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プロローグ

「こんにちは、広田です。どうぞよろしく。このコンビニの店長をやってます。みんなからは店長っ呼ばれてますけど、 小学生の頃からベンリヤって呼ばれてるから、みんなにはベンリヤって呼んで欲しいと思ってるんです。だからもしこの店で働くようになったらオレの事はベンリヤって呼んでね。オレはスタッフみんなにベンリヤって呼べってお願いしてるんだけど、どうも恥ずかしがり屋が多くてね、みんなそう呼ばずに店長って呼ぶんだ。まぁあだ名で、しかも呼び捨てみたいだしまぁ実際店長だから、ある意味しょうがないかなあって思ってるんだけど、もうちっとこっちのほうにもすり寄ってもいいんじゃないかって思うんだがどうかな。もっかい言うけど、小学校の頃からそう呼ばれてたんだ。なじみもなじみ、もう体に染みこんじまってる。だから、店長って呼ばれるとすぐ返事ができないことが多いんだ。店長って呼んでもオレが気がつかなくて無視するもんだから、みんなの声がだんだん大きくなってきなぁ。こっちは小学校の時からそうなんだっていっても、なかなか信じてもらえなくてね。その小学校の時の事なんだがな、大事な話だから、まぁちょっと聞いてくれ。この面接はこの話をしてからでないとな。その、なんだ『ベンリヤ』って所なんだが。ま、ま、オレの話をまずは聞いてくれ。小学生の時オレは、クラスの中の誰かが、何かを忘れそうだってことがよーくわかったんだ。それで、そのかわりになる物やその物をオレが用意して、そいつを助けるって事をよくやっていたんだ。もう一回言うよ、いらない? クラスの連中を見てるとさ、次、誰が何をどういう風に欲しくなるとか、何を必要になるかとか、なんか忘れてしまいそうだってのが、オレにはよーくわかったんだ。観察力か直感か、多分観察力があったんだろうなぁ。ま、そんな事がよくあってさ。どうも、クラスの連中は、みんなが忘れそうな事や、大事な事を先回りしてオレが用意しているっていうのが不思議だったみたいなんだ。オレは逆に、何でみんなが不思議がるんだろうって思ってたんだけどな。そんでさ、こんな事が何回も何度も続くと、みんなもほどほどいい加減になってきてさ、しまいには何にも用意しなくなってんの。ほとんど授業の用意とか宿題とか体育の体操着とか鉛筆定規ハンカチちりがみ、果ては授業で提出する作文までオレが用意するっていう有様でさ。あげくには担任まで授業の用意をサボるようになっちまったんだ。そんな調子だったから、クラスはもうなんか変な調子になっちゃってさ。ある日、ついに校長先生がでばってきたんだ。その校長が俺たちのクラスに来て言うんだ、『この中に便利屋さんがいるらしいね』って。らしいねって言ったんだぜ、らしいねって。全く他人行儀じゃないか。自分の学校の問題なのにな。オレは子供だったからよくわからなかったけど、校長はこの問題に対して知らないふりをしていたかったんだろうなぁ。なんかわからないけど校長って嫌なやつだって小学生のオレは思った。そんで校長はひとしきり教室の連中を眺めたあと、『ちゃんと授業の用意を自分でするように』って言ったんだ。それからだ。みんなオレに頼るのをやめたんだ。真面目な小学生、真面目なクラスに逆戻りさ。本当はすげぇいいことだったんだけど、オレは寂しかったね。クラスの中では万能だったんだぜ。みんなのこともよくわかってたし、みんなも担任もオレを信頼、そうオレは信頼されてたんだ。それがなくなって小学生のオレは、みんなオレの事が嫌いになったんだって考えちまった。今となったらひねくれ小学生のなれの果てっていう感じなんだが、オレは逆にこう考えちまったんだな。オレが便利屋じゃなかったらお前らなんかとっくに酷い事になってたんだぞって。