もーやだ! こんなの
練習作品です。
これらの練習作品は皆様の評価次第では連載するかもしれません。
友達(?)の話では、私こと、レイ・ストリアはよくため息を吐く人間らしい。まぁ、自覚はあるんだけどね。
その友達(?)は、私によく、「ため息を吐くと幸せが逃げるよ?」なんて言ってくるけど、その原因が何を言ってるの? と思うよ?
実際に過去にあなたのやらかしたことで大変なことになってるし。
――――――主に私が。
何であなたに関係のないところで、あなたが受けた決闘に対する八つ当たりやら妬みやらを受けなきゃいけないのさ? さらに、襲って来た人の中には女の子がいて、友達(?)と仲の良い私に嫉妬してきた奴までいたから困ったものだ。
だってさ、友達(?)も女なんだよ?
――――――や、別に同性愛者を馬鹿にしているわけじゃないし、実際にお互いが同意のうえでなら、私はそれはそれで祝福するけどね。
幸せは人それぞれだしさ。
それに訂正するけどさ、私はため息を吐くから幸せが逃げるんじゃなくて、幸せが逃げるからため息を吐いてるんだと思うんだよね。
そこは重要だから間違えちゃだめだよ。
――――――まぁ、今となってはどうでも良いけどね? 慣れたし。
まぁ、そんな濃い友達(?)の所為でまともな生活をくれはしない。何故私がその友達(?)への恋文やら差し入れやらを届けなきゃならんのさ。
私は家事や研究が忙しいっていうのにさ。まったく、困ったものだよ。
しかも、私がその友達(?)に恋文を渡すと、私が渡す前はにこにこしていたのに、受け取って裏を見た瞬間、何故か不機嫌な顔してその恋文を私の目の前で破くんだよね。
まったく何が気に入らないんだか。
――――――貰うのが女の子からだからか? 別に私は気にしないのになぁ。応援するよ?
まぁ、とりあえずそんなことはほっといて、今は授業中。
講師の人が黒板に何やら魔法陣のようなものを書き込んでいる。そして講師はこちらを振り返ると、実際に魔力で魔法陣を出す。すると、講師の手に浮かんだ魔方陣から1つの火球が現れる。『ファイアボール』というらしい。
これを見てもらえば分かるように、これは『魔術基礎』という授業だ。
魔術について軽く触れておくと、魔法陣を描くことで、魔法陣を通して魔力を魔術に転換する。それが魔術で、それを用いる人、つまり、魔法陣を用いて強力な魔術を用いる人のことを『魔導師』と呼ぶらしい。
というよりも―――――
「(あの魔法陣に書き込まれている術式…………4番目がおかしいなぁ。)」
――――本当にあの講師は優秀な魔導師なんだろうか。先ほども、小さな氷塊を創り出す魔術『コールド』の時の魔法陣もおかしかったんだよね。あれじゃ大した威力も、冷気も出来ないよ?
そう思って私はため息を吐く。もはや癖みたいだ。
ところで話は変わるけど、どうやら私は、何故か『転生』というものをしたらしい。忘れようにも前世の記憶がちらついて忘れるに忘れられないといった感じだけどね。
前世、普通の大学生であった私こと、光 晶は、なんというか、平らなところだろうが、コンクリートだろうが、滑り止めのマットを弾いてあるところだろうがお構いなしにどこでも転ぶような不幸体質だった。
本当に呪われているんではないだろうかと、本気で心配されてお払いなどをされたが、それでも転んでいた。
それはさて置き、私の最後に残っている記憶の場合、転んだ拍子に道路に出て、走ってきた10トントラックが迫ってきて…………悲惨なことに。
その後、記憶が一気に飛んで、気付いたら赤ん坊になっていた。恥ずかしかった。
それはともかく、私はこの世界に双子で生まれたのだけど、生まれてすぐに行う技能調査で双子の姉とは違って私は魔術の才能、つまりは魔力で魔法陣を描くことの才能が無かったようで、私はすぐさま姉と隔離されたうえ、2歳まで名前も付けられずに地下室に1人で閉じ込められた。
どうやら名前は分からないが、この家は相当の実力を持つ家で、私みたいな無能が生まれたことを隠したかったんだと思うけど。
そして、私が3歳になる日の前日の夜。私が眠って朝起きたら、凶悪な魔物の巣くつとして知られている魔境である焦燥の森へと捨てられていた。
捨てられたことに対しては、特になんとも思わなかったけど、生活面ではきつかった。それはもう想像を絶するかのように。
何故なら転生してきた私にはどれが食べられて、どれが食べられないといったものが分からない。
実際に日本、というより地球でいうところの苺の見た目をした果物を齧ったらものすごくからかったし、人参のような形状をした根を食べたら玉ねぎのような味がしたりした。ちなみに後から調べたところ、私が食べた苺みたいな実はゲリス、人参みたいな根っこはオリスといって、アピル、地球でいうところの漢方薬の原料だったようだ。しかも生で食べると効果はすごいが、毒となるものであるらしい。調べた結果、私の食べていた者の殆どが毒で、私が毒があると思っていた毒々しい赤色をしたキノコや明らかに食べ物の色ではない青色をした実は高級食品とまで言われる安全無害なものだったらしい。
…………よく生きてるな私。
それに加えて、この世界には魔物が徘徊しているから常に警戒が必要であるといった感じで、何この鬼畜ゲーは? と思ったよ。
………………本当によく生きてるよ私。
それでも何とか気配を消して、食いつないでいる内に、1年、2年と経って5歳の時、友達(?)の家の使用人に拾われてここに至るわけだ。
――――――何度死に掛けたかは数えきれないけどね。
ちなみに、彼女に友達(?)という風に、? を付けるのは彼女が私にとって保護者のようなものであるためである。彼女のことは今でも友達ではなく、保護者だと思っている。
あ。ちなみに今の名前は自分でつけたよ? 拾われる前に、いつか誤魔化すために考えといてよかった。――――――とはいっても、私にはもとより名前は無いんだけどね?
