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3話 姫様には過保護のお父様がいるようです。

 ギャグに集中しすぎて話が進まない!

「2人とも、準備はいい?」

『ごくり』

「姫様の御前だよ…くれぐれも粗相のないようにね…」


 城の中を進んで行き、最上階までの階段を息を切らしながら上り(何故エレベーターは無いんだ…)、ついに此処まで来たのだ。

 それは最早壁。

 鉄壁とも言うべきか、それほど重い、扉。

 先程開けてもらった城門と、なんら変わりの無い大きさ。

 いかにこの姫が大切に扱われているか伺える。

 俺と駿介は、その立ちはだかる障害の前に、列を成して震えていた。

 というか、感動していた。


「おい…マジで姫だってよ…」

「うん…それも破滅級の可愛さ…どれほどのモノか…」


 変態2人、此処に現る…いや、変態はこの馬鹿だけだったな。ゴメソゴメソww

 そんな訳で、スフィアさん!


「開けるよ…」

『wktk』


 スフィアは白のワンピースのポケットからある物を取り出し、両手を挙げて、こう唱えた。


「おーぷん! じゃ! どあー!」


「またかよ!」

「予想は出来てたけどね!」


 ようやく姫とご対面です。




 @~@~@~




「貴方方が、スフィアが連れて来た勇者様ですね?」

『……………』

「急で申し訳ないのですが…今、この国は…いえ、この世界は、特別な問題に瀕しているのです」

『……………』

「というのも…ちょっと、そっちの茶髪の方、話聞いてます?」

「リュウセイ! 姫の御前だよ! 何でそんな頭を床につけてるの!?」

「そうだぞ! お前、少しはマナーとか考えてみろ!」


 お前には言われたくなかったな、ソレ…。

 俺はスフィアの言う通り、床に突っ伏していた。

 俺の中で巡っている感情は悲しみ。

 それを体現したのだ。


 部屋の 中は、想像通り、規格外の広さだった。

 言い表すなら、ハリ・○タの大広間のようなでかさ。

 しかし一室にあるものは、せいぜい机と、今姫様が座っている台座くらい。

 殺風景な部屋で俺達は、ただ膝をついてい…る……のだが……。


「はぁー…。……」

「何でため息つくんですか!」

「おい龍! そんなんだから女の子に嫌われんだぞ!」

「ちょっと! 顔上げてよ!」

「だー! もう、うるせえ!」


 もう、キレる! 私、キレちゃうんだからね!

 いくらクールでカッコイイ俺でも…、…うん。これはたくさんの読者を敵に回したな。

 いくら超冷静でどんな状況でも混乱しないモテモテの俺でも…あれ? みなさーん! 帰らないでー!

 いくら天才で…あ、ちょっ、物は投げんな!

 …いくら普段あまりキレない性格の俺でも、これは暴走せざるを得ない。


 みんながきょとんとし、こちらを痛い目で見るが、知ったこっちゃない。

 俺は、この状況の異常性を断固批判したいのだ。


「おい! お前っ!」

「な…私……ですか?」

「そうだよ! 台座に座ってる姫さん!」

「なんて口の利き方!」

「龍! いい加減おとなしくしろ!」


 駿介に取り押さえられる。

 が、脳筋のこの馬鹿は、体の仕組みも分からずただ肩を抑えるだけ。

 そんな奴は。


 シュルッ。

「え。」


 ガシッ!


「これがああああああああああああああああああああああああああ!

 俺のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「え、何そのテンション! 何で俺腰に手ぇ回されてるの!? 何で俺若干体が浮いてるの!?」


「ジャアアアマンスウゥゥプレックスだああああああああああああああああああああああ!」


「ギャアアアアアアアアア!」


 ガスッ!

 ドォォォオオオオンンンン!!


「あべしっ!」

「ちょ! 何やってんの!? 姫の御前だって言ってるでしょ!?」

「スフィアァァァァ!!!」

「な…、何!」

「あいつが、一国の王女なんだよなぁぁぁ!?」

「そ、そうだよ! 彼女がいるから、この国は、世界は平和…だったんだけど…」

「なら!」


 俺はびしっと台座にちょこんと座る姫を指差して、言ったった!


「何で…、何で……!




 チワワなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」




 姫様は、ご覧の通り、めっちゃ小動物でした。








 チワワ(英: Chihuahua)

 犬種の一種である。犬の中でも最も小さな種類であり、メキシコのチワワ地域が原産地である。(wikipedia引用)


 スフィアは言った。

 ――――アイドルなんて霞んじゃう、アニメのキャラなんて見向きも出来なくなっちゃう、そんな世界を滅ぼす事が出来るくらいの可愛さだよ! だよ…! だよ……!(エコー) ……――――――


