒の大刀と、


「しっ!」


 金の魔力を纏う小太刀が――――――、


「そこまでだアホ共!」


 突然の侵入者によって受け止められる。

 魔力コーティングか……それでも、ふつうの魔力では”九”の契約獣の魔力が流れている物を触れると同時に『神蝕』と同じ現象が起きてしまう。

 そんな無謀なことをする奴がいるのか、と思ったが一人する奴がいることを思い出した。


「千歳」

「千歳様」


 藍色の魔力を纏い、額から角を生やしている俺の幼馴染がそこにいた。

 つか、魔力漏れと邪魔者が入らないように魔力と物理の結界を重ねて貼っていたわけだから、そうそう入ってこられないはずなんだが。

 そう考えていると――――――、


「あの物理結界ならぶっ壊したぞ」


 さらりと言ってのけるこの小娘。

 簡単に壊されないよう、かなり強度を高めてある。しかもそのためにそこそこの魔力をつぎ込んで作った物を、あっさりと壊したと……。

 もう嫌だ、泣きたくなる。


「九頭龍と九尾の魔力をまき散らしながら、こんな時間に何してやがる」

「まき散らしてるわけねぇだろうが」

「その割には寮まで一キロくらいの辺りにまで魔力が漂ってたぞ」

「おい、クソ狐! テメェ、結界貼る時に手ぇ抜きやがったな!?」

「そんな訳あるか! 風ちゃんに危害が及ばないよう、完璧な結界を作ったとおいらは言う!」


 こいつが先生のために何かをするとき、適当な仕事はしないだろう。公式ファンクラブまで作った創立者なんだから、と言いたいがこの野郎の判断基準はそれなのか?

 だとしたら色々と問題がありすぎるが、こいつは何とも思ってないんだろうな。


「それが出来てねぇから言ってんだろうが、駄狐が! テメェらこの中で何してやがった?」

「……」


 そう言われて俺はクソ狐との戦闘の内容を全て思い返す。

 五の魔法を使ってクソ狐は九尾を顕現、俺は『神降し』。それを逆転させて六の魔法……あーー、絶対にどっかにひびが入ってるな。

 隣のクソ狐も顔を真っ青にしている。

 俺と同じ答えに辿り着いたんだろうがもう遅い。目の前に立つ鬼は、俺達の感情の変化に気がついているようで、


「全部話してもらおうかクソニートに、駄狐ぇ!」

「「拒否っ!」」


 そのために俺もクソ狐も千歳から逃げるために臨戦態勢になる。しかしそれがいけなかった。

 戦闘態勢をとる前に腕に何かを巻くなりすれば良かった。

 タイミング悪く雲が晴れて俺達の、俺の腕を月明かりが照らしてしまう。


「おい、一真」


 こいつだけには、千歳だけには見られてはいけなかったものがバレてしまったことから俺は完全に固まってしまう。

 隠すことも、言い訳を考えることも出来ない。


「その腕、何だ?」

「っ!」


 マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ!


「それ、『神蝕』や『神降し』じゃないよな……何なんだ、それ?」




   3




 学園の廊下。 

 そこを大勢の足音が響き渡っていた。

 こんな時間に学園の生徒が歩くことはほとんどない。その理由は学園は夜間完全に施錠されているからだ。

 しかしその者達はそんな完全に施錠された建物の中を歩いている。

 そんなこと自体が異常なのだ。

 その者達が来るかのように、彼女はそこに立ち待ち構えていた。


「こんな時間に何のようですかぁ? この時間、生徒の皆さんは校内に入ってはいけない決まりですよぉ、織田さん?」


 数人の侵入者の先頭には、先の襲撃の時に行方不明になっていたはずの放送部委員長である織田有希の姿がある。

 その後ろに立っている人間の中にも数人行方不明になっている、高天ヶ原学園の女子生徒の顔があった。その服装もあの時、襲撃してきた『白き百合リヒト・リーリエ』と名乗る集団が身につけていた物と同じ。


「あなたが首謀者、という訳ではないですよぇ?」


 返答はない。

 有希の瞳は何も映しておらず、ただ顔と同じ方向を向いているだけのように見えた。それは他の女子たちも同じ。

 そんな彼女達に言葉を求めても無駄だと判断した風路がアーマメントデバイスを構えると同時に、そろって口を開いた。


『我が名はレギオン。我々は、大勢であるがゆえに』

「っ!」


 発せられたのは自己紹介のように聞こえる、意味のわからない言葉。

 しかしその言葉を聞いた風路の表情が大きく変わる。

 

「完成ぃ、してたんですねぇ……だとするとぉ、放置すると少し不味いわよねぇ。ここで、全員拘束させてもらうわよぉ。良いわよねぇ? 聞こえているんでしょぉ、黒幕の誰かさん?」


 黒幕が誰なのか分かっているかのように話す彼女は、いつの間にか風路の表情は笑みに変っていた。

 ピシィッ、と風路の鞭型アーマメントデバイスが床を叩いた音が静かな校内に響き渡る。その音を聞いて初めて有希達もアーマメントデバイスを展開する。

 しかしそれは目の前の敵が攻撃してくるから、自分もするといったような雰囲気。

 彼女達からは意思を感じることが出来ない。


「じゃぁ、これから補習授業の開始よぉ。私はとぉぉぉってもスパルタだからぁ、気をつけることねぇ!」 


   《次話へ続く》

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