後で知った話では、私が適当に名乗ったレイ・ストリアというのはこの世界では『無垢なる結晶』という意味らしい。分かっているとは思うが、私は無垢ではない。まぁ、どうでも良いよね。
閑話休題
拾われてからというものの、私は友達(?)の家で魔法書をひたすら読みまくった。
――――――日本から転生してきた私としては魔法というのは憧れに近いんだよね。前世で呪われているように何度も転んだりしていたせいか、他に人と違って回復に憧れていたんだよ。
そうして魔法書を読み進めるうちに、分かったことがあった。
私は魔法陣を用いる才能が無いため、『魔術』は使えないが、魔法陣を用いない『魔法』は使えるようだ。
でも魔法は魔導師には使うことが出来ないとされていた。さらに、現在のこの世界、グランティスでは、魔法を使うことの出来る人はすでにいないらしい。だからこそ陰でこそこそやっているのだが。
こんなめんどくさい才能を持った自分が嫌だね。もし、転生させた奴がいたとしたら燃やし尽くしてやる!
「では、今日はここまで! 頑張れよ」
私が自分を転生させた奴を呪っていると、魔導師であり、講師のメ、メル? 何とかさんの授業が終わったようだ。
この『魔術基礎』で今日の授業はすべて終わったので、この学校に特に用が無い私はさっさと帰ることにしようか。学校の図書館の本はすべて読んでしまったし。
「レーイ! あ~そぼっ!」
「…………あまり抱きつかないでよ。後がめんどくさいから」
帰ろうとした私に、誰かがいきなり抱きついてきた。まぁ、予想はついてるけどね? だからこそこの返しだ。
不愛想な私に抱きついてくるような変人は1人、いや、他にもいたかな? まぁ、この学校では1人しかいない。
おそらく例の友達(?)であろうと確信した私は、無駄に大きい胸を押し当ててくるその体を引き離すと、彼女の方へ向き直る。
すると、私の予想通り、見慣れた友達(?)のふくれっ面があった。
「つれないなぁ。なんでいつもそうかなぁ?」
「慣れよ」
「もっと驚いてよ!」
「断る」
私がそう返すと、頬を脹らませて怒る美少女。美少女が私の友達(?)でもあり、保護者でもある、リリス・ティアリス様だよ。
綺麗な人だよね。清らかな川の流れを表すかのように、腰まで流れた綺麗な水色の髪に、瑞々しい唇。そして私とは違った白さできめ細やかな肌。本当に同じ人種かを疑ったね。
それはともかく、この人やこの人の家族、及びに使用人は私に対して物凄く甘い。
何故か懐かない子猫を扱うかのようにがむしゃらに撫でまくったりする。私は猫じゃない。あ、この世界では猫はキャータか。
…………どうでも良いけど。
「で? リリス様。御用は?」
私の先ほどの断る宣言の所為で頬を脹らませているリリス様に話しかける。
ちなみに様を付けたのは単なる嫌がらせだ。
彼女の家は一応貴族なのだが、この町の人にも様付されると怒るという、この世界でも変わった貴族のようだ。
「またリリス様って言った~!」
「リリス様はリリス様ですから」
「う~~~~~~! レイの馬鹿―――――――!!!!」
私のからかいに、顔を真っ赤にさせるとリリス様はすごい勢いで走り去ってしまった。
おお。速い速い。彼女の足元に身体能力補助の魔方陣が見える。どうやら身体能力の向上もやっているようだ。
…………とりあえず保護者兼友達(?)が居なくなったので、私もさっさとかえ――――――
「ちょっといいかな?」
――――――ろうとしたけど帰れなかった。
帰ろうとした私の目の前には、なんとなく全体的に影の薄い様な、女の子に見えなくもない男の子が立っている。
んー。こんな子、この学校にいたかなぁ。私自身、あんまり周りに興味が無いとはいえ、一クラスしかないこの学校では、こういった子は逆に目立つと思うけど。
…………ん? いや、これは影が薄いというよりは…………――――――
「『使い魔』が私に何の用?」
――――――『使い魔』。ある意識体に魔法陣を通して魔力を与え、自らに使役させる技術。今では人を使い魔にすることは禁止されている。尤も、人1人を使い魔にするには人知を超えるほどの大量の魔力が必要になるため、現在では禁呪どころか使用できるものさえいないはず。
ならばなぜここにその使い魔がいる?