そんでオレは、オレがかけがえの無いやつだってみんなに思わせようとしたんだな。みんなの物を隠したり間違ったプリントを用意したりして混乱させたんだ。今までと全く逆の事をすれば良かったから、たいしたことじゃなかった。酷いよなぁ実際、そうとうなひねくれ者だよ、オレは。そんで、オレだけが、正しいもの正しい情報を持っているっていう状況をつくったんだ。そしたらみんなまたオレを頼るだろうって考えちまったんだ。酷いなぁ酷いやつだったなぁ。ま、そのあとどうなったかっていうと、これが全くうまくいったんだ。誰にも、もちろん校長にもばれずにいけたんだ。なんせクラスの連中のことはよーくわかってたからさ。隠すの入れかえるのだまくらかすのは余裕のよっちゃんってな具合でさ。ほんで、みんなまた忘れ物をするようになったり大事なプリントは忘れたりで、オレに頼りっきりになったわけだ。そこまでやってオレは宣言したね、オレは本物の『ベンリヤ』だって。それからだクラスの連中はオレの事を、ベンリヤって呼ぶようになったんだ。オレは最高の気分だったよ、もう一度認められたんだって。だがよ、酷い話だよこれは実際。オレはクラスの連中をだましていただけなんだ。それに加えてオレは校長のやつにもちょっとずつ復讐ってやつをしてやったんだ。計画はうまくいってオレが卒業すると同時に校長も学校からおさらばよ。なんにせよ今思えば酷い話だよ。中学生になって思春期を迎えた時は参ったね、なんてことをオレはしてたんだって自問自答してたよ。でもよ、中学生になってもクセや習慣ってのは抜けないもんでさ、同じようなことをしてたわけだ。試験の答案もいれかえたなぁ、よくやったなぁ。誰かと誰かをくっつけるなんてさ朝飯前だったよ、本当に。中二になった頃はもう開き直ってたね、完全に。オレはベンリヤだあって。なんでもござれよ。小学生の時と基本的には変わらないが、中学生だったからさ、やることがもうプロ並になってたよ。ちょうどその当時インターネットがはやり出した頃でさ、オレはいち早くそれに飛びついてたね。なんせ、みんなの知らない情報を瞬時にキャッチできるからな。凄いもんだったよ。もうなんていうの、万能を通り越した超万能感ってやつだったなぁ。今こうして話していてもよ、あの頃が、まぁ一番だったな。一番幸せだったな。うん。沢山の友達も助けたし、逆にやっつけもした。正義の味方だと勘違いして自分に酔っていたのかな。でも、勘違いしないでくれよ。やることはプロ並みだが、中身は中学生さ。犯罪になるっていうと微妙だが、一線は越えないようにしてたんだ。ばれそうになったこともあったし、ばれた事もある。でも笑い話で済むようにしてたさ。フォローもアフターケアもした。なんせみんなのベンリヤだからさ。最後にはみんなに、良かったおもしろかったって言われて終わるのがオレのモットーだった。そんで、中学を卒業したらオレはもう働き始めてた。とはいっても高校大学はちゃんと行ってたんだぜ。ちゃんと留年もせずに卒業してる。なんせ。目標があったからな。オレは中学を卒業するころ、コンビニを持つっていうことを決めてたんだ。コンビニ。何事も決めてからスタートするのがいいよな。オレはベンリヤだったから便利なものっていうのにはとことん敏感だったんだ。ありとあらゆる道具は手に入れたし使ってみた。まぁ専門の道具っていうのは高価なものが多いからなかなか手に入れられなかったよ。ま、そだ。高校生大学生ぐらいが手に入られる物はなんでもって感じだ。ずいぶん借金もしたが、さっきもいったとおりいろんな小遣い稼ぎをしていたからさ、そんなに酷い事にはならなかったさ。そうそう、目標の話だった。色々便利なものを買っていくうちに普段よく行ってたコンビニってすげえ便利なものなんじゃないかって思うようになったんだ。