(3)
三、
面接の翌日、山上幸太はアルバイトをしている店に出勤し、上着をいつもの制服に着替えレジに立って接客などをしていた。
幸太は昨日行ってきたコンビニのバイト面接の事を思い出していた。
広田の話をきいて、何となく自分のこれまでと重ね合わせていた。人に期待されたいと思い、夢に向かって進み、最後に人に裏切られる。
「たしかに酷いはなしだな……」
バックヤードなどの仕事をすすめひと息ついた時、店長の倉田がやってきた。
「山上、行ってきたか」
いつも眠そうな目をした色の浅黒い小太りな男だ。よれよれのシャツ、汚れたジーンズ、そして、なぜかこの上なく糊のきいた制服をいつも着ていた。こいつがなんで接客なんかできるんだ、といつも幸太は思っていた。見ているだけでこっちが不快になるような印象だっだ。
幸太は立ち上がって倉田に挨拶した。
「店長。お疲れ様です。ええ、行ってきました」
「で、どうだった?」
「どう、っていうと?」
倉田は幸太の返事に少しいらっとしたようだった。鈍いヤツだとでも思っているのであろう、何を聞きたいのか要領を得ないのはお前のほうだ、と幸太は思った。
「だから、向こうの店の様子や、その面接相手の事だ」
「ああ、面接したのは店長の、確か、広田という人です」
「お、で、どうだった?」
こいつは、どうだったって聞けば相手が何でも答えるのとでも思っているのか、幸太はそんな事を思いながらも、素直に広田の印象を語った。
「そうですね、まったくでたらめな人でした。最初から最後まで自分でしゃべってました。まったく信用できない感じでしたね。よくあれで店長ができるもんだなと思いました」
「ん、それで?」
「自分のこれまでの生い立ちを話していたような、そうですね、あの店ができた理由なんかをずっと語ってました。で、最後に、やるかって聞かれました。まぁ、ここは断りましたけど、仮に普通に働きたくて面接に行っても断ったでしょうね」
ここまで語って、あの面接の話を何気によく覚えているな、と幸太は自分自身に感心していた。もう少し話すこともできただろうが、何となくこの倉田には話したくないと思った。仕事も次から次へと発生するので、話すのはもう面倒だと感じていた。
「そうか、よくわかった」
倉田はそう言ってバックヤードから出て行った。ちょっと緊張しているような感じだった。
店頭で来客を知らせる長ったらしいチャイムがなった。この時間のレジは主に幸太の担当だった。幸太は、店内の方へ急いで戻った。
店頭には、白い制服を着た近所の女子校の生徒が立っていた。もう少し早い時間だとこの制服を着た生徒で店内があふれいるのだが、この時間にこの学校の生徒が姿を現すのは少し珍しいことだった。
「山上幸太さん、お話があります」
菓子パンの袋をレジに差し出しながら女の子は幸太に話しかけた。その白い手に幸太は見覚えがあった。