「やぁ。そんなに警戒しないでよ」
その使い魔(断定)の男の子は飄々と微笑みながらそんなことを言ってくる。
警戒しない方がおかしいと思うけれど? ヒト払いの結界まで張って、人を閉じ込めるようなやつが信用できますか。
まぁ、このくらいなら私でも破れるかな。
「なら、何の用?」
私は彼を場合によっては撃退できるように、右手に光の魔法『クランシャイン』を展開する。この魔法は光の魔法の中では使い魔にとっては天敵である解呪の光の魔法だ。使い魔は、あくまでも魔術術式によって意識体に思念を埋め込んだものであるので、その魔術術式を解呪してしまえば存在を保つことは出来ない、と書かれていた。ならばこの解呪魔法は有効のはずだ。
そんな私と展開された『クランシャイン』を見て、彼は困ったように苦笑すると、口を開く。
「その術は止めてよ。僕が死んじゃうじゃないか」
「なら早く用件を言って」
できることならさっさと終わらせたい。だけど、彼は苦笑すると、私から1歩下がったかと思うと、頭を下げた。
…………何故?
私が疑問に思いながらも彼の動向を窺う。すると頭を上げた彼は読めないような笑顔を浮かべこちらを見てくる。
――――――その笑顔に何故か背筋が凍ったような感覚を覚えた。何か嫌だ。
そう思った私は展開していた『クランシャイン』を彼に向かって炸裂させると、魔法が完全に発動して破裂した勢いの反動で後ろの飛ぶと、彼が居た辺りに目を凝らす。
私の放った『クランシャイン』が決まっていれば奴は消えたであろう。だけど…………!?
「ひゃ!?」
後ろに気配を感じ、振り向こうとすると、彼に抱きしめられたような体勢になり、首筋に何か湿ったものが触れる。
首に押し当てられた舌に少し悲鳴を上げてしまった私はあることに気付く。私の背中に何か柔らかい物が当たっているのだ。もしかして…………?
「あなた、…………女だった?」
「やっと気付いたのかい?」
そう言って私を離す彼、もとい彼女はまた私に一礼すると、微笑んだまま口を開いた。
「まだ、時じゃないからね。今回は失礼するよ」
彼女はそう言って靴を打ち鳴らす。すると彼女の足元に魔法陣が展開される。
まさか逃げる気!?
「待ちなさい!」
「じゃあね」
私が彼女を追おうとするが、彼女はすでに転移を終えていた。
彼女が仕掛けた結界が解け、彼女の残り香が消えたことを確認した私は思わずため息を吐いた。
…………また厄介ごとだ。
「なにか本当に疲れた」
私は誰に言うわけでもなくそう呟くと、一旦彼女のことを頭から振り払うと、学校を出る。終わった時は昼間であった外は、すでに真っ赤に染まっていた。
「何をしていたかって怒られそうだなぁ」
あの過保護の人たちならそう怒りかねない。さっさと帰ろう。
そう思って私は今の家へと帰った。帰ったら想像していた通りに怒られた後、全員から揉みくちゃにされたことを報告しておく。
…………これが幸せなのかな? もし、そうだとしたのなら、願わくばこの幸せがいつまでも…………。
ー
「あの子、僕の好みだったね。さあどうしようかな」
ー
「絶対に見つけ出してあげるわ。私の『妹』を!」
そんな彼女の願いとは裏腹に、彼女を取り巻く不思議で不可解な運命は、何も知らない彼女を絡め取り始めていた。
この作品は思いつきですが、感想をもらえればうれしいです。
時間があれば他の作品を読んでいただければ、より嬉しいです。