事の始まり
どうも、おはようございますこんにちはこんばんは。フィアです。
友人に「書け」と言われてファンタジーモノを書いてみることにしました。
う~ん…他の作品もまだ全然終わりが見えないんだけど…、まあ、やってみっか!
『今入ったニュースです。
全国の下水道で、水が大量に漏れるという原因不明の事態が起こっております。
詳しい情報はまだ伝えられてなく、政府や水道局の調査が進められているとの事ですが、具体的な詳細は何一つ分かっていないとの事です。
また、水漏れによる影響により全国各地で洪水が発生しております。
床下浸水等にお気をつけ、これからの情報をお待ちください。
次はお天気です。
今日は快晴、とてもすごしやすい日になる…はずでしたが、例の水害により水が蒸発、とても蒸し暑い日になる……』
「そういう事か……」
「しかし、どういった現象なんだろう? 全国の下水道が、いっせいになんて…」
季節は秋、焼き芋が恋しくなるこの季節。
俺の住むアパートの外では、紅葉が紅く染まり葉という葉が落ち続けていた。
その葉は、落ちて、落ちて…。
流されていった。
水はもう50cmほど溜まっている。
水、水、水。
外はあたり一面水浸しだった。
それなのに空は太陽の日差しが眩しいという、なんともアンバランスな一日。
この量では、確実に交通機関はストップだろう。
どうしてこうなったか、いつからこうなったかなんて分からない。
何しろ、起きたらこうなっていたのだから。
「……一階の内藤さん、絶対騒いでるだろうな…」
「いや、流石に避難してるだろ」
ああそっかと、駿介は頷いた。
3階の俺達は無事だが、1階は水没してるはずだ。
「…今日は大学もいけないな……」
「お前はただサボりたいだけだろ?」
「お、見破られたか」
ったく、コイツは…。
和木駿介。
俺と同じで駒大に通っていたところ、いろいろあって俺の部屋に転がり込みルームメイトになった、俺の親友。今年で成人式を迎えようとしている。
性格はお人よし。重度の。
一つ例を出そう。
3っ日前のこと。道端で迷い猫を拾ってはそれを届けるために何十件もの世帯を巡り、やっと飼い主を見つけたと思ったら経済的事情でしょうがなかったんだと言われたと思ったら、その人たちのためにバイトを何十件と掛け持ちをし、そのときのバイト代をすべてその家族にあげた……。
もちろん、そのときは愚か、そういった事件のたびに俺も巻き込まれた。
火の中に突っ込んだり、海でおぼれた子を助けに行ったり、道場破りしてボロボロになったり……。
正直、もう巻き込まれたくないのだが、どうも憎めない奴なので、こうして1年と半年、同じ部屋でむさ苦しく生活してるのである。
「んぬあ゛-。しかし暇だなー。…ゲームでもするか?」
「…お前もサボりたいんじゃないの?」
「『お、見破られたか』」
「よし、テッテーテキに撃ち殺す。俺はそんなアホ面してない」
そう言って、俺たちはコントローラーを持ち、テレビの画面を外部接続に切り替え、P○3の電源を付けて、ソファに座る。
「お前が寝てる間に鍛え上げたスナイパーライフルとナイフの技術、見せてやる」
「え、何? お前そんな事してたの? 可愛いやつめ」
「う、うるさい! ほら、画面切り替わったよ」
「へいへい。そんじゃ、モード選択…」
ずばしゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
「して……ってぉぉぉぉぉおおおおおお!?」
背中が!背中が!
もう寒くなるというのに、この背筋に響く冷たさは体どころか心臓を痛める!
まず、横を見る。
俺と同様の反応をしているのは、この迷惑極まりない変態である。
後ろを見、………て、ちょっと反応にためらった。
だって。
水浸しなんだもん。
俺の部屋が。
「ぬあんじゃこりゃああああああああああああああああああああああ!!!?」
「うるせえよお前ってうぎゃあああああああああ!」
ダイニング、キッチン、テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、オーブン、コーヒーメーカー、ゲーム機、ソファ、テーブル……俺の部屋の物は、全て水浸しで、びしゃびしゃで、ぐしゃぐしゃにいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
「ああああああああああああああ! 俺の4年間のバイトの努力の結晶がああああああああ」
「ちょ、おま! ここにある家電製品のだいたいは俺のバイト代で買ったんだろ!」
「そんな事どーでもいいだろーが! さっさとこの水止めろ!」
「この水……風呂場! 風呂場から出てるよ!」
「風呂場!? 逆流でもしてんのか!?」
そういって立ち上がり、ずぶずぶと流水に逆らいながら我らが夜の憩いの場、シャワールームを目指す。
流れるマグカップやらゲームのソフトやらを押しのけながら、やっとの思いで風呂場のドアへ到着。
…なんか、風呂場のドアはドアの役割を果たせず、メキメキ音を立てて豪水に流されそうになってるんですが。
「ち、くしょおおおおおおお!何が起こってやがるってうをおおおおお!?」
眩し!
