(14)
十四、
「幸太、このトレーラー部分には、見たとおり店内部分とバックヤード、そして事務所部分がくっついているんだ。そんでこれを引っ張ることのできるでかい牽引車を用意した。これだけのものを引っ張らないとならないからな、スゲーパワフルなものだぜ。海外製の古いやつで、今時ディーゼルエンジンを積んでいるんだ。深夜組の力を借りて改造するのに、結構な金がかかったな。その話はおいおいな。じゃ、幸太、お前はここのレジにいろ。そこが今日のお前の仕事場だ」
幸太は狭いスペースにあるレジの前に立った。店内は蛍光灯が半分しかついていないので薄暗かった。なにより窓がないので少し息苦しい感じがした。幸太は売り場に並んでいる商品を見たが、所々見たことのないものが並んでいた。
「なんか物騒なものが並んでるけど、あれなんですか」
幸太は広田に聞いた。
「ああ、まぁ爆薬とかだな。必要な量を陳列棚の島ごとに入れ替えてある。ま、今日はそんなに多く入れ替えてないな。だが、バックヤードには『在庫』が山盛りだぜ」
「なんでコンビニなんです。それ用の車とかにしないんですか」
幸太は単純な疑問をぶつけてみた。
「だから言ったろ、ロマンだって。まぁやってみた、と言うのが正直な所だが、なかなかどうしていいモンだぜ。こういったことにも使えるし、キャンプにいったり、このまま移動式コンビニとして営業に出たり、緊急事態のときもこの部分だけでも脱出してしまえば、まぁ何とかなるしな」
広田は自信満々に答えた。そんな便利な物かな、と幸太は疑問がぬぐい去れなかった。ダイナマイトとかそんな物騒な物を使うことがそんなに頻繁に起きうるものなのかも気になった。
「今日は爆薬積んでるみたいなんですけど、なかったことにするって、まさか爆破してしまうんですか? あそこ住宅地のなかですよ」
少し心配になって幸太は尋ねてみた。
「ああ、それなら大丈夫だ。現地組と深夜組で準備は万端、被害が及ばないように仕込んである。それに周辺の人には自治体の旅行で出払ってもらってる」
「それってすごいお金かかるんじゃ」
「ま、そだな。まぁロマンだよ、全部。こんなこと、あったら面白いじゃないか」
そう勝手に結論づけて、広田は店内から出て行った。
「なんか、もう無茶苦茶だな」
幸太はつぶやきつつも、何がはじまるのか少しわくわくしているのを感じていた。