 その通りだ。確かに可愛い。

 もう抱きしめたくなる可愛さ、かもしれない。


 だが、犬だった。

 俺の前の姫は、人外どころか、二足歩行すらしていなかった。

 なんてこったい。


「何だよ…。姫様って、もっと崇高で神々しくて近寄りがたい存在なのに……。こんなのエロい画像で人を呼び込む釣り動画となんら変わりないじゃないか……!」

「キミの姫様に対するイメージが若干変態気味なんだけど…」

「しくしく」


 気付いたら、姫様が前足で目を擦って泣いてた。

 犬なのに。マジ萎える。

 ちなみに駿介は目を引ん剥いて寝ている。ざまぁm9www


「ほ、ほら! 姫様泣いちゃったじゃん! どうするの!」

「彼女の前でたまねぎの皮を剥いてあげます」

「何で!? 何でわざわざ追い討ち掛けるの!?」

「犬だから」

「種族差別! い、いや、これ以上言うとホント自殺するかもしれないから、そろそろ自重…」

「チェンジ」

「そんなに嫌!?」

「嫌。他の娘用意して」

「ここはキャバクラじゃないんだよ!」


 知るか。客がNOと言ったらNOなんだよ。

 まぁ、犬のきゃんきゃん声はうるさい。

 俺は胡坐をかく。

 で、泣いてる姫様に謝罪…


「おーい、姫様ー。俺が悪かったー。だから泣かないで…」

「きゃおおおおおおおおおおおおおんんんん!」

「泣き方は、それでいいのか…」


 聞き入れてくれなかった。

 おいおい。


「これじゃ話が進まないじゃないか…」

「キミの所為です」

「え、俺?」

「自覚すら無いの!?」


 しょうがない。

 こうなったら、女の子を泣かしてしまった時の必殺テクで。

 おっと、そこの画面外の諸君。メモの用意はできたかい?

 おし、じゃあ、行くぞ?


 俺はゆっくり、えんえんきゃんきゃんと泣き続ける姫に近づく。

 この時、少しだけ足音を立てることが重要だ。

 目の前に来たら、君の手をこうやって女の子の頭に…


「ぐおおおおおおおおおぁぁらああああああああああああああああああああ!!!」


 どごーん!


 姫の頭に手を置こうとした瞬間、彼女の後ろの壁が壊れてってえええええええええええええええええ!?


「ホワッツ!?」


 ガシッ!

 俺は何者かに胸倉を掴まれる。

 それは。

 めっちゃゴリラだった。

 王様のマントと、多少の衣類を纏った、ゴリラだった。


「キイいい言い言いいい言いいいいさアアあああああああああああああまああああああああああああ!」

「変換ぐらいちゃんとしろよ!」

「俺のオオオオオオオオオオオオ娘にいい言いいい言いいい言いいい触るなあアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「娘!?」


 この、全身毛だらけの真っ黒い生物が、このチワワの、オヤジ…だと…?


「んな訳あるか!!」

「何だと!? この、可愛い可愛いリノの親父が、かっこいいゴリマッチョ国王であるこの三十郎の、娘じゃないと!?」

「いや逆だわ! この子の親父がアンタである事に残念さを拭えないわ!」

「黙れ! この国が、この世界がこんな大変な時に、俺の娘を口説き落とそうなんて……片腹痛いわ!!」

「どうなったらさっきの行為がそういう風に見えるんだよっ!? っていうか!」


 俺は不安定な体勢で気に掛かった言葉を指摘する。


「この世界が大変って、どういう事だよ!」

「……………」


 ブンッ。

 軽々、投げられる。


「イダッ!」

「大丈夫、リュウ?」


 ヒューンと、スフィアが飛んで来る。

 涙目で俺を心配する妖精、バンザイ\(^o^)/

 じゃなくて。


「悪いな…アイツ、本当に、ワンコの親父か…?」

「……そうだよ。あの方は、レオナルド・ダヴィンチ・三十郎様。腕っぷしにかなり自信があるお方。その昔、魔王が世界に君臨していた時に、単身魔王城に乗り込んで、魔王軍を壊滅させたゴリラの獣人だよ」

「ツッコミどころ満載な王だな…」


 姿とか、名前とか、種族とか、名前とか、役職とか、名前とか、名前とか、名前とか。


 その王様は背を向け、自分の娘の頭を撫でていた。


「ぐすっ……ぐすっ……」

「おーしおしおし。もう大丈夫だよ」

「うう…パパぁ…」

「ギザカワユス///」

「お前、親父だろ!?」


 俺の声に反応し、俺の方を向くゴリラ。怖。

 イカつい顔で一睨み。


「……お前のような男が、勇者だと…? 世の中腐ってるな…」

「いや、世界違うし。もう一人いるし」

「…………お、お前のような男が、勇し(ry」

「言い直した! 恥ずかし!」

「…………この世界の混乱について、まだ聞いてないのか?」

「ああ。教えてくれなかったんだよみんな」


 キミが会話を塞ぎまくったんだけどね、とは耳元の妖精の声。


「それならば、俺が教えてやろう…」

「いえ、結構です……」

「俺が、教えてやると、言ったんだが…?」

「わ、分かったよ! だから顔寄せんな!」


 ゴリラの顔って、こんなに皺があるんだね。

 そんな事を痛感する大学生など、ここにしかいないだろうと、俺は心から思った。

 …なんか、急激に家に帰りたくなってきた…。

 さて、次回からやっと異世界突入の理由が分かります。ヨカッタネ!

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