脱衣所に入ったら、何かがキラキラというかピカーというか輝いてたので、思わず目を瞑ってしまった。
横で「目があ!目があ!」とか喚いている馬鹿は放っておいて、目をゆっくり、少しずつ開けていく。
目を開けて現れた視界では。
浴槽が、虹色に輝いてた。
正確には浴槽の中身。
水が溢れ出ているその根源が、幻想的な何かで輝いていたのだ。
……………。
目を、こする。
ほっぺをつねる。
……………。
夢じゃ、ない。
「何コレ? ファンタジーじゃん!」
「お前っ! もっと危機感持て! 風呂がこんなのになってるだぞ!? もしかしたら、今日から入れないんだぞ!?」
「それは困る…」
《こんにちは》
「あ!? 何いきなり挨拶し出してんだよ!? 寒さで頭イカレたか?」
「いやこっちのセリフだ!」
「お、お前じゃねえの!? じゃあいったい…?」
《ボクは、頼れる妖精ちゃんのスフィアです。どうか私の話を…》
「…なあ、駿介。悪かった。頭がおかしかったのは、どうやら俺の方だったらしい」
「ごめん。俺のほうがおかしいかも…浴槽から、女の子の声が聞こえたんだけど」
「まじか。奇遇だな、俺もだ。一度、精神科にでも行くか」
「いい提案だね。そうしよう」
《あの……ボクの話を……》
「ついでに大家の所寄って行こうぜ。今月の家賃払ってねえ」
「俺が出すよ? 今月は龍、電気代払っただろ?」
「おお悪いな」
《……………………》
「さて、金を探しに」
「にょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「あ、何だようるせえなってにょおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
なんと!
浴槽からゴツい手が出てきた!
その大きさ、もはや人間のそれの1.5倍近くある。
しかもこっちに人差し指向けてる…え?
《……偉大な妖精ちゃんの話を聞かないとは……もういい! 無理やり連れて行く!!!》
がし。
「うわああああああああああああ!」
駿介の奴が、ゴツい手に胴から掴まれていた。
で、体ごと宙に浮いていた。
……うん。
「じゃ、俺一人で家賃出しに行くから、来月はお前が出せよー」
「ええ!? ここでお前俺を見捨てるの!? それはないんじゃない!? これはもう見過ごせない事態だよ!?」
知るか。それよりも俺は精神科へ行くんだ。
頭悪そうに「風呂場から手が出てきて、親友がつかまれちゃったんですぅ~」とほざくのだ。
というか、そうでもしないと自分を保てるような気がしない。
なおも暴れ狂うような激流に流されるように、俺はその場を後に、後に、後に…後に……?
あれ、おかしいな。
足は動いてるのに、体が前に進まない…。
って、あ、そっか。俺もなんか別の手に掴まれてるからか。
そりゃあ、上半身がピクリとも動かないといいますか、メキメキ音を立てますわな。
「あはははは。あはははは。あーはっはっはっはっはあああああああああああああああああ!?」
《ダメだよ。この腕を見せたからには、二人とも連れて行くよ!》
ノオオオオオオオオオオオオオオんんんんん!
え、体が浮いて…え、あ、ちょ…。
俺の体は浮いて、浮いて。
だんだん角度がきつくなって。
天井を見上げる感じになって。
天井が遠くなって。
右を見ると、親友も同じ状態で。
顔が合って、お互い頬を引きつらせて。
俺たちは、虹色の光の中に吸い込まれていった。
投稿する前、この内容を友人に見せた。
友人「え、この2人ガチホモ?」
俺「………。(どかッ!)」
友人「痛しッ!」
※作者は短気です。
※2人はガチホモじゃありません。