なんてことはない、ただの小型小売り店舗ってだけどさ。オレは思い描いたね。もう、オレの中ではオレのコンビニってなんでも売ってんの。日用品食料飲み物雑貨、この辺は普通だな。工具やら電化製品やら車やら衣料やら万年筆やらパソコンやらなんでも。絵にも何枚も描いたよ。オレのコンビニだ。基本は平屋だったが、二階建て三階建てとか移動するコンビニとか、いろいろ考えてたよ。ビルを描いたこともある。でもビルはすぐに駄目だと思ったな。だってよ、買いに来る人が不便じゃないか。何をどこで買えばいいのか一発でわからないとな不便で仕方ない。便利を謳っているのに不便なんてこの世の中にはザラだが、これはオレの理想にはほど遠い形だと思った。逆に地下はあるかなって思ったかな。そんでオレは、やっぱり平屋だなとおもったんだ。そう、どこにでもありそうなどうでもいい普通のだれがどうみてもただのコンビニがいいって。そこまで考えて、オレは気がついてしまったんだ。オレは外から見たコンビニについてはよく知っているが、内部のことはまったく知らねぇって。高校大学と働いていたっていってもコンビニのバイトとかじゃなかったんだ。もっと他の儲かる事をやってたんだ。オレの特技をいかしてな。オレはコンビニでバイトとかしたことがなかったから中身を知らねぇ。そんでオレは目標を具体的にしていった。まずはコンビニ業界に就職しようって。勉強したね。最大手に入ってやろうって思ってたからさ。オレはちゃんと勉強してたし、いい成績だったから自信はあった。大学生になって就職活動なんてやらされたんだけど、持ち前の知識と行動力で全く問題無しって思ってたんだ。でもよ、世の中甘くないねえ、まったくさぁ。応募した会社全部、最終面接や社長面接まで行ってたのになぁ。あの時間を返してほしいよまったく。オレが入るはずの所にさ、酷い言いがかりがあって、オレは入社できなくなったんだ。自業自得っちゃあそうなんだが、酷いもんさ。小学校中学校の時に同じだったやつが告げ口をしたらしくてさ。オレがやったこと全部ばらされちまった。それを業界全体にやりやがってんの。オレのやり方をどこで知ったのか見たのか、そいつはオレの悪行をよーく覚えていて全部丸裸にしちまったんだ。いろいろ盛ってた所もあったけど、ほとんど本当のことだった。小中学校だけでなく高校大学でやってたことも、目立ったやつはほとんど全部だった。火消しをするには規模が大きかった。うん。今でなら何とかなるかもしれないが、当時はまだ学生でね。やれる方法が限られていたんだ。ネットも含めてオレは具体的な行動もしたけど駄目だった。どうあがいても手遅れだったんだ。この時間もまったく無駄なものになっちまった。就職活動もその後の火消し作業も全部。とうとうオレは自分の目標を失ったんだ。そんでだ。そんでオレはもう一人でやるしかなかった。なんといってもいわゆるブラックリストにはいってたからな、他の業界も駄目だったし、オレには、はなっから興味を持てなかった。オレを雇ってくれる所はもうなかった。そんなこんなでな、そうつまりこのあまり名前の知られていないこの地域限定のコンビニは、実質オレがいちから試行錯誤して作った店なんだ。まーいわゆる夢の結晶ってやつだな。だからさ、ここでバイトするってことはオレの夢の手伝いをするってことになるんだが。どうだ、やるか?」

 この広田がしゃべっていたのは実質10分というところだった。相当な早口だった。

 最後に、やるかと聞かれて、それが自分への質問だと理解するまでしばらくかかった。


むりやり連載小説仕様です。

ちと連載投稿の仕組みでで戸惑っています。

とりあえず5回(1回1回がすごく短いですが)まで投稿します。

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