(17)
十七、
店舗内はものすごい風が吹いていた。深夜組の筋肉質の方があらかたの物を吸い出していた。現地組と言われた人なのだろう、大きな窓を外しに掛かっている者が何人かいた。
「幸太、ここから奴らをスキャンできると思うか?」
広田はレジから幸太に声をかけた。指先がレジを指している。
「さぁ、どうでしょう。先輩のコンピュータは多分、駐車場のバスですよ。中にコンピュータが一杯並んでましたし」
「見たのか。そりゃいい。あそこだけってなら、あのバスをどうにかしちまうまでだ。バスにコンピュータか。そうか、自分たちのやり方を本部連中にも知られたくなかったのかな……どうりで……」
広田はつぶやいて、このレジもいいぞと深夜組に声をかけた。
店内はあらかた『掃除』が終わっていた。窓も大きなものはだいたい外されている。
「できるだけリサイクルしねーとな。元は山田さんのものだ、行くぞ、幸太」
広田は、店の外へ走り出していく。バスの方へ向かっていく広田に幸太もついて行った。
細身の深夜組の姿が見えなかった。恐らく店舗の裏にまわっているのだろうと幸太は思った。がたがたと店の裏手から道路工事のような音が聞こえた。
バスには現地組の人間がとりついていた。中に人間がいるようだった。スモークの貼った運転席からかすかに人影が見えていた。エンジンが掛かっていていつでも出発できるようだった。
広田が現地組の一人に声をかけた。
「どうだ、中に何人残ってる?」
「多分二人です。中年男性と若い女性。このバスにとりついたとき中には誰もいませんでした。そしたら店舗内から出てきたその二人に、乗り込んだ三人がやられて放りだされました。そのままその二人が中に入ったままです」
「鷺沼と倉田だな。そか、わかった。やられた三人にはゆっくり休んでもらってくれ」
広田はこう指示して幸太に向かって振り返った。
「さて、ラスボスだな、こいつも包んじまうか」
「包んじまうって、どうする……」
幸太が尋ねようとしたとき、広田は答えのかわりに店舗の方を指さした。すっかりシートで覆われた店舗に向かって空から、大きなフックのような物がついた太いワイヤーが4本、落ちてきた。空には大きな飛行船のような物が見えた。全体を黒く塗装しているらしくわずかな光を受けて鈍く反射している部分があってかろうじて確認することができた。太いワイヤーはそこから伸びてきていた。
店舗の屋上で何人かが作業しているのがシートにうつった人影でわかった。
やがて何人かがシートの下から出てきて店から離れていった。
突然大きな爆発音がした。店舗のシートから煙がどっと噴き上がってきた。とっさに耳を防ぎながら爆発の衝撃音から耳を守ろうとした幸太は、また、信じられないものを見た。
爆破によって地面から切り離された店舗が、空中へゆっくりとつり上げられている。
屋上には深夜組の細身のほうが、ワイヤーにつかまって立っていた。
「そっちは任せた!」
横で広田が手を振っていた。